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努力で生き抜くこの世界  作者: こっさむ
第三章 世界への一歩
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39/268

十四と十五

ご覧いただきありがとうございます!

よろしければ、この話の読み終わりにでも【ブックマークへの追加】や【★★★★★評価】をポチッと押していただけると、今後の執筆の大きなモチベーションになります!


それでは、どうぞお楽しみください。

翌朝、俺はいつもより少し早く目が覚めた。


レベルが14に上がったからといって、身体そのものが突然別人になったわけじゃない。それでも昨日より力が入りやすい。足も軽い気がする。思い込みかもしれないので、朝の鍛錬では普段と同じ動きを一つずつ確かめた。


町の外周を三周。


脇腹に痛みは出ない。


走る速度を少し上げても問題ない。


そのあと素振りを千回。最初の百回は速度を上げず、剣の軌道と身体の感覚を確認する。肩、肘、手首、腰、足。以前より少しだけ木剣が軽く感じた。


百一回目から速度を上げる。


違う。


少し速い。


でも、速く振れるからといって雑にしていいわけじゃない。


百五十。


二百。


二百五十。


途中で一度止まる。


呼吸を整えてから再開した。


前なら、調子がいい日はそのまま回数を増やしていた。


今日は増やさない。


千回。


そこで終わり。


身体を休ませ、水を飲んでから訓練場へ向かった。


ラウルはもういた。


「遅い」


「いつもより早い」


「俺より遅い」


「ラウルが早い」


「そういうことにしとくか」


ラウルは木剣を一本投げてくる。


受け取る。


今日は十本。


前回は五本全部負けた。


その前も負けている。


一度だけ勝ったあと、またずっと負けている。


でも今日は少し違う。


レベルが上がった。


それだけじゃない。


相手を動かすこと。


必要な情報だけを見ること。


予想と確認を分けること。


最近覚えたものを全部試せる。


「準備いいか?」


「うん」


向かい合う。


ラウルはLv15。


俺はLv14。


数字だけなら、一つ差。


でも。


数字が近いから勝てるわけじゃない。


それも分かってる。


「始めるぞ」


一戦目。


ラウルが先に来た。


速い。


昨日までより遅く見えるわけじゃない。ただ、自分の身体が少し速く動く分だけ、判断したあとに使える時間が増えた。


右から木剣。


俺は半歩下がる。


避ける。


すぐに前へ。


胴を狙う。


ラウルが剣を立てて受ける。


弾かれる。


でも離れない。


左。


ラウルの外側へ回る。


追ってくる。


位置。


俺。


ラウル。


訓練場の壁。


木柱。


他の訓練者。


全部はいらない。


今必要なのはラウルと、その後ろの空間。


俺は右側を少し空ける。


ラウルは来ない。


見られてる。


じゃあ普通に行く。


踏み込む。


上段。


途中で止める。


下。


ラウルが下がる。


一歩。


そこへもう一歩。


追う。


ラウルが横へ。


俺も。


さらに前。


今度はラウルが攻める。


剣。


避ける。


二撃目。


受ける。


重い。


腕が少し痺れる。


三撃目。


来る。


俺は下がらない。


左へ入る。


剣の内側。


近い。


木剣を振る場所がない。


だから肩。


身体ごとぶつける。


ラウルが半歩崩れる。


今。


剣を短く振る。


胸。


触れる。


「一本」


俺が言う。


ラウルが止まる。


自分の胸を見る。


それから俺を見る。


「……取ったな」


一戦目。


勝った。


前は四十戦目で初めて勝った。


それからまた負け続けた。


今日は一戦目。


少し嬉しい。


でも。


「次」


「余韻とかないのか?」


「十本だから」


「知ってるよ」


二戦目。


負けた。


ラウルが最初から距離を変えた。


近づかせない。


俺が前へ出れば、斜め後ろへ。


追えば止まって攻める。


追わなければ自分から来る。


さっき俺が近距離へ入ったから、それを嫌がっている。


対応が早い。


最後は俺が踏み込みすぎたところへ剣を置かれた。


胸。


一本。


「一勝一敗」


