第一章第三節⑦ BuRning desiRe
[BuRning desiRe]
2014.5.21 10:30:20 星見里研究所内部(研究室)
side:神空 鴉那
ドアを押し開ける。
やっぱ他の部屋同様に電気は復旧していない。
ただ、薬品だけではない、焦げ臭さや腐敗臭の混ざった匂いが鼻腔を殴りつけてくる。
「……うぇ」
声にならない声が思わず出てしまう。
向こうのようなスプラッタは無い。
だけど、匂いだけならこっちのほうがきついかも。
「大丈夫か?」
「あんまり良くはないかもね……ちょっと戻る」
他の気配は感じられないものの、無意に長居したくもないので一度廊下に戻る。
「あまり良くない感じか」
「そうだね……うぇっ……鼻が……
ぐすん、うん、大丈夫。
でね、いくつか気になったこともあるかも」
「気になったこと?」
「うん、こっちの部屋は人がってことはないけど、色んな薬が反応したり焦げたりしててかなり臭いはキツイかも。
ガスマスクがあるといいかもけどもね……」
「どこかにありそうなところは?倉庫とか?」
「倉庫……この部屋はさっき見たね、うん、何もなかったよ……
でもないなんてことはないだろうし、どこかにはあるかも」
「なるほどな……他には?」
「うん。この部屋も電気が通ってなかったね。
奥も暗そうだったし。
ということは、多分、監視室も……」
「電源は落ちてる、か」
「多分だけどね」
「少しでも二度手間の可能性があるなら後回しにしよう。
となると復旧が先になるな、確かどこかに非常電源あったよな?」
先ほどの略図を広げる。
非常電源は……サーバー室横。
私たちがここへ入ってきた時の部屋。
「振り出しに戻る、か」
「仕方ないよ、ひとつずつやっていこ」
その時だった。
ズン!
横揺れが走り、顔を見上げる。
「地震か!?」
「わからない、でも用心に越したことはないかも」
月夏が前方を、私が後方を見る。
廊下を確認するけど……少なくともライトで見える範囲に何かいる気配はない。
「……この体勢で進むか?」
「……いいかもね」
お互いの距離がわかるよう、月夏の肩に左手を置く。
廊下を一歩ずつ、周囲をお互いに確認しながら進む。
周囲はライトで見えているはずなのに、安心は出来ない。
一歩が遠い。それでも進まないと、ジリ貧にしかならない。
長い1分だったけど、サーバー室に会敵することなくたどり着けた。
「ふぅー……」
「はぁっ……」
二人ともついた瞬間にため息をついて思わず苦笑い。
「ビビりすぎかな」
「ここで怖がらないのはただの無謀だよ」
ただ、敵はどこにどれだけいるかわからない。
さっさと終わらせちゃおう。
「あのドアだね」
ライトで照らしたドアの看板に、非常電源室と書いてある。
「……鍵は閉まってないよな?」
「……そう信じよ?」
覚悟してドアノブを握る。
カチャ……
どうやら鍵は大丈夫そうだ。
「ラッキーだったな」
「だねぇ」
ただ中は何もない保証はない。
少しずつ開けてみる……ものの、ここも大丈夫そうだ。
「……このまどこも、もぬけの殻だといいのにな」
月夏が大きなため息をつきながら愚痴る。
「そうはいかないだろうけどもね」
それはさておき、これが発電機だね。
えっと、このガス管をここに繋いで……ここがイグニッション!
ガコン!ブロロロ……
……点いたかな?
サーバー室は……電気がついたみたいだね。
「これで進めるな」
「その代わりに見たくないものも見えちゃうかもね」
「うぐっ、ルート選定はしっかりしねぇとな……」
でも、照明の有無はやっぱり大きい。
これで探索はきっと捗ると思う。
きっと。




