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【義弟視点】真実の愛?では女神様の天罰がどちらに下るか確認いたしましょう。

作者: 衛星 奏志
掲載日:2026/08/30

※こちらは前作同題 https://ncode.syosetu.com/n8666mq/ の別視点となっております。断罪シーンは前作にありますので、よろしければ、前作を先に読まれるのをお勧めいたします。

 その人はあまりにも美しく、女神様のようだった。


 僕──シビルが、子爵家からロートリンゲン公爵家に養子として迎え入れられたのは十歳の時だった。


 一つ上の義姉、アデライド義姉上は王家の色と言われる金髪碧眼を持つそれは美しい令嬢だった。

 何代か前に降嫁した王女様に似たその容姿は義姉上に尊き血が流れていることを示している。


 アデライド義姉上の婚約者は王太子殿下。


 彼は金髪だが、瞳の色は緑。

 それため、王家の色を持つ義姉上に劣等感を抱いたらしい。


「アデライド・ロートリンゲン公爵令嬢。貴様はここにいる、ミミー・ファルス男爵令嬢を指導と称して執拗に虐めた。その行いは卑劣極まりない。よって、貴様との婚約を破棄する」


 王太子は義姉上に恥をかかせ、王家に相応しくないと示す為に愚かな行動に出た。


 僕は王太子の側近として、王太子の後ろに立っていたが、暴走を止めることはしなかった。

 なぜなら、すでにこの王太子を不要と判断していたからだ。



 遡ること一年前。

 新入生としてミミー・ファルス男爵令嬢が入学して全ては狂いだした。


 ピンクに近いブロンドと、ペリドット色の瞳。

 小柄で瞳は大きく、小動物のように落ち着きがない令嬢。


 王太子とミミーの出会いも、曲がり角でぶつかり、ミミーが倒れそうになったところを支えてあげたというものだった。


 側近の一人であり、護衛である騎士団幹部の嫡男は何をしているのかと、思わず見てしまったが、王太子と共にミミーに見惚れているのだから使えない。


「殿下、令嬢をお離しください」


 仕方ないから声を掛けると、ハッとしたように離れた。


「怪我はないか?」

「えっ、はっ、ごっごめんなさい。ちょっと急いでて、前を見ていなかったの!」

「如何したのだ?」

「えっと……迷ってしまって」

「どこに行きたいのだ?」


 困った様子ではあるが、身分の低い令嬢に王太子自ら声を掛けるなんてことは、本来ならばあり得ない。

 しかも、その令嬢は貴族としての礼儀も知らない言葉遣いだ。


 この学園に於いて階級は貴族社会と同等で、階級によってネクタイやリボンで色分けされ、上下関係がはっきりしている。


 下位貴族が、国の上層部に身を置くことになる上位貴族と机を並べることはなく、カリキュラムも異なる。

 学園入学までに受ける教育の質に差があり、土台が違うのだから当然だ。


 元は子爵家三男であった僕も、十歳で公爵家に入ってから高度な教育を受けてきた。


 男爵家の色であるミミーには、この場で最も爵位の低い伯爵令息が対応すべきなのだが、その伯爵令息もまたミミーに見惚れているのだからお話にならない。


 僕は伯爵令息に声を掛けて、ミミーを王太子から引き離そうとした。

 しかし、王太子がそれを拒否し自らがミミーを目的の場所まで案内したのだ。


 恭しく手を差し出し、頬を染めて手を預けエスコートされる男爵令嬢。

 仮にも婚約者の義弟である、僕の目の前でする事ではない。


 その後、王太子をやんわりと諌めた。

 ああいった場では、令嬢と一番身分の近い伯爵令息に対応を任せるべきだと。すると返ってきた言葉が、


「令嬢を蔑ろにするのは女神様の教えに反するだろう? だから俺が対応したまでだ」


 伯爵令息に対応をさせたとして、それがなぜ蔑ろにすることになるのだろうか。

 理解に苦しむ。


 その後も、学園の庭園で、合同棟の廊下で、ミミーを見つけると王太子自ら声を掛ける。

 そのうち、ミミーからも声を掛けてくるようになり、本来限られた者しか入れない王太子専用の休憩ルームにまで招待するようになった。


 側近は僕を含めて四人。


 騎士団幹部嫡男と侯爵家嫡男と伯爵家嫡男だ。

 ちなみに、次期宰相と有力視されているのが僕だ。


 何度か苦言を呈したが、女神様を引き合いに出し言い訳をしてくる。


「下位貴族と交流が少ない俺に、女神様がミミーを遣わしてくださったのだろう。彼女の話は市井を知る上でも有益だ」

「ミミーはとても勤勉だ。だが環境に恵まれなかった。彼女を俺たちが手助けするのは当然だ。女神様も彼女のためにしている事を認めてくださる」


 ミミーは庶子で、男爵家に引き取られたのは最近なのだと言う。教育が間に合っていないだろうことは行動を含めて理解している。しかしミミーのような境遇の生徒はミミーだけではない。

