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VS多鬼 其の肆

「はば!?」

「だからできていない! それはただ肉体が力んでいるだけ! 霊力を感じ取れていない!!」


 修行が始まって二日目。もう何度目になるだろうか。頭をぶっ叩かれて怒鳴られるのは。


 どうも僕は才能というものがないようだ。一応、最初の方はついつい寝てしまったが、座禅じゃなくて中腰の態勢で真面目に霊力を感じようと瞑想しているのだが……霊力? と思ったものはただの力みだったらしく、その度に殴られた。


 いや力んだけど殴られる筋合いはないと思われるが、これにはちゃんと理由があって、下手に力んでいると霊力が流れて来ないそうだ。


 どうしても力んでしまうのはアレだな、子供の頃にチャクラや気を感じる的な錯覚を覚えてしまうアレ。


 なんだろう、子供の頃を思い出す。あ、いや、話の流れで漫画の影響でチャクラや気を感じる修行した的な話じゃなくて、昔のトラウマ的なもので。


 昔、サッカーの授業でリフティングのテストがあって、目標が十回以上で、皆は出来たのに、僕だけ一回か二回くらいしかできなくて、こっちは真面目にやっているのに。先生には『わざとやっている』だの『ふざけないで真面目にやれ』だの怒られて、クラスメートにバカにされて、泣く泣く昼休みに一人で練習したことを思い出す。


 あの後、練習をクラスメートにバカにされてキレて、それで先生から説教喰らう羽目になって、更にどこで聞きつけたのか知らないが切利ちゃんからも絡まれて、その後も散々な目に遭った。


 どうも僕は普通の子ができることが人一倍遅い子供だったようで。……まあ、今もだけど。その癖変なところでは力を発揮する性分だった。でもその手の能力は一般社会にはあまりに使い勝手良くないもので、周囲から奇異な目で見られて、馬鹿にされた。


 あ~、どうしよう。泣きそうだ。というか、絶対、今の僕の目真っ赤で声出すと泣きじゃくる声を出す自信がある。


 これしたら「泣けば許してもらえると思うなよ!」と僕がこの世で恐ろしいことの一つが言われてしまう。


 冷静な時は『泣けば許してもらえるって、そんな考え普通持ちませんよ。自分の情けなさと惨めさ、弱さが悔しくて辛くて泣いています』とか『泣けば許されるってあなた自身の子供の頃に反省せずにそう思っていたから、本気怒られた時に何もできなかったんじゃないんですか?』とかクソみたいな返しできるけど、マジでメンタルが弱っている状態だとできない。


 あ~、クソ、キツイ。泣きたい。


 やる気と誠意(?)自体はあるんだよ、僕も、うん! でも気持ちとは裏腹に結果を出せない。真面目にやっているのに、結果の方に反映されないんだ。


 はぁ~、僕は昔からそうだ。努力自体はやっているんだが、それ必要な時に応じて開花してくれない。できるようになった時大体「え? 今更?」と感じで冷めたものを見る目で見られる。


 こっちとしては頑張ってようやくできるようになったのにな……。


「待って!」


 突然の上がった先輩の大声にビクンとして反応する。


「はい?」

「いややっぱ待たないで。今の調子を続けて」

「?」


 急に待ってと言ったり、続けてと言ったり我儘な人だ。なんだろう、アレかな? 彼氏いるって言っていたし、多分きっと遠隔操作のローターのスイッチが入ったんだろう。全く、神聖な稽古場でなんて破廉恥なことしているんだ。そういうのはエロゲーやエロ漫画世界だけにしてくれ。


 と適当な冗談を胸の内で考えていると先輩の方が真面目な調子で言ってくる。


「今、あなたの呪力が著しく反応があったわ」


 え、呪力の反応? 霊力だったり、巫力だったり僕の霊力は一体どうなっているんだ?


 大体どうしていきなり呪力を……あ、そっか。負の感情! 昔のトラウマを思い出したからそれで呪力が反応したのか?