ラウルが言う。


「次」


三戦目。


今度は俺が追わない。


ラウルも来ない。


数秒。


見合う。


「来ないの?」


「来てほしいのか?」


「別に」


だったら。


俺が行く。


でも真っすぐ行かない。


右。


少し。


左。


また右。


距離だけ詰める。


ラウルは剣先を動かさない。


目。


肩。


腰。


足。


どこを見る。


全部じゃない。


重心。


右足。


少し前。


来る。


俺は踏み込むふりをして止まる。


ラウルの木剣が動いた。


早い。


でも空振り。


今。


左から入る。


胴。


ラウルが身体を捻る。


浅い。


当たらない。


そのまま剣が返ってくる。


俺の肩。


「一本」


また負け。


「今の読んだ?」


俺が聞く。


「途中でな」


「いつ?」


「お前が止まったとき」


止まることまで読まれた。


四戦目。


五戦目。


負け。


六戦目。


負け。


一勝五敗。


レベルが近づいても、簡単には変わらない。


でも。


前より全然違う。


全部、一方的じゃない。


五戦目は肩に触れる直前までいった。


六戦目はラウルを壁際まで動かした。


まだ勝てない。


でも届く。


「休憩」


ラウルが言う。


「まだ四本」


「知ってる。休憩してから」


俺も息が上がっている。


反対しない。


二人で壁際へ座る。


水を飲む。


「14ってどんな感じ?」


ラウルが聞く。


「少し速い」


「力は?」


「少し」


「俺との差、かなり減ったな」


「レベルだけなら一」


「レベルだけならな」


ラウルが自分の手を見る。


「俺、お前より三つ上だった時もあったよな」


そうだった。


最初に戦った頃。


俺は12。


ラウルは15。


今。


俺が14。


ラウルは15。


「追いつく」


「追いつかせねえよ」


すぐ返ってくる。


俺はラウルを見る。


「ラウルも上がる?」


「そりゃな」


「いつ?」


「知らねえよ」


「経験値足りない?」


「分かったら苦労しねえ」


昨日ディルとも同じ話をした。


ラウルは笑う。


「お前が14になったなら、俺もそろそろ上げたいな」


「焦る?」


「少しはな」


意外。


「なんで?」


「お前が追ってくるからだよ」


俺は少し黙る。


追ってるのは俺だけだと思っていた。


でも。


ラウルも見ている。


俺を。


「強くなるのは、お前だけじゃないって言っただろ」


前にも言われた。


その通り。


俺が成長している間、相手も止まっていない。


「休憩終わり」


ラウルが立つ。


俺も立つ。


残り四本。



七戦目。


俺は勝った。


今度は誘導を一度しか使わなかった。


最初からラウルを動かそうとすると気づかれる。だから普通に戦い、その途中で一瞬だけ右側を空けた。


ラウルがそこへ動く。


その先には訓練用の木柱。


でも狙いは柱じゃない。


右へ動いたラウルの左足。


踏み直し。


そこ。


一瞬だけ動きが遅くなる。


俺はその瞬間に前へ出た。


剣。


胸。


触れる。


「二本目」


ラウルが舌打ちする。


「今の嫌だな」


「何が?」


「俺が動くところ決められた感じ」


成功。


でも。


八戦目。


同じことをしようとして負けた。


ラウルは空いている方へ行かなかった。


逆。


狭い方へ入ってきた。


俺が少し驚いた瞬間に肩を取られる。


九戦目も負け。


二勝七敗。


最後。


十戦目。


向かい合う。


疲れてる。


ラウルも少し呼吸が荒い。


俺の方が疲れている。


持久力はまだ負けてる。


剣を握り直す。


最後だからって特別なことはしない。


見る。


必要なものだけ。


ラウルが前へ。


俺も。


剣同士が当たる。


一回。


二回。


三回。


受ける。


避ける。


離れる。


また入る。


ラウルの剣が右肩。


俺は左へ。


そこへ追撃。


読まれてる。


下がる。


壁。


近い。


前なら避ける方向を変える。


今日は。


変えない。


壁まで行く。


あと二歩。


ラウルが追う。


一歩。


剣。


俺は壁際でしゃがむ。


木剣が頭の上を通る。


ラウルが止まる。


柵を蹴る?