 そして、だからこそ階級によってカリキュラムが分けられ、それぞれの成績や教育課程に合った授業を行っているのだ。


 女神様だって、自分を逢引きの理由にされては業腹だろう。

 しかも、他の側近三人も王太子に同意するのだから四対一。矯正するのも諦めた。


 この時点で、義父である公爵様に報告した。

 僕も彼らと同等と思われたくはない。きちんと報告を行い、公爵様の指示を仰ぐ。


「と言うわけで、矯正は不可能かと」


 状況を伝えると、公爵様は眉間の辺りを揉み、考え込んだ。


「その女神様のお考えの根拠はどこからきているのだ? 神にでもなったつもりか?」

「王太子殿下のお考えは分かりかねます。女神様の代弁者であるかのように振る舞うことがどれほど冒涜的であるか、お分かりになられていないのだと存じます」

「お前は今後どうしたい?」

「そうですね。男爵家を潰しても良いですが、最早王太子殿下は泥舟でしょう。私としては、さっさと降りたいところですね」

「そうだな、王太子殿下の後ろ盾から下りるよう、婚約破棄も含めて根回ししておこう。それで? アデライドが戻れば公爵家はアデライドが継ぐことになるが、お前はどうする?」

「私の考えはすでに申し上げております。私が公爵家を継いだ場合でも、次代の公爵はアデライド義姉上の子に継承すると。アデライド義姉上が公爵家を継ぐのならば、私はその補佐をするまで。家令でも補佐官でも護衛でもなんでも致しましょう」


 公爵様はふっと笑う。


「お前は変わらないな。公爵家に来た時からアデライド至上主義だった。頼もしいものだ。お前のことは悪いようにはしない。苦痛であろうが、そのまま王太子殿下の側近として残り、随時報告を。ああ、もう諌めなくていい、むしろ煽るくらいでいい」

「承知しました」


 それからは、ミミーのいないときに苦言を呈しつつ、場から離れる時間を増やした。

 そうすると、鬼の居ぬ間にと関係が深まっていくのだ。

 席を外したタイミングでここぞとばかりにこぞってミミーとの仲を深める。


 王太子専用休憩ルームは逢引きの場と化し、王太子だけでなく側近達も入れ替わりで訪れるようになった。

 王太子がいない時を狙ってミミーと二人で入って行くのだ。


 僕も誘われた。聞けば、ミミーも鍵を所有しているらしい。

 王太子専用休憩ルームに行くのを止めた。

 執務室は別にあるから問題はない。


 僕に対してのミミーの行動をやんわりと止め、絶対に二人きりにはならなかった。

 なりそうになったら、代わりに僕が席を外す。


 急速に関係が進み、身分制度を正しく理解する前に王太子達に甘やかされたミミーはどんどん増長していった。


 令嬢達についてはアデライド義姉上が冷静に見るように指示してくれている。

 そちらは正当に──


「行いは全て女神様がご覧になっておりますわ。女神様は私達を常に守ってくださっています。ご判断にお任せいたしましょう」


 と、女神様のご意志を尊重したもの。

 他の令嬢達は静観しているし、義姉上も学園で一人になることはない。


 義姉上はこれから起こる事を見据えている。


 やがて、ミミーが虐めを訴えてくるようになる。


 ボロボロになった教本。

 泥のついた制服。

 鋭い刃物で切られたスカート。

 ずぶ濡れで泣きながらやってきたこともある。


 義姉上の予想は的中した。

 虐めを誰のせいにしたいのか、義姉上か側近達の婚約者か分からないが、高位貴族の彼女達がそんな瑣末な事するはずがない。


 義姉上が指示するだけで、男爵家を潰すくらい造作もないのだから。


 ダメになった物を王太子が買い与える。


 筆記具、教本、制服、靴、鞄。

 やがて、付けていた装飾品を壊されるようになった。

 それも、王太子が買い与えるのだ、最上のものを。


 段々と要求が大きくなり、増長する。


「シビル様ぁ、酷いんです。お母さんの形見のペンダントがこんな風にされてしまって……」


 割れたガラス玉のペンダント。

 それを見せながら、チラチラこちらを見てくる。


「そうか、それは大変だったな。修理できるところを紹介してやろうか?」

「これ、本当に大切なものだったんです。もう付けられません。お風呂に入る時もずっと胸元にあったんです。それが無くなってしまう。それが悲しくて、これから私の胸元にはペンダントが無くなってしまうんだと思うと……」


