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裏格闘技王者の姉が帰還。溺愛する弟をイジメた男女を「私は女だから関係ないよね?」と男女平等に病院送りにする無双生活』

掲載日:2026/01/23

 初めまして、作者です。

数ある作品の中から本作を見つけていただき、ありがとうございます!

本作は、「世界最強のブラコン姉」が、愛する弟を傷つける不逞ふていの輩を、問答無用の拳で「男女平等」に粉砕していく無双&溺愛ストーリーです。

「格闘技のプロが素人を圧倒する爽快感」と「ちょっと(?)愛が重すぎる姉弟のやり取り」を楽しんでいただければ幸いです。

それでは、伝説の裏格闘家が学園に解き放たれる瞬間を、どうぞお見逃しなく!

 事情があって数年間、世界中で武者修行をしていた僕の義姉――鬼龍麗奈きりゅう れいなが帰ってきた!

 

 ついでに各地の裏格闘技タイトルを総ナメにしてきたらしいけど、そんなことより僕にとっては別の意味で「最強」の姉さんだ。

 

 なにせ義弟の僕を溺愛していて、帰国してからは片時も離れてくれない。

 

 嬉しいけれど、トイレやお風呂にまでついてこようとするのは本当に困る。

 

 終いには同じベッドで寝ようとするのを、「次に潜り込んできたら、僕、舌を噛み切るからね!」と決死の宣言をして、ようやく諦めてもらった。これ本当は女の子のセリフなのに!

 

 僕だって健全な男の子だ。姉さんみたいな美少女と密着して寝ていたら、理性が爆発するに決まっている。

 

 ……まあ、姉さんの狙いはそこなんだろうけど。高校生の間は、節度を守ろうよ! 本当、はぁ……。

 

 そんな平和(?)な日々が、ある日一変した。

 

 僕が学校で不良グループに目を付けられ、この間も集団リンチまがいの目に遭い、もう少しで病院送りにされるところだった……という事実を、姉さんが知ってしまったのだ。

 

 その瞬間の姉さんは、まさに「怒髪天を突く」を体現していた。


 「今すぐ純君を傷つけた連中を、この世から消してくるわ」

 

 凍りつくような笑顔で物騒なことを口にする姉さんを、なだめすかすのにどれだけ苦労したか。


 僕としては、あんなのリンチだなんて大げさだと思っているのに……。


 そして今日、姉さんは僕の学校に編入し、一緒に登校することになった。


 ……嫌な予感しかしないよ!どうか誰も死にませんように!


 今日から姉さんと同じ学校に通学!

 嬉しいけれど……正直、嫌な予感しかしない。絶対に何か起きるよ、これ!


「ね、姉さん。ちょっと、くっつきすぎだってば!」

「えへへ、だって久しぶりに純君と一緒に登校できるんだもん。お姉ちゃん、嬉しくて我慢できないよぉ!」

 

 僕の腕に隙間なく抱きついてくるのは、義理の姉である鬼龍麗奈きりゅう れいな

 そんな僕たちの前に、ガムを噛みながら態度の悪い女子が立ちふさがった。


 「あーあ?。朝っぱらからどこのバカップルかと思ったら、鬼龍じゃねえか。まさか、お前みたいなヘタレに彼女いたのか?」

 

 クラスで女子グループを仕切っている佐藤さんだ。派手に着崩した制服に、鋭い目つき。まさに「スケバン」という言葉が似合う彼女の横には、体格のいい彼氏がニヤニヤしながら腕を組んで立っている。

 

「あらぁ、彼女だなんて言われちゃった。ねぇ純君、どうする? 認めちゃう?♥」

 

 姉さんは頬を染めて身悶えしているけれど、抱きついている腕の力が、一瞬だけ「ギチッ」と強まった。……まずい、スイッチが入った。


 「ち、違うよ! 姉さんだよ。先日海外から帰国して、今日からこの八神学園に編入するんだ」

 僕の必死の言葉に、佐藤さんは「ハッ」と鼻で笑い、彼氏と顔を見合わせた。


 「へぇ、姉貴かよ。お前みたいな弱虫に、こんなイイ女の姉さんがねぇ……。なぁ、俺たちにも紹介してくれよな?」

 

 彼氏の下卑た視線が姉さんをなめる。

 僕は震えた。……彼らの無礼さにではない。

 隣にいる姉さんの瞳から、一切の「光」が消え失せたことに。


 「あ、紹介するね。友達の佐藤さんと、その彼氏の、えーと……」

 

