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1 戦いの後

 王都から南に歩き始めて二日が経った。疲れているのに二日間休憩一つせず歩き続けられる自分の体の丈夫さが恐ろしい。


 霧がかかったみたいな頭で、一昨日のことを思い出す。


 その日は、魔王を倒した褒美をやると言われ、王様のところへ行く急用ができた。僕は冒険者だったが、魔王を倒してしまったせいで魔物の残党の討伐や何かしらのお使い、雑用みたいな小さな仕事しか残っていなかった。その仕事も報酬が少なくて人間一人飯を食っていくにはわずかに足りず、今後の生活をどうしようかと思いあぐねていたところに舞い込んできた朗報だった。しかし僕は王様に謁見できるような服を持ち合わせておらず、城の門前で門番に聞いて見たところそのままの格好でも大丈夫、寧ろ英雄の証なのだからその鎧こそが正装だと目を輝かせて言うので、僕はそのまま行くことにした。


 係の人に案内されるがまま、傷や泥まみれの鎧が王城の煌びやかな絨毯やその他装飾品を汚さないよう自分ができる限りの注意を払いながら玉座の間へ向かった。途中近衛兵や使用人、貴族の方々に物珍しい目で見られたが、僕は彼らと目を合わさなかった。


 玉座の間は城の一番奥にあり、係の人が大層な扉を重そうに開ける。僕は係の人に扉が開いたらそのまままっすぐ進み、王の前で跪くように言われていたので、言うとおりにした。


 王様はずいぶんお年を召されているようだが、恰幅がよく肌も脂ぎっていて、つい先日まで人類が魔王軍に脅かされていたとは思えない容姿だった。旅の中で何度も飢えに苦しんでいる村をみてきたので、おそらくこの王様だけは魔王が現れる前と同じ生活を送ってきていたのだろう。僕は物心ついてすぐ父さんに剣を教えられ、十歳の時に魔力を含めて僕の体は人間を超えた強さを秘めているとわかってからは、父さんについて行って冒険者の仕事の手伝いをやらされるようになり、そこから魔王を倒すまでの七年間ずっと剣を振り魔法を唱え続ける人生を送ってきたから、王様の生活を羨ましく思った。


「そなたに褒美をやろう」王様の声は耳に障る。


「ここから南、馬車で五日行ったところの、クライスラー伯爵の領地に空いている屋敷がある。それをそなたにやろう。しばらく生活できるだけの金もだ。そなたはまだ若い、そこで第二の人生を歩むといい」


 それからすぐ王都を出発させられ、今に至るのだ。


 そうだ、僕は第二の人生とやらを歩むために南へ進んでいるのだ。しかし、その第二の人生とは、一体何をすればいいのだろうか。剣を振ることしかやってこなかったから、この果てしなく続く田舎道の終点のように想像がつかなかった。


 途中、馬車を追い越した。追い越すついでにクライスラー伯爵の領地はどこにあるのかと尋ねると、馬車であと半日の距離だという。やっと終わりが見えてきたと、僕の口から長いため息が漏れた。


 そこから少しして、クライスラー伯爵の屋敷が見えた。僕は僕の屋敷の場所を知らない。王様にはクライスラー伯爵に案内をさせると言われていたので、僕は伯爵の屋敷の扉を叩いた。


「どちら様でしょうか」伯爵の代わりに、使用人らしき女性が出てきた。格好からしてメイドだろう。僕が「冒険者のルカです」といつも仕事の時に使うテンプレートの挨拶を返すと、メイドさんは「ルカ様ですね。お待ちしておりました」と綺麗な所作でお辞儀をした。田舎の貴族は、都会の貴族と違って権力に胡座をかくような鼻につく感じがなくて好感が持てると思った。


 メイドさんに屋敷で一番広い部屋に案内されると、そこにはクライスラー伯爵と思しき男性と、シンプルながら綺麗なドレスを纏う少女が立っていた。



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