 と言って泣くから、急ぎの用があるとチラチラ見てくる伯爵令息に後を任せることにした。

 ああやって泣けば買ってもらえると思っているのだ。

 胸を強調してくるところがまた、鳥肌が立つ。


 距離感を保ちつつ、王太子とミミーが仲を深めることに積極的に協力はしないが、かと言って反対もしない状態になり、卒業前。


「俺はアデライドとの婚約を破棄し、ミミーを正妃にしようと思う」


 と王太子が宣言した。


「なぜ、そんな──」


 アホみたいな選択ができるんだ? という言葉を飲み込んだ。

 信じられなかった。もう王太子としての役割など考えてもいないのだろう。


 すでに、王太子有責での婚約破棄の準備は整っている。しかし、ミミーを側妃や愛妾ではなく正妃にすると言ったのだ。義姉上を差し置いて。


「シビルも分かっていると思うが、アデライドの行いは女神様より天罰が下る。アデライドは国母に相応しくないうえ、天罰が下れば子は望めない。どちらにしても王妃にはなれない。せめてもの情けに、俺自ら決着を付けてやろうと思う。そうなれば公爵家を継ぐのはシビル、お前だ」


 脳内ではポカンと、呆けている。

 王太子は誰の話をしているのかと。


 複雑な感情が胸の中に広がり、拳を握る。

 焦燥、いや怒りか?

 怒りだとしてその矛先は──なぜこんな奴の婚約者が義姉上なのか。そこに怒りを覚える。


 深呼吸をする。

 今言ったことはそっくりそのまま王太子に返る。天罰が下るのは貴様の方だ、とそう心の中で繰り返し、冷静になる。


「公爵家、ですか。そうですね。ですが、そんなに上手くいくでしょうか?」


 王太子は両腕を広げて天を仰ぐ。


「女神様は愛を尊ぶ。俺とミミーは真実の愛で結ばれている。思えば最初の出会いも女神様の思し召しだったのだ。俺があの角にいたのも、ミミーが道に迷ったのも、あの廊下の角でぶつかったのも、女神様がそう導いた結果。俺たちは出会う前から惹かれあっていたのだろうな」


 真実の愛とは、事あるごとにミミーが言う言葉だ。

 なんでも市井で流行っている物語の中に出てくるのだそうだ。


 経典にも伝承にもない、女神様とは何の関係もない言葉だが、それが免罪符になると本気で思っているのだろうか。……思っているのだろうな。


「俺は、卒業パーティーでアデライドに婚約破棄を突きつける! 王家の色を持っていようとアデライドは王家に相応しい女ではないのだと皆に知らしめなくてはならない! それが、女神様から俺に与えられた使命なのだ!」


