表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神核戦記  作者: ハムジン
13/17

基礎、身体に刻む

3話連続投稿します。

1話目です。


「もう少し腰を落とせ。そう――そこで踏ん張れ!」


蓮の声が常世の社の訓練場に響く。

悠真は額から汗を滴らせながら、低い構えを保ったまま、相手の動きを見据えていた。


一週間前から始まった蓮との格闘訓練は、過酷なものだった。


拳や蹴りの打ち方、受け方、体の軸の使い方、重心移動――

一つひとつを繰り返し叩き込まれ、悠真の肉体は確かに変化していた。


最初は蓮の動きがまったく見えなかったが、今では防御や回避の反応も、多少はついていけるようになっていた。


「よし、次は投げの応用。来い、悠真!」


「はいっ!」


悠真は力強く踏み込み、蓮の懐に入る。

瞬間、蓮が肘をかすめるように振るい、悠真の肩に引っかける。


「くっ……!」


体勢を崩しながらも、悠真は咄嗟に足を踏み出して回避。地面に転がりながらも、すぐに立ち上がる。


「反応は上々だ。踏み込みの角度も悪くない。体幹もずいぶん強くなった。」


「……ありがとうございます。でも、まだ全然当てられない。」


「当てるのは二の次だ。まずは“崩されない”身体を作ること。それが、神能を扱う前提になる。」


蓮は手近な木の枝を拾って、軽く空を指した。


「神能ってのはな、気合いや気分じゃコントロールできない。基礎の上に積み重ねてこそ、自分の“意思”として出せる。

お前は今、その最初の土台を作ってる段階だ。」


「……はい。」


蓮は小さく笑った。


「神核がどれだけ強くても、自分が壊れたら意味がない。だから、お前には壊れない体を作ってほしい。」


悠真は深く頷いた。


日々の鍛錬で、蓮が本気で自分に向き合ってくれていることは、痛いほど感じていた。

口は悪いが、誰よりも実直で、誰よりも仲間想いな男。


「……僕、もっと強くなります。ちゃんと、自分の意志で立てるように。」


「それでいい。」


訓練は日が沈むまで続いた。


投げ、受け身、体捌き、組技――

悠真は何度も地に倒れ、泥にまみれながら、それでも諦めず立ち上がった。


そしてその日、蓮から短く言われた。


「これで、基礎は一通り終わりだ。次からは実戦想定に入る。」


「……!」


悠真の中に、熱が灯る。


この一週間が無駄ではなかったと証明された瞬間だった。


「お前はまだ弱い。でも――“倒れず立ち上がる奴”は、そう簡単に負けねぇよ。」


「……はい!」


その夜、社から転移鏡を通って戻る途中、悠真は空を見上げた。


星々が滲むように光り、夜風が静かに吹き抜けていく。

胸の奥に、神核の鼓動が確かに響いていた。

もし、少しでも面白い、続きが気になると思われたら評価をして頂けると、とても嬉しいです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