 場を和ませようと、僕は精一杯の笑顔で紹介を始めた。けれど、佐藤さんは僕の言葉を遮るように、汚い言葉を吐き捨てた。


 「あん? 誰がアンタの友達だって? 調子乗ってんじゃねーよ、このヘタレが。一緒の空気を吸ってるだけで吐き気がすんだよ。……また痛い目を見なきゃ分かんないのか?」

「まったくだ。俺の女に馴れ馴れしく話しかけてんじゃねえよ、ゴミが」

 

 隣に立つ彼氏も、見せつけるように僕を睨みつけ、拳をポキポキと鳴らす。


 「妙子たえこ、今日は俺にやらせろ。この『ドチビ』には、徹底的に身の程を教えてやる必要があるからな」

「ま、待ってよ! 友達っていうのが気に食わないなら、クラスメイトの……」

 

 慌てて食い下がろうとする僕の肩を、冷たいほどに静かな手がポン、と叩いた。


 「純君。止めて」

 姉さんの声だ。さっきまでの甘い響きは消え失せ、底冷えするような硬い響きに変わっている。


 「紹介なんて必要ないわ。……分かったから。コイツらなんでしょ? 純君を理不尽な理由でリンチして、病院送りにしかけたクズ共は」


 姉さんの顔を見た瞬間、僕の背筋に氷柱を突き立てられたような戦慄が走った。


  怒りに燃えている。いや、そんな生易しいものじゃない。姉さんの瞳の奥で、どす黒い「殺意」の炎が静かに揺らめいているんだ。

 

 ま、まずい……! 麗奈姉さんがこの顔になったら、間違いなく血の雨が降る!


 「ね、姉さん、落ち着いて! あれは、その……リンチだなんて、そんな大げさなもんじゃ……」

 

 僕は必死に姉さんの腕にすがりついた。けれど、火に油を注いだのは、あろうことか死を目前にした当事者たちだった。


 「ああん? 情けねえツラしてんじゃねーよ! あの程度の『根性入れ』をリンチだなんて、大げさに言ってんじゃねえぞ、コラ!」

 

 佐藤さんが、嘲笑あざわらいながら姉さんを指差す。

 追い打ちをかけるように、隣の彼氏も鼻で笑った。

 

「まったくだ! お前があんまりにもヘタレで情けねえから、俺たちが親切に根性を叩き直してやったんだろ。むしろ、感謝してほしいくらいだぜ!」

「……っ!?」


  僕が必死に場を収めようとしているのに、二人はこれ以上ないほど最悪な「燃料」を投下してしまった。もうダメだ。

 

 一線を越えてしまった姉さんは、誰にも――たとえ僕でも、止めることなんてできない!


 「へぇ……。私の可愛い純君を傷つけたのは、お前らなのね。そんな鶏ガラみたいな貧相な体と、ドブネズミみたいな顔をして……。よくも純君の美しい肌に、汚い傷を刻んでくれたわね。そっちの牛ブタ野郎も、同罪なら万死に値するわ」


 「ああん!? 今、なんて言いやがった……!」


  姉さんが、二人が一番気にしているコンプレックスを平然と、しかも全力で踏み荒らした。


 確かに佐藤さんは痩せすぎていて少し出っ歯だし、彼氏の方は柔道か相撲の経験者らしいけれど、筋肉の上に脂肪が乗りすぎた牛みたいな体格だ。

 ……それを、本人の目の前ではっきり言っちゃうなんて!


 でも、今の姉さんに何を言っても無駄だ。彼女の逆鱗げきりんに触れたが最後、もう誰にも、この「処刑」は止められないんだから。


「……もう、どうでもいいわ。純君と同い年なら、一応は年下。その事実に免じて、一度だけ謝罪のチャンスをあげるわ」

 

 姉さんの声から、一切の温度が消えた。


「今すぐ土下座して、額を地面に擦りつけて謝りなさい。二度と純君に近づかないと誓うなら、今日だけは勘弁してあげる」


 「はぁー? 何言ってんの、このアマ。情けねえ奴! 高校生にもなってお姉ちゃんに泣きついて――そんなんだからイジメられ――」


  佐藤さんが、嘲笑あざわらいながら言葉をつむごうとした、まさにその瞬間だった。


 「――ブギャラッ……!? あ、アガ、アガガガ……ッ!!」


 言葉の最後は、肉が潰れる鈍い音にかき消された。

姉さんの怒りの右ストレート。


 目にも止まらぬ速さで放たれた一撃は、佐藤さんが喋っている最中の顔面に真っ向から突き刺さった。


 バキリ、と嫌な音が響く。

 