 でも、呪力の感覚なんてわからなかった。単純に胸のところが切なくなって、気分が沈んでしまっていたからそれに反応したのか。


 え、ってことは気分を落とせばなんとかなるのか? よし、嫌なこと思い出すか。えーっとそうだな。アレは僕が中学の時の………。


「ダメね、完全に気配が消えてしまったわ」

「………」

「泣いても意味がないでしょ。切り替えなさい」


 すすり泣く僕を見て情けないと表情で冷たく告げてくる。


 いや、出来なくて泣いていたわけじゃあ……それも実は少しあるけど。でもそれ以上に昔の記憶を思い出して純粋に心が傷ついた。


 はぁ~。うまれきてごめんなさい。


 気持ちを切り替える、感情を斬り換える。


 少しだけ冷静さを取り戻しては今の流れを確認してみる。


 負の感情で呪力は発揮する。が、ただトラウマを、というかこの切なさは毎日抱いているのに、それだと毎日呪力を発揮していることになる。だけどその自覚には僕にはないのでただ負の感情を募らせていても呪力は発揮されない。つまり意味がない。


 結局は地道になんとかコツを掴むしかないのか。


 よし、やるか。


 集中、集中。


 瞳を閉じて自身の中で水が流れるようなイメージを思い浮かべる。細く長い管を通り、枝割れしてはそれが全身に巡っていくイメージを………。


 すると指先の先端の方にスーッと何か集まってはぷうーと膨れ上がってくるような感覚を覚える。霊力が手の先にじわじわ集まってくるのを。


 眼を開けて僕は掌に集まった霊力を維持しては榎先輩に言う。


「……どうですか?」

「全然できてないわ」


 ……もう、このやり方ダメなのかもしれない。


 いや僕だって分かっているよ、指先の先端だとか肌とかに感じるのが、ただの痙攣の起こす錯覚的なものだって。だって、子供の頃にチャクラとか練る時にこの感覚何度も味わったもん! 水風船で螺旋丸の修行したもん! できなかったよ!


 皆だって似たような経験あるだろ!? チャクラじゃなくてもビーデルさんに修行付けるゴハンが気について教えるシーン。それに倣って練習する人! 僕は詳しいんだ!


「ねえ、あなたいつもどういうイメージでやっているの?」

「え、そりゃあ、水とか血が全身に回るような感じのイメージで。漫画とかよくそういうのでやっているので」


 自分のやり方について教えるとああ、とバカをみるような目で納得するように頷く。


「ちなみに私と手を合わせた時はそういう風に感じた? 私から水が渡ってくる感じだった?」

「はい。……あ。いえ違います」


 思わず反射的に返事だけ返してしまったが、思い返してみれば全然違った。


「えーと、先輩の時はなんというか、水の流れっていうよりも大地のチカラの流れ? っていうんですかね? 大地が流れて生命に息吹を与えてくれるような、地上の動植物が生きていけるのはこの力があるからなんだ~、って何となく納得しましたね」


 直感したそれをできるだけ具体的に伝えようと言葉を選んで伝えると、そう、と納得したように頷く。口元のホクロを指先で押して少し考える彼女はやがて口を開く。


「本当は霊力を感じるようになってから話そうと思っていたけど、先に話しておくわ」

「? はい」

「人間には誰しも霊力を秘めているって話したわよね?」

「え? いえ、……たぶんそれは言ってないと思います」

「言ったわよ」

「あ、すいません。忘れてました」


 まあ、僕のポンコツの記憶力だから細かい説明は多分憶えていないんだろう。ほんと記憶力がないな僕。


 素直に謝る僕。ホント手のかかる生徒と言わんばかりの呆れ顔をする先輩は話を続けて説明を始める。


「魂から反映された霊力には五つの属性が存在するの、水、木、火、土、金の五つに」

「……陰陽五行ってやつですか?」

「あら知っているの?」


 言い当てると少し驚いた顔してくる。


「漫画知識程度ですけど。アレですよね。金が一番使いづらいから、大抵は雷とか風に変えられちゃう的な漫画事情がありますよね。『「金」ってなんだよ、どう使えばいいんだよ、土の強化版の『鋼』でいいじゃん』的な扱いをされやすい、必ずって言っていいほどのレベルで外される『金』」

