第一章第三節④ Shock out
[Shock out]
2014.5.21 09:11:06 黒谷岳トンネル(側道)
side:白波 月夏
来た道はロックされ、仮に出ることができてもあの化け物。
目の前にあるラダーを降りていくしか道はない。
「もう進むしかねぇな」
「うん、きっと、この先に……」
この旅の終わりはあるのだろう。
どんな終わりだろうか?もしあの化け物たちがたくさん居たら。もしこの施設に防衛のための兵器があったら。
……いや、俺は、俺たちが笑って終わりたい。
「……っし、やってやろうぜ。」
「うん、そうだね。私が先行して問題がなければ壁を3回叩くか、光るものがあったらそれで合図するからそうしたら降りてくれる?」
「……わかった」
少し自分が先行しようと一瞬よぎったが、万が一の対応は鴉那のほうがずっと上手だ、任せよう。
「スマホがありゃライトが使えたんだがな……あの時はそうするしかなかったと思っちまって」
「仕方ないって、それに多分下の施設ならあると思うし。
……もし想定外の音が聞こえたら、月夏はしばらく待って。
狭い場所で同士撃ちしたくないから」
「ぞっとしない話だぜ、了解した」
そう言うと、ラダーを降りていく鴉那。
少し深いのだろうか、照明のない中間部がどういった様子かわからないが、ラダーを踏む、カツンカツンという靴以外の音などはしないからおそらく大丈夫なんだろう。
やがて降りきったのか周囲を警戒しながらどこかに消えた。
上からじゃ見れる範囲も限られて降りたい気持ちが湧き立つが、約束を反故にするのは信頼してない証だ。
しばらく待っていると、パッパッパッと、懐中電灯だろうか、3回光った。
俺もラダーを降りていく。
下で周囲警戒をする相棒が頼もしい。
「よっ、待たせたか?」
「大丈夫、ちょうどいいのも見つかったから」
「ライトか。どこまで電源が生きてるかわからない以上、ありがたいな」
降りたフロアは……サーバールームだろうか。
壁のようにそり立つ機械は、今は点滅もしなければ稼働音もしない。
「ここは電気が落ちてるみてぇだな……他の部屋も期待はできないか」
「行ってみるしかなさそうだね」
右手に鉤爪を、左手にライトを構えた鴉那が先行し部屋を出る。
廊下か。
ここは非常用電源が生きているのか、赤いライトが足元を照らしているが逆に不気味だ。
「いかにも、って感じだな」
「油断はしないでね。
……記憶が正しければ、この部屋は研究者がたくさん居たはず」
破損して歪んだドアの両側面に二人で張り付く。
念のため、内潤卦を少しずつ巡らせておく。
何があっても、咄嗟に動けるように。
鴉那のハンドサインに従い、見様見真似だが突入の構えを取る。
3、2、1、GO
鴉那が蹴り破ったドアに突入する。
ライトを鴉那が軽く振って周囲を確認したが、その一瞬見えた光景が網膜に張り付く。
「うっ」
そこは、元々はデスクやパソコンが所狭しと並んでたのだろう。
過去形なのは、それが破壊され尽くされ、そして赤いシミが、壁や瓦礫に……
そして何より、腐敗した臭いが内潤卦で過敏になった鼻に突き刺さる。
「ヴッ……ヴォエ……!」
あまりの惨状に、反射的に吐きそうになる。
胃に何も残ってなくて助かった。
「月夏は外で待ってて」
鴉那は左腕で鼻を覆いながら進んでいく。
「だ、だけどもよ……」
「その状態じゃ、もしもの対応が出来ないから。大丈夫、ちょっと探したら私もすぐ戻る」
そう言うと少し先にある瓦礫から何かを探し始めた。
くそ……不甲斐ない。
「わかった、あまり無理はするなよ」
ドアから出て壁にもたれかけると同時に、頭を考えが巡り始める。
自分の覚悟が甘かったんじゃないか?
鴉那についていくというのは、あの化け物たちがやったことを目にするのくらい、わかってただろうに。
自分の想像力のなさが、情けない。
「はぁ……」
「大丈夫?」
探索を終えたのか、鴉那が戻ってきていた。
「おわっ、あ、アナか……大丈夫だ。で、何かあったか?」
「うん、これとこれがあればなんとかなるかな」
そこにあったのは社員カードとライト。
「ここのドアは壊せたけど、どこもそうとは限らないし電気が生きてるかもだからね。ライトは月夏の分」
「ああ、助かる。ありがとう」
正直ライトはかなりありがたい。
「一旦別の部屋に行こう。幾つか確認しておきたい部屋があるから」
惨状を後に、鴉那に先導され次の部屋へと向かった。