 佐藤さんの低かった鼻が、文字通りペッチャンコにひしゃげていた。


 「ああ……かわいそうに……」

 

 あまりの激痛に、佐藤さんは地面にひっくり返り、鼻を押さえながら七転八倒している。

 さっきまでの威勢はどこへやら。今はもう、地をう無様な虫にしか見えなかった。


「て、てめぇ……! オレの妙子おんなに何をっ!」

 

 鼻を砕かれのたうち回る佐藤さんを見て、彼氏が顔を真っ赤にして吠えた。けれど、姉さんは柳に風とばかりに、冷たい視線を彼に投げ返す。


 「あん? 何か文句あるの? あんたも純君をイジメたクズの一人でしょ。コイツは『女』だから、一応一度だけはチャンスをあげたわ。……まさか、『女を殴るなんて最低だ』なんて、女の私に言うつもりじゃないわよね?」

 

 姉さんは、挑発するように唇の端を吊り上げた。

「女同士の喧嘩に、男のあんたが口を出すなんて無粋なことはしないで。……もっとも、男のあんたには、謝罪のチャンスなんて最初から一秒も用意してないけどね」


「こ、このアマ……っ! よくもオレの妙子を……! タダで済むと思うなよ、ブチ殺してやる!!」

 

 怒りで理性を失った彼氏が、その巨体を揺らして姉さんへと掴みかかろうとした。

 ……ああ、もう手遅れだ。

 姉さんは、自分から襲いかかってくるのを「待っていた」んだから。


 「はっ! こんな女に執着するなんて、あんたも相当女に縁がないのね。まぁ、そのブタみたいに醜くぶよぶよした体じゃ、それも当然かしら? ……同情してあげるわ」

 

 姉さんは、吐き捨てるように嘲笑あざわらった。


 「文句があるならさっさとかかってきなさいよ。それとも、口先だけのフニャ○ン野郎なわけ?」


 「……お、女だからって、調子乗ってんじゃねえぞっ!!」

 

 沸点に達した彼氏が、怒号とともに姉さんへ突っ込んだ。

 柔道だか相撲だか知らないが、その巨体から繰り出される突進は、確かに素人目には脅威だったかもしれない。

 

 けれど、姉さんにとっては「止まっている標的」と同じだった。


 ――ドォォンッ!一瞬の交錯。

 

 姉さんの拳が、目にも止まらぬ速さで彼の急所を正確に捉える。


 「グェ、ッ……!? ガハッ、グギャアァァァー……オ、オゲェェェェェェェェェェェェェェッ!!」


 喉、鼻、そして最後はみぞおちへの強烈なボディー。

 

 闇格闘技世界王者のスピードで叩き込まれた衝撃に、彼の巨体がくの字に折れ曲がった。

 

 胃の内容物が逆流し、アスファルトの上に見苦しい「ご馳走」がぶちまけられる。 さっきまでの威勢はどこへやら。

 彼は白目をきながら、己の吐瀉物としゃぶつの中で無様にのたうち回っていた。


 姉さん、本気でキレてる……!

 あんなの、いくらなんでも素人にやっていい技じゃないよなぁ!

 

 まず、姉さんの放った超高速のワン・ツー。それが、彼氏の喉元と鼻梁びりょうを完璧に捉えた。

 

 姉さんの放つ『ワン』――つまり左のジャブは、男子ボクシングの世界チャンピオンすら凌駕するスピードだ。

 

 人間が視覚情報を処理して、筋肉に回避の指令を出すまでにかかる限界値……いわゆる『0.2秒の壁』。姉さんの拳は、その生物としての限界を遥かに超える速度で叩き込まれる。

 

 それは、現役の世界王者であっても、ブロックに全神経を集中させてようやく反応できるかどうかの神速。

 

 目の前の、ただ体が大きいだけの素人に反応できるはずなんてなかった。


 ――グシャッ、という嫌な音が響く。

 喉を突かれて声を失い、鼻を砕かれて視界を奪われる。

 彼氏にできたのは、ただ何が起きたかも理解できぬまま、その場に棒立ちになることだけだった。


 しかも、姉さんのジャブはただ速いだけじゃない。

 普通、素手のジャブっていうのはスピード重視で、腰の入っていない「当てるため」の軽いパンチだ。ヘヴィ級ボクサーの一撃だって、まともに食らわなければ「軽く叩かれた」程度で済むこともある。

 

 けれど、姉さんのジャブは次元が違った。

 ありえないスピードに、世界中で数十人しかいない超人体質から繰り出される全身のバネが乗っている。

 