「……もしかして分かってて言っているの? 君の属性はおそらく金行よ」

「……え?」


 マジかよ、外れじゃん。……金ってどう使えばいいの? 武器を大量形成さればいいの? アンリミテッドブレイドワークス?


「と言っても少し語弊があるわ。漫画やゲームだと、そのままの属性として……例えば火だと火の攻撃や水だと水の攻撃しかできないみたいな感じになるけど霊能力者にとってはその認識は間違っているわ」

「?」


 属性ではあるけど、普通に火や水としての攻撃するわけではない? どういうことだ?


 意味の分からない事を言われて少し混乱する僕を見てか、そうなるわよね、と意味深に頷きつつ、話を続ける。


「言ってみればそのものよりも特性を当て嵌めているといった調子ね。火ならば燃焼や発達。水なら流動と変化、といった具合には」

「ふーん。金はなんなですか?」

「法則と戒律」


 法則と戒律? つまりはルール的な性質を持つってことだろうか?


 ああ、なるほどね。属性がそのまま性質ではなく、特性って言うことか。アレだな、イメージとしてはリボーンの天気属性に近いのか。死ぬ気の炎に天気それぞれの特性として当て嵌める的な。そう解釈するとなるほど、何となく意味が分かってきた。


「他にも陰陽五行っていうのに陰陽道として話があるんだけど、ま、こっちは今度にしましょう」


 話を戻すわね、と陰陽道に関して伏線を残して話を戻される。ぶっちゃっけ、どこの話に戻されるんだろう? というかどういう流れでこの話題が始まったんだっけ?


「あなたが全身に水が流れていく感覚で霊力を感じようとしていた、それ自体は間違っていないけど、それは水行を持っている人の方が力の流れとして体質として合っているの。私が霊力の巡りがあなたの言う、大地の生命の息吹のような感覚がそれよ」

「え?」


 ……なんでこの人、最初にそれ言ってくれなかったんだろう? 昨日の内に言ってくれればそうしたのに。


「霊力の才能を目覚めた人なら自身の霊力を大なり小なり感じるもの。こんなにかかるなんて私も想像していなかったわ。私も修行開始時代はすぐに霊力は感じ取れたもの」

「…………」


 どうやら僕の才能のなさが災いして予定の順序がだいぶ遅延していたようだ。なんで僕はこんなに人の教えに関して、テキパキと器用に課題がこなせないんだろうか? 人間として欠点が過ぎるな。もう死んじゃおうかな?


 また過去のトラウマが脳内に巡ってきては泣きたくなるのを堪えて必死に誤魔化そうとする。


 そっか……僕の漫画知識が間違っているのか。……畜生、騙したな。魔力や霊力を水の流れをイメージしろって言った作品め、絶対に許さないぞ!


 と、内心でくだらない冗談を吐いてメンタルの回復を図りつつ、「じゃあ金属性はどんな感じなんですか?」と金属性のチカラの流れについて訊くと先輩は笑顔で答えてくる。


「知らないわ。私、金行じゃないもの」

「そうですか」


 つまり自分で感じて理解しろってことか。……アレだな、人に聞いて答えを知った気になるな、的なことなのかな? 自分で考えるのが大切っていう人生の話なんだろう。


 決して、マジで金属性のチカラの流れは知らないということはないんだろう。巫女である彼女ほどの霊能力者が。Fateで例えるところの凛ちゃんポジの人なんだから。分からないことなく、自分で考えろ陰キャ、的な意味合いなんだろうな。