前にやられた。


俺はそれを待つ。


ラウルの左足が上がる。


来る。


でも。


蹴らない。


足が下がる。


フェイント。


俺の意識が足へ落ちた。


剣。


胸。


当たる。


「一本」


負け。


俺は止まる。


ラウルが笑う。


「前に一回やっただけで待ってたろ」


「うん」


「だからやらなかった」


また。


予想を利用された。


俺は息を整える。


二勝八敗。


負け。


でも最初の十連敗とは全然違う。


「もう一本」


「十本終わった」


「十一」


「昨日まで五って言ってただろ」


「傷治った」


「そういう問題じゃねえ」


まだできる。


でも。


腕が重い。


脚も。


今日は朝も走った。


素振りもした。


これ以上やれば、たぶん質が落ちる。


俺は少し考える。


「……明日」


ラウルが黙った。


「何?」


「いや。お前が止めると気持ち悪いな」


失礼。



訓練のあと、俺は一人で結果を考えた。


二勝。


八敗。


レベル14。


前より速い。


前より力もある。


でも、それだけでは勝てない。


むしろ数字が近づいたからこそ、技術の差が分かる。


ラウルは対応が早い。


一度見たものを次に変える。


俺が誘導を覚えれば、その誘導を利用する。


俺が攻め方を変えれば、距離を変える。


「十四になったのに二勝だけか」


声に出す。


少ない?


いや。


前は十戦して一度も触れなかった。


今は二回勝った。


なら成長してる。


そこで終わりじゃない。


何が足りない。


考える。


体力。


剣。


経験。


誘導の見せ方。


相手が対応したあとの対応。


一個覚えたら終わりじゃない。


相手がそれを知っている状態でも使えるようにする。


それが必要。


「いた」


リナの声。


振り返る。


リナとディル。


二人とも依頼帰りらしい。


「ラウルとやってた?」


「うん」


「何勝?」


ディルがすぐ聞く。


「二」


「十本?」


「うん」


「おお」


思ったより普通の反応。


「少ない?」


「いや」


ディルが首を振る。


「あのラウルに二本だろ?」


リナも頷く。


「前、全然勝てなかったよね」


「一回勝った」


「そのあとまた負け続けてたでしょ」


そう。


だから。


二勝。


ちゃんと増えてる。


「何の依頼?」


俺が聞く。


「荷物運び」


ディルが嫌そうな顔をする。


「戦闘なし」


「経験値入る」


「それは入るけどさ」


俺は知ってる。


運ぶのも経験になる。


奴隷の頃から。


「明日は三人で依頼?」


リナが聞く。


「うん」


「何がいい?」


ディルがすぐ答える。


「戦うやつ」


「昨日も戦ったでしょ」


「荷物よりいい」


三人でギルドへ向かう。


依頼板を見る。


いくつか戻っている。


街道警戒。


ゴブリン討伐。


小型魔物の巣の確認。


薬草採取。


俺は一枚ずつ読む。


昔なら一番危険そうなものを選びたかった。


今は違う。


何を鍛えたいか。


何が必要か。


三人でできるか。


そういうことも考える。


「これ」


一枚取る。


街道警戒。


最近、南側で魔物の目撃が増えているため、二つの農村を結ぶ道の巡回。戦闘になるとは限らない。


ディルが顔をしかめる。


「地味」


「広い範囲見られる」


《戦域把握》の練習になる。


それだけじゃない。


魔物が本当に増えているなら、痕跡を見る。


北側の異変と関係があるのかもしれない。


「私はいいよ」


リナが言う。


「二対一」


ディルが負けた。


受付へ持っていく。



街道警戒は翌日からだった。


その日は依頼を受けるだけで終わり、午後はそれぞれ自由になった。


俺はゼノを探した。


ギルドにはいない。


宿にもいない。


どこだろう。


受付で聞く。


「ゼノ・グレイヴさんでしたら、東側の訓練場にいらっしゃいましたよ」


東。


町には訓練場がいくつかある。


いつもの場所じゃない。


行く。


そこは兵士がよく使う広い訓練場だった。


入口近くで止まる。


ゼノがいる。


一人じゃない。


相手がいる。


見たことのない男。


いや。


ギルドで何度か見たかもしれない。


三十代くらい。


ゼノより少し低い。


短い銀灰色の髪。


日に焼けた肌。


がっしりした身体。


紺色の軽装鎧。


武器は長槍。


周囲に何人か兵士と冒険者がいる。


模擬戦?


