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颯の蒼空  作者: 心労心負
第3章
12/18

楽しい学校生活

 朝。太陽が昇り希望に満ちているが、颯汰にとっては憂鬱な朝だった。今日から学校の授業が始まる、つまり部活も始まるということだ。この学校のバスケ部は地域ではなかなかの強豪で練習も多い。しかし顧問の先生が「適度に休みを取った方がパフォーマンスが上がる」というスタンスだったのでしっかり休みは取れていた。だがその先生は他の学校に行ってしまった。彼の代わりに顧問になったのは副顧問だった中年の生徒指導のおっさんだった。

 絶対めんどくさいじゃん、あいつ

 そんなことを心の中で呟きながら颯汰は学校に向かった。今日はしっかり起きられたので余裕で間に合いそうだ。

 そして颯汰は無事学校に到着した。授業開始初日から体育があった。何かの説明と列の並び順を決めた後授業の半分以上は自由時間だった。暇だった颯汰たちはバスケをして遊ぶことにした。

 「こっち稲生いるから勝ったじゃーん!」「そっちにバスケ部のエースいるのずるくね?」その試合の中颯汰達のチームは相手チームに大差をつけて勝っていた。

 その時、ボールが相手チームの相生に渡った。彼にスポーツの経験が全くないので適当に相手ゴールに向かって放り投げた。ボールは大きく弧を描いたがゴールに入るには程遠かった。

 そこに想人が颯爽と走り込み、ボールをキャッチ、華麗なジャンプシュートを決めた。

 「すげえぇぇぇぇ!!」「かっこいい!」体育館が沸き立った。

 そのあと教室で颯汰は想人に提案した。「なぁ、俺と一緒にバスケしないか!?」「まぁオレはいいけど……」


 5時間目は部活の紹介ビデオを見る時間だった。サッカー部やテニス部の紹介映像が流れていく。剣道部の映像には松田の姿もあった。松田のやつ剣道部だったんだな。颯汰はそう思った。

 松田は画面をぼんやりと眺めていた。自分はすでに部活に入っているし、今更変えるつもりもない。

 「惰眠をむさぼる時間か...…」小声でつぶやいて机に突っ伏そうとしたとき美術部の映像が流れてきた。部員が描いたと思しきイラストが流れていく。その中の1枚、星空を見上げる少女のイラストが流れてきた。「…」松田はただそれを眺めていた。


 学校が終わった。今日も部活がないので松田は帰ることにした。すると上川が彼に話しかけた。

「松田くん、君どの道を通って帰ってるのかな?」「池の方からですけど...…」「悪いんだけどこれを届けてくれないかな?」「どこにですか?」

 「綾部唯、か」松田は大きな茶封筒に書かれた名前を読み上げた、聞いたことのない名前だ。そういえば稲生の前の席が空席だった。おそらくその席の人のだろう。それにしても何で俺が...

そんなことを考えながら目的の場所にたどり着いた。

 インターホンを押してみた。

 ぴんぽーん

 誰も応えなかった。少し待ってみると弱々しい返事が返ってきた。

 「あ、あの、どちら様ですか...…?」「2年B組の松田康介です」「へ、部屋の前に置いといてください.....」

 家の中まで入ってこいってことか。扉は開いているようだった。大体の子供部屋は2階にある、玄関横の階段を登って松田は廊下の突き当たりの部屋を見つけた。さっきの声の主はきっとそこにいる気がする。

 扉をノックしてみた。「あのーこの部屋であってますか?」すると扉の下から1枚の紙切れが流れ出てきた。「あっ」そんな声が部屋から聞こえた。

 松田はその紙を見てみた。白紙だ、何も描いていない。彼はそれを裏返してみた。絵が描いてあった。

 「これは...…」それは部活紹介の時彼の目を釘付けにしたものとよく似ていた。ドアの向こうから声が聞こえる。「封筒を、ドアの下から入れてください...」絵が描いてある紙を重ねてドアの隙間から差し込んだ。

 「ありがとうございます...…」「絵、上手いな」「え?」「今日さ、部活紹介があってすごく上手な絵を見たんだよ。その絵柄に似てたなって」「……」「じゃあ俺はこれで」「まって……」「どうした?」「またきてくれますか……?」「たぶん、な」

 

 次の日。松田は石原、相生、大西と話していた。

 「プリントを届けに行ったら絵が上手い人と話したって?」「なんかのマンガでそんなストーリー見たな」「物語が始まりそうだな、それ」「相生より上手いんじゃないか?」「なんだと……?」

 4人が話しているところに想人がやってきた。

 「なぁ、今朝なんか『ほーっほーっほっほー』みたいな鳴き声が聞こえてきたんだけど、何あれ?」「何って……キジバトだよ」「鳩ってあんな風に鳴くのか!?」「都会の鳩は鳴かないのか?」「そうだな、やっぱここは前にはないものがあって面白いな」その後も松田と想人は会話に華を咲かした。

 それから1週間後、4月も後半。颯汰と想人、そして松田は一緒に帰っていた。3人はすっかり打ち解けたようだ。

 家に帰るとスマホから着信音が聞こえた。颯汰はメッセージを確認すると微笑んだ。

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