第一章第三節⑥ DoctoR DoctoR
[DoctoR DoctoR]
2014.5.21 10:22:38 星見里研究所内部(医務室)
side:神空 鴉那
あそこで得られたものは、やっぱりなかった。
そうなると手掛かりになりそうなのは……監視カメラ。
監視室か室長室に行けば、何か見つかるかも。
部屋のドアに短いノック5回。
先ほど決めた合図で医務室に入る。
「おお、そっちは何かあったか?」
「ううん、何も。
そっちは、ってことは……」
「ああ、いくつか薬らしきものはあったが何用かわからねぇからな。
包帯、ガーゼ、オキシドールあたりは問題なさそうだが……いかんせんそのあたりは知識もないしな……」
「変な薬も多いからね、確実なものがあるだけマシかも」
あの追手たちのような化け物にも効く麻酔薬なども、多分ここにあるんだろうけれども、どれなのかなんて知りようもないし。
「あとそうだ、これもあったんだ。
ないよりはマシだろうし、これだけ食べていこうぜ」
渡されたのは、個包装の飴玉。
多分、担当者の遺留品だけども、この先無補給になるかもしれない。
ありがたくもらっておこう。
「ん……ありがと……ソーダ味だったね」
「んお、梅味だったわ……ちょっと苦手だが、まあないよりゃいいか」
……一瞬、交換する?と出かけて飲み込む。
もう口に入れてんのに、ね。
顔を思いっきり横に振って雑念を払ってた。
……のを、怪訝そうに見られる。
恥ずかしい。
誤魔化すように、先ほど思ったことを切り出す。
「え、えっとさ!監視室……そう、監視室に行けばもしかしたら手がかりがあるかもしれない!
防犯カメラにきっと何が残ってると思う!」
「監視カメラか……ちなみに場所は?」
私も行ったことはないので、先ほど手に入れた簡易地図を開く。
「えっと……あ、さっきのオフィスか、研究室経由で行かないとだね……」
「……腹括るか」
「……研究室が奇跡的に無傷だといいけど」
「それは流石にないだろうよ」
ピシャリと言われるけど、まあそうだと思う。
「まるでホラーゲームだな」
「でも、手がかりが他にはないからね……うん、私が先行してみる。何度か研究室には、連れて行かれたこともあるから」
忌まわしい記憶が蘇ってくるけれど、大丈夫。月夏となら、きっと乗り越えられる。
「行こう、研究室へ」
十数メートルが、今だけは遠く感じる。
あの忌まわしい部屋、仮眠室、トイレ……その数部屋を通り過ぎるだけなのに。
赤い非常灯と、手に持ったライトだけが頼りだけど、あまりにも心細い。
奴らの気配は感じないけれど、もっとずっと重い空気が張り詰めている。
嫌な予感はするけれど、それが1秒後か1時間後かはわからない。
でも、きっと不可避の何かが、見ている、そんな気さえしてくる。
カツン、カツンという足音だけが耳を刺してくる。
そんな永遠にも感じる15mが、ついに終わる。
しかしそこはスタートに過ぎないわけで。
「……着いたね、研究室」
「……ああ」
ドアにかける手にも、緊張が走る。
「私が先行するから、月夏は合図を待って」
「……頼んだ」
「任せて。
……行くよ」
非常灯に照らされたそのドアを、ゆっくりと開けた。




