表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神核戦記  作者: ハムジン
15/17

静かなる怒り

3話連続投稿3話目です。

次話は明日の12時投稿予定です。

常世の社の本殿。

結界に守られたその空間に、重苦しい空気が流れていた。


悠真と結芽は、遼真の前に座していた。

悠真は、悲痛な顔で腕時計の時刻を確認する。

常世の社に逃げ込んでから、既に1時間以上が経過していた。


「……蓮さん、戻って来ない……」


「……蓮さんと修行をして強くなったつもりだったけど、何も出来なかった……」


悠真の声は震えていなかった。

だがその瞳の奥には、かつてないほどの怒りと悔しさが宿っている。


「悠真たちが社に駆け込んで来てから、1時間以上が経過したが、蓮は戻って来ていない。それが意味するのは……封印されたか、あるいは……」


遼真が淡々と口にした瞬間、悠真の感情が爆ぜた。


「……なんでそんなに冷静でいられるんだよ! 仲間だったんだろ、蓮さんは……!」


悠真の怒声が社の空気を揺らす。

結芽は驚いたように顔を上げたが、遼真は動じなかった。


「……冷静に見えるかい?」


その声もまた淡々としていた。


だが、その手は……握りしめられた拳には、血が滲んでいた。

関節がきしむほどに強く握られ、爪がくい込んだ、その手のひらから、滴る紅。


悠真は、はっと息を呑む。


「僕が、行こうとしていたんだ。悠真たちを助けにね。」


「……え?」


「でも、蓮が言ったんだ。“あんたにもしものことがあったら、根の会は崩壊する”って。だから――蓮を僕の代わりに送った。」


「蓮の意志を無視してでも、僕も一緒に行けば良かったんだ……」


声に怒気はなかったが、その背に感じる“静かな怒り”が、全てを語っていた。


悠真は俯いた。


「……そうだったのか……」


しばしの沈黙ののち、遼真は立ち上がり、外を見つめながら言った。


「悠真、君には知っておいてもらわなければならないことがある。」


「天統院と、根の会の勢力差についてだ。」


社の空気が、再び緊張する。


「天統院は、表向きは国家公認の宗教・管理組織だ。だけど、本当のところは神核保持者の支配、管理を担っていて、従わない者は封印若しくは、排除する。天津の神核保持者は神の意思の断片を内包すると説明したよね。だから、必然的に天津の神核保持者は天統院に従う。従わないのは国津だ。国津でも力の無いものは排除を恐れて天統院に従う者もいた。だから、僕は根の会を創ったんだ。自由を守る為にね。」


「だけど、その勢力差は歴然としている。天津には1級の神核保持者が確認されているだけで5人いる。実際にはもっといるだろうね。」


「……1級って、遼真さんと同じランクの……?」


「そう。神核の格、神能の能力、そして神核覚醒度。それらを総合して1級と認定された存在だ。2級との差は歴然としている。」


遼真の視線が、悠真に向けられる。


「そして、根の会において1級の神核保持者は、僕と、行方知らずの須佐之男の神核保有者だけだよ。」


悠真が息を呑む。


「しかも……」


遼真は視線を結芽へ一瞬移し、再び口を開く。


「天照の神核が未だ発現していない。発現すれば当然、不在である天統院のトップの座に着く。天照は等級の枠を超えた“特異点”だ。いずれ確実に発現し、一気に支配に動き出す。」


「特異点…」


「そう、いわば分類不能。僕でも天照の神能には全く歯が立たないだろうね。」


「……俺も特異点なんだよな……」


「そう。悠真、君も︎︎“特異点”だ。」


遼真の言葉に、悠真の肩が強張る。


「アメノミナカヌシ――その神格は、神の最上位。天照さえも上回る“中心”だ。」


「君の神核が覚醒すれば、天統院を壊滅、支配からの解放をできるだけの力があると僕は信じているよ。」


重い言葉が、静かに落ちる。


「だからこそ、天統院は悠真を危険視し、狙ってくる。これからも、何度でも。」


「……でも、俺はまだ覚醒の仕方も……」


「心配しないでよ。僕が、悠真を覚醒まで導く。」


遼真の声は、どこまでも冷静で、どこまでも本気だった。


「だけど……今はまだ、力の差は歴然だ。今日みたいな奇襲が、またある。」


「ここで、実戦の中で鍛えるんだ。そして、必ず“自分の意志で”神核を目覚めさせないといけない。」


悠真は、拳を握った。


「結芽、君も乗り越えなきゃね。あの時はまだ幼かったんだ。結芽は強くなった。もう暴走せずに神能を使いこなせるはずだよ。」


「分かっている。これは私の心の問題。」


結芽は静かに、しかし力強く頷く。


「……俺、負けない。絶対に。」


その言葉に、遼真は静かに頷いた。

もし、少しでも面白い、続きが気になると思われたら評価をして頂けると、とても嬉しいです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