金管day's
①衝撃の事実
「・・・主旋律って嫌、目立つし」
今日部活にきているメンバー皆でコンクールの課題曲のマーチの音源を聞き、パート教室に戻ったとたんつかちゃんがボソッと言った一言。
「・・・っては?!(今とんでもない言葉を耳にした気が・・・)」
「ん?どーしたの?」
「どーしたの?じゃなくて!今主旋律嫌いとか言わなかった?!」
「言ったけど?」
「あんた、自分の楽器わかってる?!?!」
「Tpだけど・・・」
「そうじゃなくて!!!」
ラッソが驚くのにもわけがある。
だって、Tpといえば・・・
~~~
「何部なの?」
「吹奏楽部!」
「へぇ・・・何の楽器?」
「トランペットなんだけど・・・知っている?」
「ごめん、楽器とかよくわかんなくて・・・どんな楽器?」
「いわゆるラッパ♪」
「へぇ、ラッパふけるんだ、すごい!!」
~~~
・・・とまぁ、どんなに音楽に興味のない人でも、”ラッパ”というだけですぐ伝わるTp。
吹奏楽部の楽器の中で知名度争いをしたら、1位2位を争うであろう。
主旋律やソロが多く、かなり目立つ花形楽器。
そのためかTp奏者は目立ちたがり屋で積極的な性格のイメージが強く、実際にTp奏者の多くはそうであろう・・・特にTpを自分から始めた人は。
「また2ndか3rdでもいい・・・?」
「今まで1stを拒んでたのは、そういうことだったのか;(この1年間気づかなかったあたしって;)」
「だって・・・」
「・・・とりあえず、先輩に相談してからね。てか、コンクールの曲のパートって最終的に先生が決めるんでしょ?」
本日、同じ塾に通う3年2人は模擬試験でいない。
「・・・てかなんでさ、目立つの嫌なのにペットにしたの?」
つかちゃんは1年前、仮入部のときのやりたい楽器アンケートで、第一志望はTpとかいていた。
「だってさ、小さい楽器がよかったし、後ろに座りたかったんだもん・・・」
「・・・は?!」
「高いところは好きだし・・・だから第2志望トロンボーン、第3志望は小さいことだけ考えてA.saxだよ?」
「・・・あんたねぇ(全部目立つじゃん!前々から思ってたけど、つかちゃんの思考回路はどうしても分からない;)」
ちなみに、ラッソは第1・Tp、第2・Tb、第3・T.saxだった。
「(・・・ていうかこんなにうちら性格違うのに、志望はほぼ一緒って・・・謎だ。)」
ラッソはとりあえず1stの譜面を手に取り見つめた。
「・・・音もそんな高くないし、聞いたかんじFLとかTbとかと旋律同じだったじゃん。」
「そうだけど・・・」
「なかなか楽しい感じのマーチだし、良いと思うけどねぇ・・・」
「じゃあラッソ1st!」
「え~、うちは自由曲がいい。これそこまで目立たないし。」
「・・・そう?」
「てか、多分先輩だよ、1stは。」
「・・・だね。」
性格が正反対な2人が、パート決めで対立することはない。
ただ、先輩たちのパート決めは結構激しかった。
・・・というか、なんというか。
キーンコーンカーンコーン・・・
「あ、帰んなきゃね。」
「だね・・・片付けよ。」
2人で掃除に取り掛かり、廊下にでた。
②誰もがあこがれる美男美女・・・?
