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業という名の  作者: ラズベリー
1/4

猫を拾いました。

『みー』


「……」


『にゃあ』


「…か、」


『に?』


「かわいい、何この生き物!」


 思わず抱き上げて頬ずりする。腕の中のその生物は大人しく抱かれるがままになっていた。


「こんなに冷たくなって…」


 今日は朝から雨が降り続いている。しかも、どしゃ降り。天気予報で言っていた、秋特有の台風のせいだ。


「寒いよね」


 その生物──改め、黒猫は、私の声に呼応するかのように小さく鳴いた。


「…うちくる? 私は一人暮らしだから、全然構わないんだよ。むしろ大歓迎。一人で夜過ごすのは怖すぎる」


 会話から察した方もいらっしゃるとは思いますが、このは捨て猫。学校の裏で段ボールに入って置かれてたのを、ついさっき発見した。

 段ボールには、黒いマジックで、誰か拾ってあげて下さいという趣旨の言葉が書かれていた。


「キミさえよければ、私の家くる? …といっても、小さい一軒家ですが」


 生家はここから結構遠いところにあるんだ。…仮に近かったとしても、帰る気さらさらないけど。


「衣食住は保証するよ。…衣がいるのかは不明だけども」


『…みぃ』


 そう呟いていると、黒猫が頭をすりすりと、制服に擦り付けてきた。


「いいの、かな?」


 再び短く嘶く黒猫。猫語は分からなかったけど、肯定してくれたものと見なした。



***



「…お、意外に艶やかな毛並みじゃないか。色も、漆黒と呼ぶに相応しいものだし」


 家に帰ってから、すぐにお風呂に入れた。濡れていて冷たかったし、なにしろ汚れていたから。

 そして、お風呂では。やはりというか何というか、猫故に水は嫌いなようで、盛大に暴れてくださった。

 弱っている身体のどこからそんな力が出てくるんだか…。いや、もちろん、そんなのにはめげずに洗ったけど。


 ──今その子は、平たいお皿に入れたホットミルクを舐めている。

 よほどお腹がすいていたのだろう。多めに注いだそれも、瞬く間に黒猫のお腹の中に消えていった。


「はいはい、今日はおしまいだよー」


 まだ欲しいとねだる黒猫を宥める。…本当は、飲ませていいのかも分からないんだよね。普通の猫なら大丈夫だろうけど、なんせこの子は捨て猫。あんな寒いところにいたんだから、肺炎の可能性もあるわけだし。ほかに弱っているところがあってもなんら不思議じゃない。


「明日動物病院に行こうね」


 幸い、明日は土曜日だ。

 さっき調べたら、近所の動物病院は土曜でもしているらしいし、学校の授業もないから好都合。

 …休みの日だけど早く起きないといけないなー。別にいいけども。



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