 それはボクシングのパンチというより……剣道の高段者が放つ、竹刀の『突き』そのものだ。

 

 細い一点に全衝撃を集中させ、相手を貫くための「槍」のような一撃。

 

 本来なら禁じ手とされる急所――喉。

 

 そこに、竹刀の突きを上回る威力で拳を叩き込まれたらどうなるか。


 答えは、目の前の無様な光景が物語っていた。

 喉の軟骨を強烈に圧迫された彼氏は、声すら出せず、肺に空気を送ることもできず、ただ苦悶に顔を歪めて崩れ落ちる。

 

 格闘技のプロが、素人相手に、一切の躊躇ちゅうちょなく急所をぶち抜く。

 ……姉さん、やっぱり加減を忘れてるよ!


 さらに、喉を貫いたジャブに続く、返しの右ストレート。


 姉さんなりに「殺さないように」と十分な手加減はしているんだろうけど……相手は闇格闘技世界王者の拳だ。佐藤さんと同じく、鼻梁びりょうを完璧に捉えられた衝撃で、彼の鼻の骨は無残にも陥没した。

 

 喉を潰され、鼻を砕かれ、酸素を求める肺がひきつけを起こす。

 

 地獄のような呼吸困難にもだえる彼氏。けれど、姉さんの「教育」はこれだけじゃ終わらなかった。


「――最後はこれ。お腹いっぱいになりなさい」

 トドメに放たれた、えぐるようなボディーブロー。

 それは文字通り、胃の底からすべてを絞り出すような、重い一撃だった。

「オ、ゲェェェェェェェェッ!!」


 彼の巨体がくの字に折れ曲がり、今朝食べたであろう朝食のすべてが、無情にもアスファルトの上へとぶちまけられる。

 

 ……ああ、彼氏さん。なんて無様な姿。

 そして僕は、ひっくり返った彼を見下ろしながら、ふと現実的なことが気になってしまった。

「これ……後で誰が掃除するのかなぁ。……」


 朝食をアスファルトに「ご馳走」し続け、もはや人間としての尊厳すら失いかけている彼氏さん。そんな無様な姿には一瞥いちべつもくれず、姉さんは次の獲物へとゆっくり視線を戻した。


 その先には、ようやく鼻の痛みが引き始めたらしい佐藤さんが、震えながらこちらを見上げていた。


「いつまで、そこで痛がっている『フリ』をしているのかしら?」

 

 姉さんが一歩、また一歩と詰め寄る。その顔は、僕に向ける聖母のような微笑みとは程遠い――地獄の底から這い上がってきた鬼そのものの表情だった。


「お仕置きはまだ終わっていないわよ。さっさと立ちなさい。……それとも、自分から立てないくらい、もっとボロボロにしてほしいのかしら?」


 冷徹な処刑宣告。

 佐藤さんの顔が、恐怖で引きつる。


 さっきまでの鼻の痛みなんて、これから始まる「本当の地獄」に比べれば、まだマシな方だったと思い知らされることになるんだ。


 ……姉さん、本気だ。

 一度スイッチが入った彼女にとって、相手が女だろうが泣いていようが、教育が終わるまでは一切の容赦をしない。それが「裏格闘技の頂点」に君臨した者の流儀なんだ。


 姉さんの静かな、けれど心臓を握りつぶすような恫喝。

 それに弾かれたように、佐藤さんが狂ったように起き上がった。


「も、申し訳ございませんでしたぁっ! に、二度と、二度と弟さんに近づきません! だから、だから勘弁してくださいっ、この通りですぅ!」

 

 潰れた鼻から鮮血を撒き散らしながら、佐藤さんは見事なまでの土下座を晒した。

 それだけじゃない。ゴン、ゴン、と鈍い音を立てて、自分からアスファルトに額を叩きつけている。

 ――本能が、理解したんだ。


 佐藤さんは学校のグループでも下っ端とはいえ、裏で色々ヤバい橋を渡っているという噂があった。そんな汚い世界に片足を突っ込んでいるからこそ、嗅ぎ取ってしまったんだろう。


 目の前にいる女は、自分たちが群れてイキっている程度の「不良」とは次元が違う。

 一線を越えた先で、数多の修羅場を潜り抜けてきた「本物の怪物」だということを。


 「……ねぇ。頭を下げれば、それで済むと思ってるの?」

 姉さんが冷たく微笑む。その笑顔こそが、この場にいる誰よりも恐ろしかった。


 そして――。

「あ……あ、あぁ……」

 佐藤さんのスカートの下から、じわりと液体が広がった。高校生にもなって、一番みっともない形で恐怖を露呈してしまったのだ。ツンとするアンモニア臭が、離れた僕のところまで届いてくる。