「やっぽ~」
午後練、まだ皆来ていなくてラッソが1人でマッピを吹いていると、たけちゃんが入ってきた。
「あ、たけ先輩!これ昨日もらったコンクールの譜面です」
「あ、昨日配られちゃったのか・・・音源聞きたかった」
「そのうちCD配られますよ、PCでも多分もうでてますしね。」
「ならよかった」
爽やかに笑うたけちゃん。
誰もが認めるかっこよさ。
イケメンな上に成績も抜群、実技系も全部出来る完璧Boy。
少なくとも、クラスの女子からは大人気。
だが、ラッソがこの先輩に恋愛感を抱くことはほぼ100%の確立でないだろう。
「ありがたんこぶ☆」
・・・沈黙。
「・・・先輩、スイッチ入れ替えないでください。悲しくなります」
さっきのクラスモードのままだったらまだ好きになれるかもな・・・と、ラッソは思う。
「ユーモワは大事だよ」
「それがないクラスモードしか知らない人からは、先輩もててますよね・・・」
「そうでもないけどさ・・・たまには一肌脱がないとやってけないって。」
「それは分かりますけど。むしろ3皮くらいぬいでる気もしますけどねぇ」
そして笑いあう。
Tpパートのメンバーは、基本的に学校や家でさえも優等生の”かぶりもの”をかぶっている。
「優等生ほどはっちゃけると怖いって、テレビで言ってましたよ」
「あながち嘘じゃないかもな。特にかなでを見てると。」
Tpパートの中でも一番ギャップが激しいかなで。
「だれが特にだって?」
「!!!かなで!!」
ドアのところに、かなでがいた。
「・・・うち知りませーん、先輩が勝手にいったことでーす」
「ラッソ、お前・・・!」
「残念、後輩に完全に裏切られたね、た・け・ちゃ・ん♪」
じりじりと壁においつめられるたけちゃん。
「ちょ・・・!」
ドコッボコッ
ラッソはかなでにボコボコにされていくたけちゃんを横目に、トイレへ向かう。
「(先輩たち、もっと大人しかったらかなり憧れる存在なんだけどな・・・)」
「おくれてすいm・・・先輩、またですか?;」
つかちゃんの目にはいったのは、あざだらけで正座するたけちゃんとすまし顔で楽器を吹くかなで。
「日常茶飯事だけど、特に最近ヒートアップしてるよね」
トイレにいっていた(逃げていた)ラッソが、つかちゃんのかたを叩いて中に入っていった。
③パート決めbyM部長
「さぁどうする?」
「っていってもどうせ先生にかえられるんですよね?」
「多分な。」
「じゃあなんでもいいじゃないですかー」
「それもそうね。・・・一応1st1人、2nd2人、3rd1人だけど。」
「じゃあ希望は?」
「私2ndがいいです・・・」
と、つかちゃん。
「ほか2ndやりたい人は?」
沈黙。
「・・・じゃあ、とりあえずつかちゃん決定ね。」
「はい!」
ほっとしたような顔のつかちゃん。
「(うちはなんで今まで気づかなかったんだ・・・;)」←①「衝撃の事実」参考
「ラッソは?なんか希望とかある?」
「あまりものでいいですよ?」
「かなでは?」
「う~ん・・・1stかな?」
「じゃあ俺とりあえず2nd。ラッソ3rdね。」
「はーい・・・珍しく丸く収まりましたね?」
普段は、1stが2つあっても同学年の組み合わせは駄目なため、3年生の1st合戦がすごい。
「だってコンクールだし、どうせ2つ1stは無理だからな。」
「へぇ・・・たけ先輩も考えることあるんですね?」
バコッ
「いっつ!!!」
「失礼な!これでも一応部長だ!」
「女の子殴っちゃいけませんよ、部長」
「・・・ラッソ、ほんとに・・・やっぱやめた」
「なんですかそれ;」
ラッソが少し考えて、分かった!というように顔を上げた。
「”ラッソほんとにかなで化してきてて怖い”」
「う・・・んなわけねぇだろ!(図星だ;)」
「今”図星”って顔しましたね!」
「へぇ・・・良い度胸してるじゃない」
かなでの腕がバキバキとなる。
「す、すいませんごめんなさいもういいません!!!」
「超早口(笑)」
「・・・女ってやっぱこえぇ」
「「・・・あぁ?」」
「イエナニモイッテオリマセン」
「・・・先輩どんまいです(笑)」
「・・・はぁ;」
後輩にまでいじられる部長であった。
①おっちゃんの苦労
「おっちゃん、疲れたよー」
椅子に座りながら、ダラーンと腕をたらすえひな。
「だからおっちゃんじゃなくて雫だし」
と、口を尖らせるおっちゃん←
「そう変わらないジャン♪」
「変わるわ!!」
「ねぇ、ラッソ♪」
「ん~?」
廊下を通りかかったラッソにえひなは声をかけた。
「おっちゃんだよね!」
「うんおっちゃん。」
「ラッソまで・・・」
ラッソはそんなおっちゃんにドンマイ、と笑った。
「そういえば、わもな先輩は?」
「委員会で残りがあるんだって。もうすぐくる!」
「マジか。じゃあさ、わもな先輩に5時に第2音って伝えといて!」
「なんで~?」
「さぁ?パートリーダーに伝えてってたけ先輩に言われてさ。」
「珍しい、ラッソがたけ先輩の言うこと聞くの。」
「言ってきたら今度昼おごってくれるっていうからさ♪」
といって、ラッソはニッと笑った。
