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神核戦記  作者: ハムジン
12/17

格闘の心得

本日3話目です。

次話は明日の12時投稿予定です。

放課後の校舎裏。

悠真は、自分に視線を向ける誰かの気配に気づいた。


「……結芽?」


制服のスカートを揺らして、静かにこちらへ歩いてくる少女。数日前、悠真を助けた少女――久須美 結芽が、悠真の通う高校の制服を着てそこにいた。


「君の学校、転入した。見守るため。」


「えっ……見守るって、っていうか、同い年だったの?」


「補佐。君の神核は不安定。だから、私がつく。そして、女性に年齢を聞くのは推奨しない。」


無表情ながら、どこかそれは温度のある声だった。結芽は、根の会の意向で悠真の傍につくことになったという。


「一緒に訓練へ行こう。」


そう言って彼女は歩き出す。二人は人目を避けて路地裏へ入った。

そこには見覚えのない、古びた神社が立っていた。


「こんなところに神社があったのか。」


「遼真から許可を得た者にしか認識出来ないようになっている。こっち。」


悠真が神社の社に入っていく結芽の後を追うと、そこには古びた枠に囲まれ、中心に蒼く淡い光を宿している鏡があった。


「……鏡?」


「“常世の社”へ通じてる。国津神系統の神核持ちにしか、これを使うことは出来ない。これも遼真が作った。」


結芽が静かに鏡を撫でると、淡い光が縁を走り、空間にぽっかりと蒼い裂け目が開いた。


「君は国津でも天津でもない。でも……この鏡には反応する。だから使える。」


「……?」


疑問を抱きつつも、悠真は彼女と共に光の裂け目へと足を踏み入れた。


常世の社。

そこは、現実と隔絶されたような静謐な空間。霧に包まれ、大木が立ち並ぶ広い中庭。

そこに遼真の姿はなかった。


「遼真さんは?」


「今日は来られない。代わりに、彼が来ている。」


その声と共に、境内の奥からひとりの青年が姿を現す。

長身で引き締まった身体。鋭く光る眼。

その名を、彼は静かに名乗った。


建部たけべ れん。建御名方の神核を宿している。今日は格闘の基礎を叩き込む。」


「格闘……?」


「神核を扱うには、まず身体を作ることからだ。お前の動きは素人そのもの。力に頼るな。技と心で制す。それが国津の流儀だ。」


蓮は構える。すでに“始まっている”ことを、その気配だけで悠真は理解した。


「……来い。」


強烈な重圧。悠真は反射的に身体を動かしたが、直後、軽く踏み込んできた蓮の掌打が腹部に入った。


「ぐっ……!」


そのまま地面に倒れ込む。


「痛みに慣れろ。呼吸を止めるな。集中しろ。」


見れば、結芽が静かに見守っていた。

その手には、いつか自分を救った結界札と同じ札が握られている。神能を完全に制御できない彼女が、それでも戦うために用いる護符。


「君が諦めないなら、私も支える。」


言葉は少ないが、確かにそれは励ましだった。


蓮の訓練は徹底していた。

足運び、受け身、重心の使い方――悠真の体は汗と泥にまみれていく。だが、なぜか心は軽かった。


「今日のところはここまでにしておこう。」


訓練の終わり、蓮がタオルを放る。

それを受け取りながら、悠真は地に座り込み、息を整える。


「……ありがとうございました。」


「お前は神核の素質以前に、人間としての軸がある。そこは認める。続けるか?」


「……もちろんです。」


その返答に、蓮の口元がわずかに緩む。


帰り際、常世の社にも転移用の鏡が設置されており、転移する前に結芽が静かに言った。


「明日も来る。君はまだ、始まりにすら届いていない。」


悠真は鏡から生まれた裂け目の向こうへと、決意を胸に秘め、一歩を踏み出した。

もし、少しでも面白い、続きが気になると思われたら評価をして頂けると、とても嬉しいです。

よろしくお願いします。

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