先輩と最後の夏合宿①
EP19です!
いつもありがとうございます。
よろしくお願いします。
幹樹先輩と行ったあの焼肉以降、僕は鏡を見て自分の顔を見ることが多くなった。
「前髪あげる……。」
……どうしたらいいのだろうか。
ひとまず、自分の前髪をそのままぜんぶ上げておでこを出してみる。
「いや、キモいだろ…。」
目の前の自分を見て、自嘲する。
……とは言え、今日から夏合宿が始まる。
先輩に言われたことをやってみようと、僕は意を決する。ひとまず、買ったままずっと手付かずのコンタクトを付ける。
「……っ、イッタい!!!」
目が沁みるし、異物をずっと感じている。
慣れるまでの我慢だ。
「おし、次は……前髪。」
これも、100円ショップで買ったヘアピンみたいなを使って、横分けをしてみる。
……なんか、河童みたいだな。
しかし、このまま悩んでいる時間がない。
僕は慌てて、荷物を持って家を出た。
集合場所。
僕を見た幹樹先輩は吹き出すように笑う。
「春輝、髪型変だぞ。」
「やっぱそうですよね…。正解が分からなくて。」
「電車の中でやってやる。」
みんなで電車に乗り込み、僕と先輩は隣同士の席に座る。
先輩は僕に通路側に向くように指示を出す。僕はそれに応じ通路側を向く。
「鏡で見とけ。」
「はい。」
先輩は慣れた手つきで、僕の前髪をいじる。そして、額の上にピンで止める。
「ほら。」
「うお、すごい……。」
「前髪は全部を上げるとダサくなるし、横にぺちゃんこに止めるのもダメ。…お前の顔は整っていてきれいだから、今流行りの髪型でも決まる。」
「ありがとうございます。」
「あとはー、ワックスやコテを使うのもありだな。」
「わっくす…、こて??」
「お前まじか。……夏合宿終わったら一緒に買いに行くか!!」
先輩は楽しく笑う。
僕は同意する。
先輩は、何も分からない僕のことを、否定せずに受け止めてくれる。そして、手を差し出してくれる。…それが何より、嬉しいのだ。
ーー過去を思い出す。
…僕は中学の頃までいじめられていた。
オシャレに疎く、地味で話すことが苦手な僕は、いつも標的とされた。
「お前ダサいな。」
「お前みたいなの、生きてて何が楽しいの?」
嘲笑うクラスメイト。もう名前も顔も出てこないが、その声だけが耳に残っている。
だから、高校ではもういじめられないように、気配を消そうと思い前髪で顔を隠した。
だれも僕を認知しないように。
ーー
「春輝くん!」
女性の声にはっと我に返る。
「それ、似合ってるじゃん!」
目の前にいたのは大城先輩。
「ありがとうございます。」
「俺がやったんだよ?」
隣の幹樹先輩は、胸を張る。
「コンタクトにして、いつもと雰囲気が違う。…かっこいいよ、春輝くん!」
今度は兒玉先輩が僕を褒める。
「それも俺が提案したんだよ。」
またまた、先輩は胸を張る。
「ねー、それわかったー!春輝くんを褒めてるのに…。」
「でもそれ俺のおかげー。」
先輩たちのやりとりが、とても可笑しくて。
僕は笑う。
「あ、笑った顔もよく見えるー!いいよー!」
大城先輩と兒玉先輩は嬉しそうだ。
過去のことをこだわるのは、なんだか馬鹿らしい。
先輩たちを見て、そんなことを感じた。
ありがとうございました!!
これからも、よろしくお願いします。