 自分に酔ったように言う王太子に白けた顔を隠せない。まあ、こちらを見もしないが。


 劣等感を拗らせ、破滅の道を突き進む。

 王家の色を持ち、聡明で美しい非の打ち所がない義姉上が相手では致し方ない。


 義姉上を貶されて怒りを感じるが、泥舟で沖に漕ぎ出しているのを特等席で見ていると思えば……それでも腹は立つが。

 早く帰って義姉上とお茶がしたい。そう思いながら、その後は生返事をして全て聞き流した。


 公爵様にすぐに報告する。


「今度の卒業パーティーで婚約破棄宣言をするそうです」

「そうか。では、王太子殿下にも王家にも責任を取ってもらおう」


 意気揚々と公爵様は王太子を破滅に落とす準備を入念に確認していた。

 いや、王太子だけではない。ミミーのファルス男爵家にもだ。


 下位貴族が高位貴族を敵に回すのだ、身の程を知らない娘の教育を疎かにしてしまった代償は大きなものになるだろう。


 笑顔で書類を捲る公爵様を見て、ブルッと体を震わせた。


「随分と大変な思いをしているそうね」


 ふわりと香る紅茶と焼き菓子の甘い匂い。

 義姉上との食後のお茶の時間、労うように言われ顔を上げる。


「いいえ。王太子殿下が自ら踊ってくれますからね。簡単なものですよ。義姉上の方は問題ありませんか?」

「こちらは平和なものよ。そもそも、私は上位クラスにいるのだから男爵令嬢との共通点もありませんもの。わざわざ合同棟に行く用事もありませんし」

「義姉上のお心が穏やかであればそれに越したことはありません」

「その分、貴方には苦労を掛けるわね」

「いいえ。それが僕の役目ですから」

「いい子」


 差し出した手が優しく頭を撫でる。

 義姉上はふわふわな僕の髪がお気に入りのようで、昔から時々こうやって頭を撫でてくれる。


 これだけで僕は報われるのだ。

 額をすり寄せると、目を細めた義姉上は最高に美しかった。



「アデライド・ロートリンゲン公爵令嬢。貴様はここにいる、ミミー・ファルス男爵令嬢を指導と称して執拗に虐めた。その行いは卑劣極まりない。よって、貴様との婚約を破棄する」


 卒業パーティーで行われた婚約破棄。


 熱くなっているのは王太子たち五人だけで、会場は完全に白けていた。

 根回しが済んでいたのもあるが、皆分かっていた。女神様の罰がどちらに下されるのか。


 側近の婚約者達も全員婚約破棄を決めていた。婚約破棄を有利に進める証拠は全て提供している。


 分かっていない、というか、思い込んでいるのは王太子達だけである。


 もうやる事はない。あとは義姉上に任せるだけ。

 淡々と言葉を返していく。

 思い込みとは恐ろしいもので、王太子達には全く響かなかった。



「ではシビル、帰りましょうか?」


 義姉上が泥舟から呼び戻してくれる。


 驚愕に染まる王太子達。

 それはとても心がスッとした。


 あれだけ諌め、苦言を呈してきたのになぜあちら側と思えるのか。


 それよりも恐ろしいのは、ミミーだ。


「シ、シビル様。私と仲良くしてくださったシビル様はどこに消えてしまわれたのですか?」

「? 私は貴女と仲良くしたことなど一度もないと思いますが? どこでそんな勘違いを?」

「かん……ちがい?」

「私が個人的に貴女と過ごした事が一時でもありましたか?」

「それは……」


 無い。当然だ。

 プレゼントをしたこともなければ、二人きりで過ごしたこともない。


 同じ空間にいて当たり障りのない話をするのを仲良くとは言わない。

 どんな会話をしたかすら覚えていない。


「それでは、ごきげんよう」


 義姉上の挨拶に倣って礼をする。

 義姉上をエスコートして会場を後にする。


 ようやく終わった。

 解放され、隣には王太子の婚約者の肩書のなくなった身軽な義姉上。


 これから新しい婚約者が決まるだろう。

 公爵家な上に、伴侶が義姉上だ。引く手数多だろう。


 お相手が誰になろうと、求められる限り義姉上を支えて補佐していくだけだ。


 次こそは、義姉上に相応しい婚約者になると良い。


 と、思っていた。


 公爵様の執務室のソファーで、目の前では義姉上が優雅に紅茶を飲んでいる。


 公爵様は執務机に向かい、書類を捲っている。


「フェルディナン王子の廃嫡が決まった」


 天罰が下り、王位継承権を失ったことはすでに知らされていた。

 子を、後継を望めなくなったため王位継承資格を失ったのだ。

 詳細の公表はされていないが、推測という形で話は伝わっている。腐り落ちたのだと。どこが、とは言わないが。


「フェルディナン王子は今後修道院にて一生女神様にお仕えする。贖罪でもあるな。次の王太子は第二王子だが、シビルはそのまま王太子の側近となる」

「それはよろしゅうございますわね。そうなりますとシビルはまだ、次期宰相の有力候補のまま、ということですわね?」

「そうだ」

「は、……しかし、公爵家は義姉上が継がれるのです。私の爵位はどうなりますか」

「そうだなぁ。どうしようなぁ」


 公爵様がチラッと義姉上に視線を送る。

 義姉上は見向きもせず、カップを傾けた。

 公爵様に従うという意思表示だろう。


「シビル、お前は今までロートリンゲン公爵家を継ぐために尽力してくれた。今回のことで忠誠心は疑いようが無い。それに、アデライドへの忠犬ぶりは言うまでもないだろう」

「忠犬……」

「ええ。間違いなく忠犬ですわ」

「どうだ? お前がアデライドの伴侶になれば丸く収まると思うのだが」

「は、私が、ですか?」

「嫌なのですか?」

「とんでもありません」


 義姉上の問いに考えるまでもなく否定の言葉が口を衝く。

 思ってもみなかった。僕が義姉上の隣に立つなど。いや? 隣ではないかもしれない。何せ忠犬だ。


 元々、公爵家を継ぐのは義姉上の子が成長するまでの繋ぎのつもりだった。

 結婚するつもりがなかったから婚約者もいない。


 それが、義姉上と結婚?


