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9 お仕事

 腹が減ったら街で買ったパンと干し肉を齧り、満腹になったら物置小屋で闇に溶ける生活が体に沁みついてきた頃、クライスラー伯爵から、イルゼが王都に行くのでその護衛をして欲しいと言われた。僕は鎧と剣を装備してクライスラー伯爵の屋敷に向かったが、馬車移動だしかさばるから鎧はやめてくれと言われ、いわれた通り鎧を家においてから僕は馬車に乗り込んだ。馬車には子供みたいに落ち着きのないイルゼがいた。


 馬車だと結構な長旅となるので、僕は基本ずっと目を閉じて寝たり起きたりを繰り返して過ごすことにした。イルゼはクライスラー伯爵を次の領主だからと、クライスラー伯爵の用事を代わりにやると言い出した。イルゼは王都に生きたいだけだがクライスラー伯爵はまんまと言いくるめられ、今に至るとイルゼ本人の口から聞いた。


「ルカ。今回はあなたにピッタリの仕事で良かったわね。芋掘りなんか不気味すぎて夜眠れなかったんだから」


「そうですか」


 やはり、僕は剣を振るのがみんなのイメージに合っているのだろう。僕も剣を振って魔法を唱え、魔物を殺すことしかできないから、みんなのイメージ通りの人間だ。魔王を倒す前に比べてだいぶ魔物が減ったから、イメージ通りの僕は存続の危機である。


「まあ、魔物とかもう出てこないだろうけど」


「そうですね」


「王都楽しみだわ。さっさとお父様の用事を済ませて、思いっきり遊ぶわよ。貴族の格好をしてたら下町で行動しにくいから、庶民の服をわざわざ持ってきたんだから」


 イルゼはカバンから平民がよく着るシャツとスカートを取り出した。確かにドレスだと貴族が来たと街の人に気を使われ、腫れ物扱いを受け、最悪騒ぎになるだろうからシャツとスカートを用意することは良い選択であるが、そもそも王都の下町にそこまでして行かなければならない場所などあっただろうか。貴族様なら考えられない不味くてみすぼらしい飯を出す店とか安物の装飾品を並べる店くらいしか無いだろう。僕も行ったことがないからわからないけど。


 急に馬車が止まった。御者の悲鳴に反応して、僕は剣を持って馬車を飛び出る。


 馬車の前に十人の男。全員身なりが汚く、剣や斧をそれぞれ持っている。そうか、魔物は少なくなったが盗賊は今でもいるか。それはそうだ、向こうも人間なのだから。魔物は冒険者が隅々まで殺して回ったが、盗賊をどうこうするのは憲兵の仕事だ。


 しかし盗賊は大抵捕まらない。王都や街にいる反社会的な集団やそれにこき使われている盗賊は大抵仕事でやってるから身なりもよく精神も犯罪者の中ではまともな方だ。だから憲兵が取り締まって裁きを受けさせるあるいは更生させる価値があるが、こういった街でも村でも王都でもない場所でふらついている盗賊は、人間社会から不要な人間として扱われ弾き出された最底辺の人間であるから、憲兵もわざわざ取り締まることはなく、冒険者の間でも、遭遇したら逃げるか殺せとよく言われていた。


 彼らは金品を要求しない。今更金を得てももう使う場所がないからだ。だから食料を強奪するか、自分達を排斥した社会への恨みを晴らすかのように道楽で人を殺すかどちらかしかせず、どちらにしても抵抗虚しく敗れれば殺されるのだ。


 怯えるイルゼに「仕事をしてきます」とだけ伝え、僕は剣を抜いた。


 真ん中にいる男がなにか言っているがどうせすぐ喋らなくなるので僕は耳に入れず、代わりに男の首に剣を振った。男の首が地面に落ち、血しぶきが舞う。


 魔物とは違う、生き物の肉や骨を断ち切る感触。しかしこの感触も僕の手にはすでに染み込んでいる。首をはねる、心臓を貫く。僕はだいたいこの2つの方法で盗賊を殺す。一発で死んでくれるからこのやり方が一番楽だ。


 二人目、三人目と僕は盗賊の首と体を別にさせ、十人目を殺した後、僕はイルゼに「仕事終わりました」と伝えた。


 盗賊に向けていた心底怯えきったイルゼの目が、今度は僕に向けられていた。



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