俺は邪魔にならない場所へ移動する。


始まる。


最初に動いたのは槍の男だった。


速い。


長い。


突き。


ゼノが半歩だけ横へ。


避ける。


次。


槍が横薙ぎ。


ゼノは下がらない。


身体を沈める。


頭上。


そのまま前へ。


長槍の内側。


俺なら入りたい場所。


でも槍の男はすぐに柄を短く持ち直した。


石突き。


ゼノの脇腹。


ゼノが剣の鞘で受ける。


音。


離れる。


速い。


俺とラウルの比じゃない。


一つの攻撃が終わる前に、次が始まっている。


槍の男が距離を取る。


ゼノは追わない。


また。


突き。


今度は一つじゃない。


顔。


胸。


脚。


三回。


全部違う。


ゼノは避ける。


最低限。


大きく動かない。


俺は見る。


位置。


二人。


槍の間合い。


壁。


周囲。


でも。


追えない。


速すぎる。


《戦域把握》を使っても、情報をまとめる前に次へ行く。


これ。


自分で弱点として言った。


速い相手。


身体だけじゃない。


頭も間に合わない。


槍の男が踏み込む。


深い。


ゼノが初めて剣を抜いた。


一瞬。


金属音。


槍が上へ弾かれる。


ゼノの剣先が男の喉元で止まった。


終わり。


静か。


「一本」


男が言う。


ゼノが剣を収める。


「前より速いな」


「それでも届かないか」


男は笑っている。


強い人。


たぶんかなり。


でもゼノには負けた。


俺は近づく。


ゼノが気づく。


「見てたか」


「うん」


「ラウルは?」


「十本やった」


「結果」


「二勝八敗」


ゼノは一度頷く。


「増えたな」


分かるんだ。


隣の槍の男が俺を見る。


近くで見ると、顔には細い傷が何本かある。灰色の瞳。少し怖そうに見えるが、表情は柔らかい。


「この子か?」


「そうだ」


何の話。


男が槍を肩へ乗せる。


「レオン?」


「うん」


「俺はガレス。ガレス・ヴァーン。ここの兵士どもに槍を教えてる」


兵士?