 クラスで女王様気取りだった佐藤さんの、見るも無残な完全な崩壊。


 ……流石にこれ以上は、姉さんが『加害者』になってしまう。


 「ね、姉さん! もういいよ、そのくらいで!」

 僕はたまらず、姉さんと佐藤さんの間に割って入った。


 「ね、姉さん、もうそのくらいで! そろそろ行かないと編入初日から遅刻だよ。……昼休み、僕が校内案内してあげるからさ。デートの前に嫌なことは忘れようよ!」


 その言葉が、暴走する最強の猛獣に唯一効く『魔法の呪文』だった。


「……! やん! 純君からデートのお誘いなんて久しぶりっ! お姉ちゃん、もっとおめかししてくるべきだったわぁ♥」


 途端に、周囲の空気を凍らせていた殺気が霧散し、いつもの「エンジェルスマイル」が戻ってくる。姉さんは僕の腕に隙間なく抱きついて、頬を赤らめながら身悶えし始めた。


「校内は制服以外禁止です! ほら、もう行こう? 佐藤さんたちも、流石に……反省してるみたいだし」

 足元で絶望に濡れ、ピクピクと震えている二人を見下ろして僕は苦笑いする。


 『反省』という言葉で済ませていい惨状ではないけれど、これ以上姉さんの怒りに触れさせるわけにはいかない。


 けれど、姉さんの怒りはまだ底を打っていなかった。


 姉さんは振り返り、佐藤さんの頭を左手で掴み上げると、腕一本で、泥人形のように脱力した彼女の体を無理やり引きずり起こした。


 気を失いかけた人間を片腕で立たせるなんて、クレーン車並みの膂力りょりょくだ。


 ……天地神明に誓って浮気なんて考えたこともないけど、絶対にしちゃいけないと心に刻んだ。僕がどうこうなる前に、相手の女の子が物理的に消滅してしまう。


「純君に免じて、今日だけはこれで勘弁してあげる。……でも、次があったら葬儀屋を予約しておきなさい。分かったわね?」

 

 冷たく言い放つと同時に、姉さんは右手の指先を佐藤さんの口元へ伸ばした。

 親指と人差し指が、佐藤さんのコンプレックスである前歯を捉える。

 ――メキッ、と嫌な音が響いた。


 裏の世界で鍛え抜かれた姉さんの指の力(ピンチ力)は、もはや油圧プレス機。


 無造作に、けれど確実に。佐藤さんの出っ歯を一枚、根元から『もぎ取った』のだ。


「アガッ……!? ……あ、あぁぁああ……っ!!」


 あまりの激痛と恐怖に、佐藤さんはもはや言葉にならない絶叫を漏らし、白目を向いて震えている。

 合掌。……いや、自業自得とはいえ、流石に同情を禁じ得ない。


「歯一本くらいでガタガタうるさいわね。もう一本抜いてあげようか? 嫌なら今すぐ黙りなさい」

 氷のような一言で、佐藤さんは喉を鳴らしながら必死に声を押し殺した。

 

……ねぇ、姉さん。これ、どっちが悪役か分からなくなってきたよ!


 「純君お待たせ! バッチィ物(血とか汚れとか)が色々付いちゃったから、そこのコンビニのトイレ寄っていかない?」


 「また個室に無理やり連れ込もうとしないでよ!」

 

 姉さんは「ちぇー」と可愛らしく頬を膨らませるけれど、その目はまだ獲物を狙う肉食獣のように爛々と輝いている。


 姉さんの辞書に『手加減』という言葉はない。

 あるのは僕への度を越した愛と、敵への男女平等な制裁だけだ。


 鬼龍麗奈――この最凶の姉と一緒に、僕の波乱すぎる学園生活が今、幕を開けた。


 最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

麗奈姉さんの「親切心」による前歯パージ……いかがでしたでしょうか。

「やりすぎ!」と思いつつも、どこかスカッとしていただけたなら、作者としてこれ以上の喜びはありません。

本作は現在パイロット版として公開しておりますが、皆様の応援次第では、学園を支配する「独裁者な生徒会長」との全面対決や、純君の危うい(?)貞操を守る姉さんの奮闘記など、本格的な連載版として展開していきたいと考えています。

少しでも「面白い!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、【ブックマーク】や、下にある【☆☆☆☆☆(ポイント評価)】をポチッと押して応援していただけると、執筆の大きな励みになります!

感想もお待ちしております。よろしくお願いいたします!

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