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神核戦記  作者: ハムジン
9/17

結界札

初日投稿最後です。

2話3話等ところどころ修正入れてます。

詰めが甘くて申し訳ないです。

ふと気付くと、悠真の鼓膜にいつもよりも鮮明に世界の“響き”が届いていた。

草の擦れる音、鳥の羽ばたき、小さな虫の羽音。すべてが重なり合い、ひとつの大きな“構造”を成している。

視界も、触覚も、内側から研ぎ澄まされたように冴え渡っていた。


身体は疲れているはずなのに、妙に軽く感じる。神核の鼓動が、胸の奥で確かに響いていた。


「感覚が……全部、鋭くなってる。まるで、世界が変わったみたいだ。」


「それが“神核を知る”ということだよ。君の内側に眠る存在に、少しだけ意識が触れたんだ。それは大きな一歩だよ。」


遼真はそう言って微笑み、時計を一瞥する。


「……今日はもう遅い。帰ったほうがいい。」


そう言って、彼は懐から札を10枚程取り出した。金と朱の文様が浮かぶ札と銀と蒼の文様が浮かぶ札。

それは、どこかで見たことがあった。


「……これって」


「“結界札”だよ。僕が作った。君が天統院に襲われたときに結芽が使っていたのも、これだよ。」


「じゃあ、あの時の結界って……」


「そう。私もまだ神核の制御は完璧じゃない。木花之佐久夜毘売の力は扱いが難しい。だから、札を使っていた。神能は……使っていない。」


どこか悲しげな表情で結芽が答えた。


遼真は札を差し出しながら、さらに続ける。


「この札は“守律”と“鎮律”の二種類の結界が組み込まれている。

金の方が“守律”で、外部からの攻撃を防ぐ結界。

銀の方が“鎮律”で、君自身の神核が暴走しそうなとき、力を鎮めてくれる結界だよ。使いたい時にはその札を破ったら発動する。」


悠真は札を受け取り、しげしげと見つめた。和紙の質感の中に、淡く光る紋様が脈打っている。


「……ありがとう。」


「これは保険だよ、悠真。天統院は動きが早い。僕も天統院の動きは見ているけど、間に合わないかもしれないからね。」


「また天統院に襲われたら、遼真さんが来てくれるってこと?」


「いや、僕自身は行けないかもしれない。でも、僕が根の会の仲間を送るよ。根の会も大きいんだよ。」


「そうならないことを祈るよ。」


「家に帰ったらゆっくりと休むと良い。また明日から訓練だからね。」


遼真はそう言って、指先で空間を裂くように印を切った。

静かに広がる蒼い光の裂け目。


「さ、行きな。僕の術式で、君の学校に繋げておいた。君を直接家に送るわけにもいかないからね。」


悠真は一瞬迷ったが、札をしっかりと握りしめ、一歩を踏み出す。


「……わかった。行くよ。」


蒼い光の波紋は静かに消えていった。

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