「条件付か、どうりで;」
「じゃあね、えひなとパパ♪」
「こんなドS娘をもった覚えはないよ;」
「ばいば~い!」
「ラッソは少なくともえひなよりはマシな子だったんだけどなぁ・・・」
小学生時代のラッソを知るものは、誰もがラッソの変わりように驚いただろう。
「それどういう意味?!」
今にも殴りかかりそうなえひな。
「いえいえ、なんでもありませぬ!!」
バコッ
「いでっ」
「このー・・・」
何かを言いかけて、えひなはさっと自分の席に戻り楽器の手入れを始めた。
「えひな・・・?」
「おっちゃん、なにやってるの!!!」
「うぇぇ?!あ、わもな先輩・・・」
「ちゃんと練習かお手入れかしなきゃだめじゃない;」
「え・・・あ、はい、すいません・・・」
えひなをちらっとみると、超すまし顔。
そしておっちゃんの視線に気づいたのか、一瞬・・・悪魔の笑みを見せた。
「(えひなの馬鹿やろぉぉーーー!!!!)」
「(しーらんぺっぺ♪)」
「(うぅ・・・)」
えひなには振り回されっぱなしのおっちゃんでしたとさ。
②気持ちの上下
プープー・・・
本日は合奏。
今度の演奏会でやる、ポップスを練習中だ。
パーンパーン
後ろからふってくる、Tpの軽やかなメロディー。
それに対抗するように、Hrもなだらかな対旋律を歌った。
「Tbはもうちょっと音量出して。Tpはもっとタンギングを軽く。Hrはよく聞こえるしそれなりに綺麗だからその調子で。」
『はい!』
たろうちゃんの言葉に、Hr一家は顔を見合わせ、小さくガッツポーズをした。
そして、曲の中盤。
先ほどの綺麗な対旋律とは打って変わり、今度はTp、Tb、Saxとともに強めのメロディーを吹く。
「う~ん・・・じゃあ、Tp、Tb、Sax今のメロディー吹いて」
「「「(って、おい?!」」」
『はい!』
「・・・あのぉ、」
「なんだ?」
「そこ、Hrも一応メロディーです・・・」
一応も何も、がっつりメロディーなのだが。
なんとなく遠慮がちにいうわもな。
「・・・おぉ、すまんすまん。じゃあ、Hrも。」
「「「はい」」」
Hrの場合、対旋律などはとことん目立つが、メロディーとなると周りとまぎれて聞こえなくなる。
そのため、こんなことはよくあることである。いちいちへこんでいられない。
・・・後ろから来るTp、Tb達の哀れみの視線は感じないでおくとして。
「・・・よし、今のメロディーよかった。」
曲の最後のメロディー。
Hr一家はやったね、と顔を見合わせて笑った。
「Tp、Tbもう一度吹いてみろ。」
「・・・そこも一応Hrあります;」
「・・・すまんすまん(笑)」
合奏では気持ちの上下が激しいHr一家であった。
③かたつむり
Hrをくるっとまわして唾を抜く。
いい加減、この作業もなれた。
「えっと・・・」
「?えひなどうした?」
「唾どっかいっちゃった」
・・・慣れてないやつ約1名。
「・・・ドンマイ☆」
「かたつむりみたいで可愛いのはいいんだけどさ、唾抜きが面倒だよね・・・」
「あはは、まぁいいじゃん」
「そろそろ慣れてよ;」
「はい、すいません・・・;」
わもなに言われ、しゅんっと小さくなるえひな。
「(・・・私もえひなを丸く治められる技術がほしい・・・)」
「あたしトイレ行ってくるね」
「「はい!」」
「・・・パパぁ、唾抜いて?」
「可愛く言っても駄目だよ」
「ケチぃ・・・」
そういいながら、冷たく笑っておっちゃんの首筋に手をあてるえひな。
「って、お前殺す気か!!」
「え、駄目?笑」
「笑じゃなくて!!!Hrの中入れたろうか?!」
「ほんとにおっちゃん、かたつむりみたいに弱いねぇ」
「どういう意味それ?!」
「あはは・・・ははっ」
「訳わかんない・・・」
「で、抜いて♪」
「だから駄目だって!!!」
「パp・・・」
「ただいま~」
「・・・;」
このとき、本気でわもなになりたいとおもったおっちゃんであった。
①擬音語love
ただいま合奏合間の休み時間。
「のりちゃん、なんか音がもわもわしてた。」
「あ、はぁい」
「まっきー、もっとスライドビュンビュン動かして」
「はい」
ユッキーとはやが2年生にアドバイスをする。
「せんぱーい、音パンパン飛ばすにはどうしたらいいですかぁ?」
「う~んとねぇ、もっとこう、グッ、ビュンッ、パンッっていう感じ?」
「ん~・・・」
パァン
「おぉ!でた!ありがとございます♪」
「今ので通じるんだ・・・;なんかさ、Tbの会話、絶対擬音語入るよね。」
1st席に座っていたかなでが、はやにそういった。
「そうか?」
「・・・無意識?」
「あんまり感じたことないけど・・・」
「まぁね、便利だけどねぇ・・・」
「はや先輩・・・お腹ぎゅるぎゅるいってます」
「だな、早く合奏おわんねーかなぁ・・・」
「・・・今のおなかすいたって意味?」
「え?あぁ、うん。」
「(・・・ぎゅるぎゅるって;お腹痛いみたいじゃん;)」
「じゃあ、全員であわせるぞ。」
なぜこれで会話が成り立つのか、素朴な疑問を持ちながら楽器を構えたかなでであった。
②凶器?