「義姉上にはもっと良い方が──」

「公爵家の執務が完璧に出来て、次代の宰相の有力候補で、王太子殿下の側近で、何よりも私を優先してくれる。そんな人が他にいて?」

「確かにそうやって並べられると、良さそうに聞こえますね」

「貴方はそろそろ自分が金のつぶてである事を理解なさい」

「金の、つぶて……」


 石ころであっても金は金。


「承知しました」


 テーブルを回ってアデライド様の前に跪く。


「我が身は、アデライド様の為に。心も全て捧げます。お許しいただけますか?」

「身も心もすでに捧げられている気もするけれど、許します。シビル、これからは貴方が私の婚約者。よろしくね?」

「は、こちらこそよろしくお願いいたします」

「私の可愛いワンコ。必ず私の元に戻ってきてね?」

「? 離れるつもりはありませんが?」

「ふふ、そう。それもそうね……ふふふ」


 よく分からないが、アデライド様が嬉しそうなので良しとする。


 学園を卒業するまでの一年。

 卒業して、さらに婚姻式までの半年。


 呼び方が義姉上からアデライド様に変わったくらいで、関係はあまり変化していない。

 お互い意識する事もなく、今まで通りだ。


 共にお茶の時間を取るのも、夕食後のお茶でその日あった事を報告し合うのも、執務を一緒に行うのも。

 時々指先にキスをして、頭を撫でて貰う。


 王宮に行かなくてよくなった分、共にいる時間は増えたが、内容は大して変わっていない。


 実感がなかったとも言える。


 国一番の大聖堂で、純白のドレスを着たアデライド様はこの世の何よりも美しかった。

 そのアデライド様がこれから妻になるのだと思うと現実味がない。


 誓いのキスも緊張しすぎて狙いを外し唇の端というかほぼ頬。

 クスリと笑うアデライド様にブワッと何かが溢れそうになったが、それよりも上がった大きな歓声に周囲を見ると、大聖堂の天井から光の粒が降り注いでいた。


 ──女神様の祝福。


「綺麗……」

「ええ、綺麗ですね」


 降り注ぐ光を浴びるアデライド様は神々しさも相まって舞い降りた女神の使いのようだ。


 女神様に連れて行かれるのが怖くなって、アデライド様を抱き上げる。


 驚いたアデライド様が首に腕を回した。


 大きな歓声に包まれて、誓いのキスをやり直すようにアデライド様に引き寄せられ、口付けられた。

最後までお読みいただきありがとうございます。


天罰について補足。

天罰は男女平等に「腐り落ちる」です。

神の御業なので、安全安心設計で、綺麗に(?)腐れて落ちます。癒着とか感染症とかの心配はないです。

喪失した後、日常生活にはなんら問題はありません。


ただ、いっそ切り取ってくれーってくらい痛い。天罰なので。


今回の場合は罪があまり重くないので痛みは半日くらいですかね。罪が重い(女神様判断)とゆっくりで長引きます。

 ※今回怒りの矛先は不義もだけど、浮気を正当化するのに女神様を使った事の方が重い。だから王太子の罪がより重い。


あと、ミミーは庶子ですがミミーの父親は天罰を受けていません。なぜなら、妻とミミーの母が望んでいなかったから。

妻はミミーの存在が発覚した時点で嫡男が生まれていなかったので、天罰は困る。

しかしながらその庶子のせいで男爵家は多額の借金を背負い爵位を手放している。

上手い事罰が下っていますね。

これは天罰というより自業自得ですけどね。


他にもスカッと、ざまぁのお話を書いておりますので、よかったら読んでみてください。

またお会いできますように!

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― 新着の感想 ―
シビルの忠犬具合と深い愛情が とてもほっこり良きお話でした 腐り落ちる‥‥ ミミーの自慢?のπが??? 男性のゎ何となく理解出来ても 女性の方はどこが落ちるのでしょか?? (×ω×;) 絶対的に略奪女…
棒が腐り落ちるのかと思ってたけど、日常生活になんら支障がないということは? ○○が腐り落ちるんですね(笑) 確かにそれがなきゃ種の家が更地になるから子も出来ない! なるほどなー!
義弟様の忠犬っぷりがほっこりして可愛かったです。 素敵なお二人ご馳走様です!
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