表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神核戦記  作者: ハムジン
8/17

遭逢

続投3話目です。

「……俺は、自由を選ぶよ」


庭の静けさの中で、悠真の声は確かに響いた。

その瞳には怯えも迷いもない――ただ、真っ直ぐな意志だけがあった。


遼真は目を細め、口元をわずかに緩める。

「なら、それを貫けるだけの力を。

君自身の手で、君自身の道を守る術を、これから教えよう。」


隣に立つ結芽が、涼しげな目元をわずかに動かす。

白い指先が、数枚の護符を風に揺らしながら悠真へと差し出した。


「まずは、“神核と繋がる”感覚を、体で覚えて。

君の中にあるその力が、どこにあるのかを知るのが先。」


「力が、どこにあるか……?」


「そう。

君の“意識”と“神核”は、まだ遠い。

繋がるには、“沈んで”、触れて、“輪郭”を感じること。

……水の底に落ちていくみたいに。」


結芽の声はまるで風のようだった。

どこか冷たく、だが拒絶は感じない。

その響きに導かれるように、悠真は膝を折り、庭の中央に座る。


遼真が木陰から見守るなか、結芽は悠真の背に回り、指先で静かに印を切る。


「この護符は、外界の感覚を遮る。

君の中の“最深部”に集中して。

そこに……君だけの神核が、眠ってる。」


悠真の視界が薄く、そして暗くなっていく。

風が止まり、音が引き、世界が沈黙する。


深く。さらに深く――沈んでいく。


 



気がつけば、悠真は“時間のない場所”にいた。


そこは黒でも白でもない、色も温度も持たない空間だった。

自分の体があるのかどうかも、確信が持てない。


だが、その中心に――何かが“ある”。


それは“存在”というより、“可能性の集合”だった。

光も闇も、時さえも超えて佇む、“起点”。


「……これが、俺の中にある“神核”……?」


その瞬間、何かが応えた。


静かな、だが恐ろしく深い“視線”が、悠真に注がれた。


――《何者か》


声ではなかった。

脳に響く“概念の流れ”。

悠真の存在を“問う”圧倒的な何か。


だが、悠真は逸らさなかった。


「俺は……一条悠真だ。俺の意志で、ここにいる」


《やっと逢えたな、まずは我を知れ》


次の瞬間、空間が“書き換わる”。


時が逆行するような感覚。

見たこともない過去が、幻のように脳裏に流れ込んでくる。


――星々が生まれ、空が形を成し、地が浮かびあがる。

その中心に立つ、誰でもない存在――原初の神、“アメノミナカヌシ”。


それは“創造そのもの”だった。


 


◇ ◇ ◇ 


「……ッ!」


悠真が息を荒げて目を開けると、空は夕暮れに染まっていた。

体は汗で濡れ、心臓が激しく鼓動していた。


結芽が静かに問いかける。


「見えた?」


「……ああ。すごいものを……見た気がする。」


遼真が少しだけ頷いた。


「感応の第一段階は完了だ。

まだ先は長いけど、焦ることはない。

……アメノミナカヌシ。

君の神核が持つ“原初の力”は、未知数だ。

同時に、君を呑み込む危険も孕む。」


悠真は拳を握りしめた。


「……だから、制御する。

俺自身の意志で、力を握ってみせる。」


夕陽のなか、悠真の眼差しは確かに強く光っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