ずぼっ
「・・・ありゃ」
まっきーがスライドを動かしていたら、手がはなれてしまい、前の机にゴツンとあたった。
「気をつけてね、まっきー」
「はーい」
「楽器も危ないけど、合奏のときはEupかHrに被害が加わるからね。」
「ですね・・・;」
あたったら結構痛いと思う。
・・・想像だけど。
「まっきー」
「ん~?おっと」
ラッソがまっきーに飛びついた。
「メロディーのところあわせよ~!」
「了解♪ちょっとまってね」
「へーい」
~♪
廊下で2人でメロディーを奏でる。
パーンパーン
ブヘッ
「「あ、ごめん!!」」
2人して音をはずした。
「割と良い感じだったのになぁ・・・」
「じゃあ、もう一回!!」
パーンッ
「・・・あ、なんだ、まっきーとラッソかぁ」
「いいよねぇ、あのメロディー」
通りかかったHr2人。
まっきーとラッソは気づかずに続けていた。
「「・・・ちょっととおりm」」バシッ
「・・・あ;」
「「いっつーーー!!!」」
「あ、ごめんっ!!!」
まったく2人に気づかずに吹き続けていたまっきーの、Tbのスライドが見事2人に直撃した。
「いや、いいけど・・・めっちゃ痛い;」
「だからごめんって;」
「凶器だね、それ;」
「・・・凶器、ねぇ((ニヤリ」
「「「まっきー、ニヤリってなに?!?!」」」
なにやらろくでもないことをおもいついたようです・・・。
①禁忌?
プオ~
Eupのやわらかい音が教室中に鳴り響く。
~♪
あぁ、意識が・・・
「って、はっ!」
「?ゆいちーどうしたの?」
Eupを吹いていたあいちゃんが、首を傾げて言う。
今日は珍しく、TubはBassパートではなく、Eupパートと一緒に練習していた。
しかし、ゆう君とエノは今、廊下に出て遊んでいる。
「(Eupの音って眠くなるんだよねぇ・・・しかも演奏者が和やかオーラだしてるし;)いや、ねちゃいそうだったからさぁ・・・」
「あはは、寝てないの?」
「う~ん、ちょっと寝不足かな?」
「そっか、がんばってね♪」
そして、また吹き始めた。
「(・・・うちもやるかぁ)」
バンボンバンボンッ♪
プオ~♪
「(いや、さ、たしかにEupとTubって形は同じだけどさぁ...同じ部屋で練習しちゃいけないとおもうんだよねぇ。。。)」
ゆいちーは、ため息をついた。
「(Eupの音けしちゃうし、それに・・・)」
・・・先輩遊びにいっちゃうし。
②対照的
「・・・でさ~」
「あ!先輩!何練習サボってるんですか!!」
ゆいちーが、教室に入ってきたエノにそういった。
「はぁ?さぼってねぇよ・・・なぁ?」
ゆう君に振るエノ。
「え・・・ま、まぁ、ね」
「(・・・先輩、声ふるえてますよ;)」
あいちゃんは後ろで若干微笑していた。
「とにかく!ちゃんと休み時間以外はここいてくださいよ!」
「っるせぇな」
「ふんっ」
「あ、あのー・・・」
ゆう君は恐る恐るエノに話しかける。
「あ?」
「ヒッ」
本気でビビルゆう君に、エノは思わずふきだした。
「嘘嘘、なに?」
「ビビッた・・・ここあわせようよ」
「オーケー」
「・・・大変だね;」
「よくあることだよ・・・にしてもさ、」
「ん?」
「・・・あの2人ってなんであんな仲良いんだろ・・・性格正反対なんだけどな」
「・・・さぁ?;」
後輩組みが先輩組みをチラッと見ると、仲良く演奏して・・・
・・・と思ったら、エノがゆう君にベルを向けてびびらせていた。
「「(・・・本当に仲いいのか?;)」」