降り注ぐ雪の中で
それはスピーカーから聞こえてきた。普段は校内のみに聞こえる設定にしてあるが、今は外でも鮮明に聞こえる。
『何をする気だ、やめろ!』中年の、おそらくこの声は校長のものだ。『あなたは学校のお金を自分のために使いましたよね?はいか、いいえで答えてください。』彼の声とは対照的な少年の声が聞こえる。
『私は何もやっとらん!』すると録音されたであろう音声がスピーカーから流れだした。
『そろそろまずいですよ。』大丈夫だ、誰も気づきはせん。』校外でどよめきが広がる。さっきの声より少し高い声が校長を追求する、『なら、この音声は何ですか?僕の耳が腐ってなければあなたと教頭先生ですが。』刑事の眉が動く、そして彼は教頭に詰め寄る。
「貴方.....何か隠していないですか?」「い、いやそんなこと…」「一応この後ご同行お願いできますよね?」「はい…。」
「私が話したところで、お前たちは子供だ。何もできまい!」校長はやぶれかぶれで開き直った。
「そうだな、でも『三人寄れば文殊の知恵』ってやつだな。三人どころではないけど。」
「ところで校長先生、ここは放送室じゃん?」「そうだな、それがどうした?」「全体放送してる事、気づいてた?」「何ッ!?しまったぁぁぁ!」そう言うと彼はうなだれてしまった。
「さて、あとはここから離れるだけだ。」「でもどうする?外には警察がいるんだろ?」松田がみんなに告げる「校庭のフェンスに扉がある、テニス部が使っていたから通れるはずだ。」「じゃあそこから出るか。」全員が移動を始めた。
「俺はここに残る。」「なんでだよ、松田?」「元から俺が引き起こしたこと、責任を負うのは一人でいい。」
「わかった…最後にこれだけは伝えておきたい。」「何?」「もし、また何か困ったことがあったら遠慮なく相談してくれ。」「わかった…ありがとう。」松田の横顔が一瞬笑ったように見えた。「じゃあ、行くか。」全員が校庭に出るのを窓から見届けると、彼はかつて竹田が座っていた椅子に座った。
「生徒会長の椅子、一回座ってみたかったんだよな…。」
校庭を渡りフェンスにある扉を開けると、土手があり、そこを降りると歩行者専用道路につながっている。彼らは次々と外に出て行った。
冬の曇天の中、最後尾の颯汰は少し後ろを振り返ったがすぐに向き直り、扉を閉めた。空からはらはらと小さな雪が降ってきていた。
颯太はみんなの顔を見た。皆清々しそうな顔をしていた。「よし、帰るか。」そうだな。明日から冬休みだぜ。みたいな声が聞こえる中、颯太は蒼と中山に話しかけた。「明日みんなでどこか行かないか?」
次の日、颯汰は駅に向かった。そこには蒼と中山がいた。
昨日の家路、三人は話していた。「そういえば、明日はクリスマスだな。」「そうだな。」「そうだね。」「せっかく大仕事を終えたんだからさ、打ち上げ的なやつ三人でしようぜ!」
そうした中山の提案で三人は電車に乗り、街に繰り出した。そこで3人は買い物をしたり、ゲームセンターに行ったりして楽しいクリスマスを過ごした。
そして彼らが昼食をとっているとき、颯汰は一つの紙包みを取り出した。
「はいこれ。」颯汰は蒼にそれを渡した。蒼はそれを開けるとそこには帽子が入っていた。
「蒼って帽子似合いそうだから。」「ありがとう…大切にするね。」
そのあと3人は変えるために駅に向かっていた。昨日から降り続けていた雪がアーケードを白く染めている。そして空からさらに白い雪が空の立体感を演出する。
そんな中、中山がつぶやく。「クリスマスだからカップルで賑わってんな、それに比べて俺たちは女気がないな。」「そうか?そんなことにと思うけど、蒼いるし。」「え、どういうことだ?」
「どういうことも何も、蒼は女の子だし。」「はぁ!?」「あれ?言わなかったっけ?」「マジか気が付かなかったぜ。」雪はまだ降り続けていた。