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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

俺は人間じゃない

作者: あやたか
掲載日:2026/02/25

♯(シャープ)は話が切り替わる合図です。

目が覚めると、真っ白な建物の中にいた。

此処が何処なのか、聞かなくても分かる。此処は博士が作った、人を襲うゾンビが薬1つで作られる研究所だ。俺は研究所の近くに住む街の人間を守る為に毎日ゾンビと戦い、持っている銃で打ち倒す事。それが俺の役目だ。

俺はずっと研究所の中にいるので、季節や時間も分からない。ただひたすらゾンビと戦うだけの日常だった。そんな日常を変えてくれたのが、街で暮らす1人の人間の女の子、凛花が研究所に来た時の事だった。

「誰かいますか?」

その時俺は、“人間“と言う人を初めて見た。

「良かった。人がいた」

凛花は嬉しそうに笑った。

「君は?」

「私は凛花。貴方は?」

「俺はルイ」

凛花はルイを見つめる。

「ねぇ、どうしてルイは不思議な服を着てるの?」

不思議?俺はその言葉に引っかかった。

「俺は存在してはいけない生き物と戦っているからだ」

「存在してはいけない生き物?」

「ゾンビだよ」

「ゾンビ?おとぎ話みたい」

「本当に存在するんだよ」

凛花は納得がいかなさそうに浅く頷く。

すると何処からか唸り声が聞こえた。

「今の何?」

「静かに」

俺は銃を構え辺りを見渡しながら、凛花を背中にして守る。

「そこか」

俺は唸り声がする方に銃を向ける。瞬間、ゾンビが俺に襲いかかって来た。俺はすぐさま銃をゾンビに打ちつけた。ゾンビはもがきながらもその場に倒れる。凛花は唖然とし、恐怖を覚える。

「あれが、ゾンビ?」

「ああ」

「ルイは、怖くないの?」

「怖くないよ。慣れてるから」

「ゾンビはどうやったら襲わなくなるの?」

「方法はただ1つ。人間に戻る薬を打つ事だ」

「じゃあ、あのゾンビも」

ルイは首を左右に振る。

「薬は限られた数しかないんだ。そう何度も使えない。それに、薬で人間に戻る人が千人に1人なんだ」

「ゾンビに薬を打って、その人が人間に戻ったらどうなるの?」

「その人は、自分がゾンビだった時の記憶を忘れてしまう。反対に人間からゾンビになった人は、人間の時の記憶を忘れてしまうんだ」

凛花は少し寂しそうに、次の質問をする。

「ルイはどうやって研究所(ここ)に来たの?」

「分からない。気づいたら此処にいた」

「私不安すぎて変なこと聞くけど、ルイは人間だよね?」

「俺は生まれた時から()()()だよ」

その言葉に凛花は驚いた。

「まさか。でも普通のゾンビと違って緑くないよ」

「確かにそうだな。そう言えば、ゾンビと戦って思ったんだけど、狙いが全て俺なんだ」

「何でだろうね。ゾンビなのに」

凛花は、俺がゾンビだと信じてくれた。

「私ゾンビは怖いけど、必死に戦うルイを見て手伝いがしたいなって思って。だからお願い、邪魔しないから私をゾンビと戦わせて」

「俺は凛花達が住む街を守る為にゾンビと戦っているんだよ。戦うのは、簡単な事じゃない」

「簡単じゃないのは分かってる。だけど、1人でも多くのゾンビを倒したいの」

「分かった。次にゾンビが来た時に俺が戦うから、良く見てて」

「うん。分かった」

ルイは腰掛けのポーチからカバーがされた、小さめのナイフを取り出した。

「予備のナイフだ。戦う時に使って欲しい」

ルイは凛花に入れ物に入ったナイフを差し出す。

「ありがとう。大切に使うね」

ルイは笑顔で頷く。数時間後。

「ゾンビ、なかなか出てこないね」

「場所と時間帯によるからな」

「いつぐらいがピーク?」

「夕方から夜中にかけてだ。それ以外でも時々出てくる」

「そうなんだ」

(夜中に出るって、お化けみたいだな)

そう、凛花は感じていた。ゾンビを待ち続ける事、1時間。ゾンビの唸り声が聞こえたと思えば、凛花の方へ向かって来た。

凛花はルイから貰ったナイフで、ゾンビを切り付ける。瞬間、ゾンビは切り付けられた頭を抑える。ゾンビは次第にピクリとも動かなくなった。凛花は自分でもびっくりしすぎて、唖然とする。