冒険者じゃない。


「強い」


言う。


ガレスが笑う。


「子供に言われると素直に嬉しいな」


「ゼノに負けた」


「余計な一言もついてくるのか」


ゼノが少しだけ口元を動かす。


ガレスは俺を見る。


「剣使うんだろ?」


「うん」


「ゼノの弟子なら大変だな」


「なんで?」


「基準がおかしくなる」


それは分かる。


「ラウルに二勝した」


「ラウル?」


ゼノが説明する。


「ギルドの若い剣士だ。十五歳。レベル15」


「ほう」


ガレスの目が少し変わる。


「レオンは?」


「14」


「何歳だ?」


「八」


止まる。


少し。


「八?」


「もうすぐ九」


「そこじゃない」


よく言われる。


ガレスはゼノを見る。


「育て方間違えてないか?」


「本人が勝手にやる」


「止めろよ」


「止めてる」


二人の会話が少し面白い。


ガレスが槍を地面へ立てる。


「で、何を見てた?」


「戦い」


「それは見れば分かる。何が気になった?」


考える。


いっぱい。


速さ。


間合い。


槍の持ち替え。


ゼノの動き。


一番。


「ゼノが追わなかった」


ガレスが少し眉を上げる。


「そこ?」


「うん」


槍の長さなら、距離を取ったガレスの方が有利。


俺なら近づきたい。


でもゼノは追わなかった。


「なんで?」


ゼノを見る。


「お前はどう思う」


また。


俺は考える。


ガレスが離れた。


槍の間合い。


ゼノが追う。


その途中。


何が起きる。


「追ってくるの待ってた?」


ガレスが笑った。


「正解」


やっぱり。


「何するつもりだった?」


「それは教えない」


「なんで?」


「次ゼノとやるとき使うから」


本気。


強い人も同じ。


隠す。


変える。


試す。


俺とラウルだけじゃない。


「追えば罠」


ゼノが言う。


「追わなければ、相手から来るしかない」


あ。


オーク・リーダー。


オーガを動かした。


同じじゃないけど、考え方は似てる。


自分が行きたい場所へ行くんじゃなく。


相手が来たくなる状況を作る。


ガレスが言う。


「強い奴ほど簡単には動いてくれん。だから、攻撃より先に選択肢を作る」


「選択肢?」


「相手に何を選ばせるかってことだ」


昨日考えていたこと。


さらに先。


右へ動かす。


左へ動かす。


だけじゃない。


攻める。


下がる。


待つ。


その中から。


相手に選ばせる。


そして。


選んだ先を狙う。


「難しい」


「だから面白い」


ガレスが笑う。


俺も。


少し分かる。


「やる?」


聞く。


ガレスが止まる。


「俺と?」


「うん」


ゼノが口を開く前に、ガレスが笑った。


「いいぞ」


「ガレス」


ゼノが低い声。


「何だよ。軽くやるだけだ」


「お前の軽くは信用できん」


さっきディルに同じようなこと言われた。


「怪我させねえよ」


ガレスが訓練用の木槍を取る。


俺も木剣を持つ。


ゼノを見る。


「やっていい?」


「三本だけだ」


「五」


「三」


「四」


「交渉するな」


久しぶり。


三本。


分かった。



一戦目。


何もできなかった。


始まった瞬間。


槍。


胸。


止まる。


「一本」


速い。


見えた。


でも避ける前に来た。


「もう一回」


「待て」


ガレスが言う。


「今、何見た?」


「槍」


「だから遅い」


ゼノと同じようなこと。


「どこ見る?」


「好きなとこ」


教えない。


二戦目。


今度は槍先だけ見ない。


肩。


腕。


腰。


でも全部見ると遅い。


何。


ガレスが少し前へ。


足。


来る。


そう思った瞬間。


槍。


今度は顔。


俺は右へ避ける。


避けた。


でも柄。


横から来る。


肩。


「一本」


二回目。


一撃目は避けた。


「今のは?」


ガレスが聞く。


「足」


「悪くない」


でも次が見えなかった。


「槍は先だけじゃない」


木槍を回す。


「長い武器は、長いから強いんじゃない。長さ全部が武器だ」


三戦目。


最後。


俺は構える。


勝てない。


それは分かる。


なら。


一本でも避ける。


できれば二本。


ガレスが来る。


足。


肩。


突き。


胸。


俺は左へ。


避ける。


次。


柄。


分かってる。


しゃがむ。


避ける。


三つ目。


槍が引かれる。


距離。


次は突き?


違う。


ガレスが前へ。


石突き。


近い。


俺は剣で受ける。


重い。


身体が下がる。


そのまま槍が回る。


上。


避けられない。


頭の直前で止まる。


「一本」


負け。


三敗。


でも。


三回防いだ。


「いいな」


ガレスが言う。


「何が?」


「三本目で変わった」


「勝ってない」


「そりゃ俺が勝つ」


当たり前みたいに言う。


悔しい。


でも。


強い。


「またやる」


「いいぞ」


ゼノが横から言う。


「次は一週間後だ」


「なんで?」


「ラウルとの訓練も依頼もある。槍だけ見て他を崩すな」


正しい。


だから言い返しにくい。


「一週間」


ガレスが言う。


「覚えてたらな」


「覚えてて」


「冗談だ」


たぶん。



帰り道。


ゼノと二人で歩く。


「ガレス強い」


「ああ」


「どれくらい?」


「今のお前が考える必要はない」


「ラウルより?」


「強い」


「ゼノより?」


「弱い」


見れば分かる。


「俺、いつ勝てる?」


ゼノが俺を見る。


「ガレスに?」


「うん」


「知らん」


「十年?」


「だから年数を考えるな」


前にも言われた。


「一週間後は?」


「勝てん」


即答。


「一本取る」


「それなら好きにしろ」


それでいい。


一週間。


一本。


目標。


でも。


その前に明日の依頼。


街道警戒。


リナとディル。


ラウルとの訓練。


剣。


《戦域把握》。


やることが増えた。


「ゼノ」


「何だ」


「時間足りない」


「寝ろ」


「減る」


「寝ないともっと減る」


知ってる。


最近少し。


それも分かってきた。


俺は自分の手を見る。


Lv14。


ラウルは15。


ガレスはもっと強い。


ゼノはさらに上。


一つ近づくと。


その先が見える。


強くなったと思った日に、もっと強い人を見る。


前なら。


遠い。


そう思った。


今は違う。


遠いなら。


やることが多い。


それだけ。


明日は街道へ行く。


明後日はラウルと戦う。


一週間後。


ガレスの槍を。


一本。


取る。


その先は。


取ってから考える。


お読みいただきありがとうございました!

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それでは、次回の更新でお会いしましょう!

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