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ワインを輸送せよ! その2(挿絵あり)

 ヨハンネは自分のキンブレイト邸に帰ると足速にミネルヴァの所へ向かった。と言っとも、彼女はヨハンネの部屋で雑務をしているので自分の部屋に向かったと言うべきだろう。


 ガチャンとヨハンネは部屋の扉を勢いよく開けた。


「おかえりなさいませ。ご主人様」


 ミネルヴァは礼儀正しく一礼した。ヨハンネは彼女に詰め寄った。


「ミネルヴァ! お願いがあるんだ」

「と、言うと?」


 ヨハンネは少し、じらしてみた。


「何だと思う?」


 ニヤつく。ミネルヴァは考え込んだあと、思いついたような素振りをした。


「暗殺ですか、それとも盗賊の殲滅ですか?」

「え。あ、いや……違うかな。近いようにも思えるけど……」

「では何なんでしようか?」


 無表情ではあるが真剣な眼差しを向けて、主の命令を待っていた。


「商品の護衛だよ」

「わかりました。ご主人様の願いなら必ず私が守り切ります」

「ありがとう。じゃあ明日だからよろしくね―――――」





==============================================================================================




――――――――次の日キンブレイト商会のワインを乗せた荷馬車が舗装されたレンガ道を移動していた。


 先頭はヨハンネが行き、荷馬車を操るのはグレイゴスで、荷馬車の隣を守るように歩くミネルヴァは革の鎧に腕甲、鋼鉄の脛当て、長剣を腰に提げていた。今回は都市外輸送なので、グレイゴスも一応の武装はしていた。ヨハンネについては服の下に鎖帷子を着て、ご信用の鉄剣を提げているだけである。息苦しそうにし窮屈だったが仕方ない。どこから矢が飛んで来るのかもわからないし外へ物資の輸送に生身で外出する奴は頭がおかしい。それでもヨハンネは自分が武装するのが嫌だった。


 進み始めてから数分後、問題の林に差し掛かった。


「―――――――ここを進むのは危険すぎる。ヨハンネ、迂回するぞ」


 前を行くヨハンネにそう呼びかけた。わかったよ。父上、と返事が返ってくる。先頭を行くヨハンネは手綱を右に引っ張って馬は方向転換をした。それに続いて、グレイゴスも手綱を引き、別の道へと荷馬車を誘導する。ヨハンネはこう見えても馬の扱いだけは慣れている。グレイゴスの荷馬車の後をミネルヴァがテクテクと歩いていたのを気に掛けたのか振り向く。


「その装備で走るのは辛いだろ?荷馬車に乗ってもいいのだぞ」

「いいえ。構いません」

「いや。しかしだなー」

「ハハハハ。父上? ミネルヴァは頑固だから無意味だよ。僕だって既に十回くらい言ってます」


 どうやら、ヨハンネに会話が聞えていたようである。


「そうなのか。なら仕方ないか……」


 そういって諦め再び前と向いて鞭を打つ。迂回をし林を後にした一行は急ぐこともなくゆくっりと進む。


(―――――――今日は天気もいい。盗賊の出る様な雰囲気でもない)


 空を見上げながら今回は何とかいけそうだ。とグレイゴスは心でそう思った。しかしその考えは浅はかなものだった。


 突如ミネルヴァが何かに勘付き、勢い良く後ろを振り返る。その眼光は数人の男たちをしっかりと捉えていた。どうやらこの荷馬車を追撃していた様子である。まだ距離はあった。ミネルヴァが主に危険を知らせる。


「ご主人様! グレイゴス様!盗賊です」

「何?! いかん!! 跡を付けられたか! ヨハンネ先にわしは行くぞ」


 グレイゴスは馬に強く鞭を打つ。それに馬は速力を上げた。


「わかった! ミネルヴァ」


 返答し彼女の近くに馬を寄せた。ヨハンネはミネルヴァが見つめる先を同じく目を細めたが砂埃しか見えない。すかさず、彼女を見下ろし見やる。


「数は?」

「恐らく、二十人」

「出来る? ダメなら無理しなくてもいいよ」

「いいえ。余裕です。ご主人様は先に行ってて下さい」


 もう一度、確認したヨハンネは決めたのか、強く頷いた。


「……わかった。ならここは任せるよ」

「お任せを」


 言うと同時に剣をゆっくりと抜き、ミネルヴァは相手に振り返り仁王立ちする。ヨハンネは馬を走らせながら彼女の背中を見つめる。


(―――――――彼女なら大丈夫。あれだけ強いんだから)


 不安な気持ちになった自分にそう言い聞かせ、信じて馬を前へ駆けらせる。


 ミネルヴァは盗賊が見える位置まで来た。目を細め視線を素早く動かす。


「騎馬が十五。別の方からも騎馬が五――――――――ん? 二人乗りしている? となると全部で三十か。行ける」


挿絵(By みてみん)

※やさぐれ様提供挿絵


 ミネルヴァの察知能力には驚かされる。






「隊長! 前方に女が一人います」

「女だぁ? よし、お前ら遊んでやれ!」

「了解! 俺について来い」


 バンダナをした男が鞭を打ちさらに馬の速力を上げた。それに何人かの部下が続く。後ろには弩を持った射手が乗っていた。それを彼女に向けると狙いを定めて同時に放った。風を切る音をたてながら真っ直ぐと飛んでいく。ミネルヴァはその音を聞き分けて、どの角度で飛んで来るかを先読みし身構える。


 鉄矢が見えたところでミネルヴァは後ろへ小さくステップし鮮やかに避けて見せた。


「ん?! おい! 当たってねぇぞ。しっかり狙え」

「あの速さを避けたのかッ?!」

「黙れ。貸せ。俺がやる!」


 自身ありげに豪傑の男が弩に新しい鉄矢を器用につがえ狙って放つ。

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