「俺の戦いを見なくても倒せたね。初めてなのに凄いよ」

ルイはとても嬉しかった様で、笑みを見せる。

「私・・・ゾンビを倒せた」

凛花も嬉しそうに笑った。

「そう言えば、ゾンビの弱点は頭と心臓だ」

「私、頭を切り付けただけだけど」

「頭だけが弱点のゾンビもいれば、心臓が弱点のゾンビもいる」

「両方でも倒せるんだよね?」

「倒せるけど、俺は片方だけで倒してるから」

「これから両方にして行く。それまではルイと同じ、片方だけにする」

「そうして。凛花が倒す姿、カッコ良かったよ」

ルイはふっと笑う。

「ありがとう、ルイ」

凛花はルイの笑った笑顔が、とても好きだった。

凛花と共にゾンビを倒す様になってから、半年が経つ。凛花は毎日の様にやって来る。しかも、今から冒険に行って来ますとでも言う様な服も着て。凛花はだんだん倒すのが上手くなってきた。凛花は目で見て、しっかりと学ぶ子だ。だから俺も凛花と共に戦っている。

ゾンビを倒す事だけしか知らない俺は、ある日大変な出来事が起こった。

それは凛花と共に戦っている時だった。いつもより強いゾンビが現れ、ゾンビは全部いなくなったのか、1度も顔すら見た事がない博士がやって来た。だが、博士は人間ではなく、俺と同じ緑色の肌をしている。明らかにゾンビだ。

「お父さん?」

凛花が泣き出しそうな声を上げる。

「あの人が凛花のお父さん?」

「うん。お父さんは私が幼い頃、出張でずっといなくて」

となると、博士は自分自身でゾンビになったと考えられる。俺はポーチから薬の入った残り2本の注射の箱を取り出す。

(これを使うしかない)

ルイはダッシュで博士の方へ走り、飛びかかる様にして腕に薬を打った。博士の体に薬が流れ込み、数分もがき始める。人間に戻りかけているのか、少し落ち着いた様子で語り始めた。

「・・・君は昔、人間だった」

「俺が人間?うっ」

瞬間、ルイの頭に頭痛と共に人間の頃の記憶が走る。今から10以上も前、ルイは人間の両親から生まれた。生まれつき足が悪く、他の皆んなとは走る事が出来なかった。いつも楽しそうに遊ぶ友達を、ただただ遠くで見ているしか無かった。

(俺も皆んなと遊びたい)

そう思って近寄ろうとするが、上手く歩けない。そんな時、母がルイに話しかけようとした。

「お母さん。俺だけどうして遊べないの?」

ルイは母に抱きついて肩を振るわせながら、静かに泣いた。母は何度もごめんねと言いながら、ルイを優しく抱きしめる。

そんなある日、母の働くゾンビ研究所では博士と母が言い争いをしていた。

「ゾンビを研究するって、どう言う事ですか?」

「だからその、私が経営しているのはゾンビを研究する事なんだ」

「そんな話、1度も聞いたことありません。私もゾンビを研究するなら、この仕事辞めます」

此処は今まで、研究所では無かった。母は俺を連れて、家に帰ろうとした。瞬間、博士は母にゾンビになる薬を打った。

「お母さん?」

「ルイ、逃げて」

俺は怖くて逃げれなかった。

「ルイ君、君もお母さんと一緒にゾンビになってくれ」

博士は俺に薬を打ち、そこで意識が途絶えた。そこで俺は本物のゾンビになった。初めは嬉しかった。不自由な足が皆んなと同じ様に動かせるからだ。だが、母さんがゾンビにされた事は、悲しいほど嫌だった。

♯博士は人間に戻った。

「私は何を?」

博士は俺を見る。説明しようかと思ったが、凛花が先に口を開いた。

「お父さん、ゾンビになってたの」

「私が、ゾンビに?」

やはり覚えていない様だ。

「君は?」

博士は俺の母さんをゾンビにした事も覚えていない。俺は悔しかった。

「博士は俺の母さんをゾンビにした事、全く覚えてないよな?」

俺は拳を強く握りしめる。

「覚えているよ。本当に申し訳ない」

博士は深々と頭を下げた。

「母さんは人間に戻るのか?」

「戻ってるよ」

いつぶりかと言うくらい、久しぶりに聞いた母の声がした。

「母さん」

俺は心から良かったと言う安心感が生まれて、思わず今まで隠していた涙が大量にこぼ落ちた。母さんはそんな俺を優しく抱きしめてくれた。

「ルイ、ごめんね。心配させちゃったね」

母さんはそう言って、小さかった時に俺の頭を撫でてくれた。

「凛花がいたから怖くなかったよ」

「凛花ちゃんのおかげだね」

「うん」

凛花は遠くの方で嬉しそうに笑っていた。

♯母さんと博士が人間に戻ってから1週間が過ぎた。もうゾンビはいない。俺はポーチから最後の薬の入った注射器を取り出す。

そして、自分の体に打った。体の中で血液と共に、薬が流れていく。

「ルイ。ちょっと来て」

優しい母の声が耳に届く。

「はーい」

俺は母さんの元へ向かったのだった。

        完




ルイはどうなったのか、予想してみてください。もし良ければ感想で教えてください。

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