最後の夏合宿①
Ep30です!
いつもありがとうございます。
今日もよろしくお願いします。
8月。最後の夏合宿が始まる。
新幹線で大学の施設に向かいながら夏生と話をする。
「1年の時、新幹線で幹樹先輩に髪セットしてもらってたな。あの時から春輝の雰囲気が変わったんだった。」
「そう。幹樹先輩にいろんなこと教えてもらったから、ようやく形になった感じ。」
「幹樹先輩と出会って、お前本当に変わったな。」
「うん。幹樹先輩に会いに来て良かった。オーキャンスタッフに入らなかったら、今の僕は居ないから。」
僕たちは、後輩たちを見る。
「みんなも、ここで成長してもらえたらいいな。」
僕は、夏生に伝える。
「そだな。」
夏合宿では、新入生歓迎会イベントに次いでリーダーの力量が試される。ここでの経験は、成功でも失敗でも自身の力となる。それを、分かっているのか立川は、いつもに増して肩に力が入っている。
きっと、彼のことだから、僕たち4年を喜ばせようと張り切っているに違いない。
そんな彼を、橋本と近藤がスムーズにサポートし、場を回している。彼らは同期が3人しかいないのに、よく協力してオーキャンスタッフをまとめている。
彼らに追いつこうと、2年生たちも手伝っている。
「僕たちが居なくなっても、安心だね。」
僕は隣にいた中島に言う。
「うん。私たちの後輩があの子たちで、本当に良かった。」
彼女は優しく微笑む。そして続ける。
「先輩たちも、こういう気持ちだったんだろうね。」
「…そだね。」
立川たち3年生が中心になって考えたレクリエーションの内容は、とても面白くて楽しめた。みんなでやる夕飯作りは、僕が初めてここに来た時に、大城先輩に助けてもらいながらやったことを振り返る。
……あぁ、懐かしいな。
残すはあと1日。やっぱり少し寂しい気持ちにもなる。
いつもの部屋で、一息ついて余韻に浸っていると、ノックが聞こえる。
立川だ。
「どした?」
「春輝先輩!ちょっといいですか?」
彼はいつもの人懐っこい笑顔で問う。
「うん。」
彼は、僕の目の前にヘアケアセットを置く。
「最後に、俺の髪セットしてくれませんか?」
彼はそう言って、目の前の席に僕に頭をむけて腰を下ろす。
「え?」
「俺、春輝先輩のヘアセット真似してたんですけど。先輩との思い出が欲しくって。」
「……いいけど。時間かかるよ?」
「はい!その間、いっぱい話しましょう!」
彼は楽しそうに笑う。
立川の髪を触りながら、思い出話をする。
「俺、新入生歓迎会の時の春輝先輩の姿がめっちゃ格好良くて、オーキャンスタッフに入ったんですよね。
こんな人みたいに、目をキラキラさせて大学生活を送りたいって思って。」
立川は懐かしそうに言う。
「そうだったんだ。」
「はい。大学に入りたての俺は、第一志望の国立に落ちて、悔しくて。第二志望のこの大学に来た自分のことを、どうしても許せなくて。
…だけど、あの新入生歓迎会のイベントに参加したら、なんかそんなこと考えてる自分ってちっぽけだなぁって思えて。俺も胸張って、ここの大学生として輝きたいって思えたんです。春輝先輩に会えたから。」
「ありがとう。」
「こちらこそです。ありがとうございました。」
そう、お礼を言う立川の声は震える。
「立川?」
すすり泣く彼は言う。
「やっぱ、寂しいですね。先輩が居なくなるなんて。」
「またいつでも会えるよ。こうやって、髪もセットしてあげるし、ご飯も食べにいこうよ。」
「本当ですか?」
「うん。あーでも、来年の春から東京に行くから。また地元に帰ってきた時にな。」
「はい。」
「…立川。僕、立川をリーダーにして良かったって心から思ってる。僕のために怒ってくれる立川を見て、立川を信頼も尊敬も出来るって改めて思った。最高の後輩だった。ありがと。」
立川が涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら嬉しそうに笑う。
「先輩。もう一個お願い聞いてもらってもいいですか?」
「なに?」
「俺のこと、冬って呼んでください!冬真でもいいですけど。」
その顔はイタズラに笑う。
「……分かったよ。冬真って呼ぶことにする。」
「やったぁ!」
「言っとくけど、僕が下の名前で呼ぶ人は特別なんだからな。」
「分かってます!!」
ヘアセットが完成した。我らながらに良い出来栄えだ。
「ありがとうございます。」
冬真は、嬉しそうにお礼を言った。
ありがとうございました!!
これからも、よろしくお願いします!




