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7 化け物

 与えられた仕事は野菜の収穫だった。命の危険が全く無い簡単な仕事だと思っていたのだが、今僕の視界に一面に広がる畑を見る限り、そう簡単には行かないようである。イルゼは「ここの野菜全部取りきったら私のところに来なさい」とだけ言い残して帰ってしまった。僕は畑の端から取り掛かることにした。


 芋を引っこ抜いてかごに入れて、引っこ抜いてまたかごに入れる。この繰り返し。冒険者をやっていたときと同じだ。魔物を殺して魔石を回収の繰り返し。感情の一切が介入しない、作業のような人生である。


 だからか、この野菜の収穫という仕事は妙に落ち着いた。誰かにいわれて何も考えず体だけを動かすことが、空っぽの僕には心地良いのだろう。当時何も思わなかった冒険者としての生活の記憶が今段々と鮮明に蘇る。きっと僕は、芋を引っこ抜くときも魔物を鏖殺するときも、きっと同じ無表情だったのだろう。


 程なくして、僕はイルゼ声をかけられた。芋を引っこ抜く手を止め、イルゼを見上げると、青ざめた顔で僕を睨んでいた。


「あなた、今までずっとやってたの?」


 イルゼの言葉の意味を、僕は理解できなかった。「ここの野菜全部取りきったら私のところに来なさい」と言ったのはイルゼだ。


「もう丸一日経ったわよ。夕方には『続きは明日やります』くらい言いに来ると思ってたのに」


「取りきったら言えって言ったのはイルゼです」


「だ、だからって丸一日ずっとやれとは言ってないわよ。というか、なんでずっと同じ事ができるのよ。飽きないの?」


 どうやら僕のやったことはイルゼの常識から逸脱しているらしい。貴族は何日も寝ずに作業をしないのだろうか。さっき思い出した頭で冒険者の当時のことを考える。過去に一度だけ他人と一緒に仕事をしたときに、同じことをいわれたかも知れない。


「飽きるとか飽きないとか、ないです。冒険者と同じで、同じことを繰り返すだけ。そこに楽しいとか悲しいとかないです」


「あ、あなたおかしいわよ。そもそも魔王を一人で討伐したってのも十分おかしいけど、あなた、人間じゃないんじゃない?」


 あの時の老人と同じ魔物を見るような目を、イルゼは僕に向けてきた。僕が「では。終わったら言いに行きますね」と言うと、イルゼは首だけ縦に振って逃げるように帰ってしまった。



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