天津の神格
初日なのでまだ投稿します。再投稿2話目です。
遼真は言葉を区切ると、わずかに顔を伏せた。
「……さらに、君には知っておいてもらわなければならないことがある。
天統院――いや、“天津神の神核”を宿す者たちが、なぜ支配に固執するのか」
悠真が眉をひそめる。
「支配……?」
遼真は視線を上げ、静かに語った。
「天津神の神核は、力だけでなく、神の“意思の断片”も内包している。
宿した者は、その影響を少しずつ受け始める。
やがて、“正しさ”を定義し、“秩序”を守ることに異常なまでに執着するようになる。
その帰結が――支配と管理だ」
「……人格が乗っ取られるってこと?」
「いや、もっと複雑で、もっと厄介だ。
天津神の神核は、宿り主の“価値観そのもの”に染み込んでいく。
気づかぬうちに、“己の秩序が唯一無二である”と信じ始める。
だからこそ、天統院は“従わぬ者”を排除する。
それが彼らにとっての“正義”であり、“使命”なのさ。」
悠真はぞくりと背筋に冷気を感じた。
自分もまた、いずれそうなるのではないかという――根拠のない不安が喉の奥にこびりついた。
しかし、遼真の声がその闇を断ち切る。
「君の宿す神核は――“天津”でも“国津”でもない。
だからこそ、君には選ぶ自由がある。
支配か、自由か。管理か、共存か。
……神ではなく、人として――どう在るかを」
悠真はゆっくりと、深く息を吐いた。
彼の中に、わずかながら“選択肢”という灯がともった。