暴かれた秘密
「すまない、稲生。」「どういうことだよ?松田?」颯汰は状況を理解できずにいた。松田は竹田の方颯汰に背中を向けて話した。
「話は聞けたか。」
「もうすぐ先生たちが警察を呼ぶらしい。」
「ところで、一緒に来た彼はどうする?」4人の視線が颯汰に集中する。松田が低い声で言う。
「俺が、なんとかする。」その時颯汰は気づいた。松田が彼らの仲間だったこととこの裏切りも彼の作戦のうちだったことも。
その頃体育館を出た2人は生徒会室に急いでいた。
「僕達の中に内通者がいるとするならそれは1人しかいない。」
「そいつがあの松田って奴のことか、でもそんなことするようには見えなかったぜ。」「おとなしい人ほど思いきりがいい時があるんだ。」
「それはそれとして、すごいもん持ってんな。」蒼が肩に担いでいるそれは、背丈を優に超える薙刀だった、競技用のもので先端に竹製の打突部が付いている。
「手ぶらじゃ不安だからね。」「それより早く伝えなきゃ、誰が本当の悪かを。」
「松田…お前は、俺を利用してたのか!」
「…そうだ。」
「今まで話してたことも嘘だったのか!?」
「嘘じゃない!」彼は声を荒げる。「お前に行ったことは本心だ。でも…お前に迷惑を巻き込みたくない。」
すると竹刀を持った生徒が立ち上がり言った。「いつまで無駄な話をしてるんだ、こいつは教師の命令で来たんだ。つまりは俺達の敵だ。」そして彼は竹刀を大きく振りかぶって振り下ろした。
その刹那、扉が全力でぶち開けられて颯汰の眉間に直撃するはずだった竹刀は届かなかった。
目を閉じていた颯汰がゆっくり目を開けると、そこには小さくそして大きく見える背中があった。
「…蒼?」蒼は竹刀を薙刀で払ってそのままこめかみをおもいきり打った。
息を切らしながら颯汰に聞く、「颯汰!大丈夫!?」
騒ぎを聞きつけたのかどこからともなく現れた生徒たちが生徒会室を取り囲んだ。囲まれて絶体絶命かと思いきや、後ろから中山が走って現れた。「菅原走るの速いな。」「中山!?」
「こいつらがここにいるということは南原は失敗したのか…。」今まさに乱闘が始まりそうな空気が漂い始めたとき、その時竹田が言った。「今は争っているときじゃない。オレ達の目的を忘れたのか?」
「そういえばこの事件の発端って何なんだ?」「それは…」「校長がなんか悪いことをしてたらしいぜ、稲生。」「それを表沙汰にするために起こしたんだって。」それを聞いた颯汰は松田の方を向いた。松田はどことなく怯えた顔をする、次に自分に向けられる言葉が侮蔑なのか?失望なのか?
しかしそれらは違った。「だったら最初から言ってくれよ、迷惑になんかならないよ。2人は?」
「異論はないぜ!」「颯汰が言うなら。」「決まりだな、今から俺達も仲間だ!」
「でも、もうすぐ警察を呼ばれるぞ。」「すぐに準備に取り掛かろう。」「よし、おれ校長、連れてくる。」1人の生徒が隣の教室に向かった。「あるぇ!?いない!?」そんな叫び声が聞こえてきた。
「なんだと!?」隣の教室をのぞき込むと椅子以外だれもいなかった。「しまったぁ~逃げられたか。」「校長がいなかったら、悪事ばらせないじゃん。」中山が言った。「どうする?全員で探しても時間がかかるぞ、その間に警察が来て、終わりだ。」
その時蒼は妙案を思いついた。「みんな、僕に考えがある。」
その頃学校の外では教頭と教師たちが問答していた。「本当に警察を呼ぶのですか?」「ああそうだ事態の解決にはそれしかない。」「しかし、相手は子供ですよ?」「子供だからこそだ。今のうちに正さねば何をしてもよいと思いこむことになる。いいから電話しろ!」
校長は階段の影に隠れていた。まさか自分の立場が生徒達によって脅かされることになるとは。彼はこれまで予算を旅行や賭け事、教育委員会への賄賂に使っているのを知っているのは、彼と教頭だけのはずだった。
松田康介、ある日彼が話がしたいとやってきた。
「話とはなんだね?」「校長先生…あなた学校のお金を勝手に使ってますよね…。」「何をいきなり。」すると彼はスマホを取り出し録音を再生した。「そろそろまずいですよ。」「大丈夫だ、誰も気づきはしない。」その録音が世に出れば彼の立場が崩れ去ることは間違いない、彼は松田にいった。
「君は勘違いをしているな、そんなものいくらでも揉み消せる。それに君と私では信用の差がある。分かったなら帰りなさい。」次の日彼は松田の担任の先生に彼が学校でスマホをもってきたこと、動画撮影をしてSNSに投稿したことを伝えた。これで解決だ、もう余計なことはしないだろう。そう思っていた。
まさかこんなことになろうとは。しかし教頭のことだ警察をきっと呼ぶ。それまでここで隠れていれば…。
そんなことを考えていると、声が聞こえた。
「校長先生~どこですか~」ついに来た!彼は叫んだ「ここだ!はやくきてくれ!」これで一安心だ
現れたのは肩幅が広くて長身、制服を着ている。しかしその制服は彼が校長をしている学校のものだった。「おーい、見つけたぞ!」中山は大きな声で皆につたえた。
その数分前、「警察になる?」「そう、僕たちが警察のふりをして校長先生を探すんだよ。ちょうど中山君とか声が低くて騙しやすそうだし。」「そんなのにひっかかるかな?」
「今はこれしかない、無理だったらその時はそのときだ。」竹田の無責任発言で捜索はスタートした
「まさか本当に捕まるとは。」「マヌケめ…。」
颯汰たちは校長を職員室の奥にある小部屋に連れ込んだ。
学校の前にパトカーが多数到着するにはさほど時間がかからなかった。多くの警察官がやってきて、最後に殺伐とした目つきの刑事が降りてきた。警察と教師の間で情報交換が行われようとしたまさにその時。
ピンポンパンポンー 張り詰めた状況に不釣り合いな間の抜けた音が響いた。