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思い出をお裾分け

森で一番長生きの楓のばあ様が薄緑のセーターを編んでくれた。編み目にはいろんな緑が織り込まれていてたいそう綺麗。

ありがとう、でもまだ暑いのに。そう言うとさやさや笑って「寒くなる前だからさ」と私をくすぐった。私は途端に嬉しくなって、山中の獣や木にセーターを自慢しに駆け出した。

秋がくる前に、ばあ様に大きな雷が落ちた。山がわんわん泣いた。その秋、木々はみんな無理をして立派な実を付け、ばあ様の供養をした。秋になるとセーターは黄色と赤の模様に変わった。ばあ様自慢の色の魔法だ、大人たちは潤んだ目で笑う。その冬、私はできるだけそのセーターを着ていた。

春が来て、萌える芽の色に変わったセーターを箪笥にしまった。私は馬鹿みたいに一晩泣き続けた。それから幾年も過ぎて、私はセーターをほどき、二つの手袋を編んだ。私の分と、奴の分。山の冬は人間には寒すぎるもの。

「素敵な色だ。魔法でも使ったのかい?でもまだ暑いのに」奴は少し驚いて、それから芽吹くように笑った。ばあ様の笑い方に少し似ていてまた泣きそうになったから、「寒くなる前だからさ、糸だけじゃなく編み込み模様も褒めろ」なんて憎まれ口を叩いて、ついでに頭も叩いてやった。


夏の森林が舞台のファンタジー。アイテムはセーター。

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