 右手を首の後ろへと回して軽く揉んで脳への血行を良くして思考を回す。


 う~ん、水の流れや土の流れについては僕のイメージで合っているということなんだろう。なら他のイメージは火ならメキメキと火事が起こって火が回るイメージ、木ならば幹や枝が徐々に育っていくイメージで霊力回せば多分、おそらくは何とかなるのだと思う。メイビー。


 他の四つはそんなイメージで大丈夫だと思うんだけど、肝心の金のイメージはなんだ? これが風や雷ならまだいい、他の四つ同様にイメージが付く。が、金に関しては、え……マジでなんだろう?


 ヤバい、マジで外れ属性だ、コレ。そりゃあ、漫画から属性候補から切り離されるよ。土か鋼でいいんだもん。


「ちなみに僕が金って言い当てた理由を聞いてもいいですか?」


 マジで思いつかないからヒントを得ようととりあえず聞いてみる。ん、と彼女は手を出して見せる。


「私があなたに霊力を流した時、それから伝わってあなたの霊力が反応したのを私もキャッチしたの。漫画知識があるなら知っているでしょ。陰陽五行の相生効果。私の一番適正は土行だから、その波動に反応して動きを見せた。だからあなたは金行」


 なるほど。土は金を生み出すっていう相生効果ってヤツか。


「細かいことを聞きますけど、火だったり、相性最悪の木だったらどう反応するんですか?」

「木だった場合は単純に少し弾かれる感覚ね。静電気が走ったような少しピリつく感じ。火や水だったなら単純に霊力が回るだけよ」

「ってことは僕らの相性はいいってことですね」

「……そういうことになるわね」


 適当な感想を溢しながら肝心な金属性のヒントに何も繋がらなかった。仕方ない、ここは連想ゲームでそれっぽい力の流れをイメージできそうなものを探し見るか。


 金金金…………お金、ゴールド、金の延べ棒……う~ん……金色、クウガライジング。アルティメット。クウガのライジングか。……金は雷だった? うん、一応候補に挙げておこう。


 一回雷のイメージで、電気ショックを受けたような衝撃が霊力に循環するイメージを………………あ、ダメだ、水の時と一緒で全然変わんないわ。ただの痙攣しているだけ。


 ああ~駄目だ、全然駄目だ。……ん? 待てよ。『チェスの盤をひっくり返す』? ……そうか、黄金の魔女ベアトリーチェ!


 僕の大好きな漫画『うみねこがなく頃に』のベアトリーチェは黄金の魔女っていう以上アイツも金属性のはずだ。


 ベアトリーチェの特徴とはなんだ?


「―――可愛いか」

「はい? ……え、なに、いきなり…………え、私、のこと? あり、がとう……?」


 ベアトリーチェの特徴が可愛いから、つまり僕が可愛くなれば金のチカラが使えるようになるってことか!


 よし、なら可愛いを意識して霊力を………うん、駄目だ、全然駄目だ。くっそ、戦人のやつめえ! お前が子供の頃に「白馬に乗ってくる」なんて余計な事を言わなければ~、僕はこんな目に合っていないんだよ!


 と、とんでもない方に責任転換をしつつ、冗談を一度切りやめて真面目に考えを改める。


 まず、ベアトリーチェの特徴を改めてみよう。


 可愛い、美人、金髪、巨乳、エロい、寂しがり屋で、戦人大好き、ヤンデレ。


 残忍で、悪魔のような性格で、ドSで、頭がキレて、ゲームが好きで、遊びが好きで、無限の幻想を操り、人を殺して、一族を殺して、計画通りに殺して、ゲームのルール通りに殺して、―――あ。


「―――チェスの盤をひっくり返す」

「はい? 『チェスの盤をひっくり返す』? ??」


 あることを思いつく。


 あの作品は盤上のゲームであり、キャラたちは駒である。それを戦人君とベアトの二名で行われるボドゲ―やTRPGみたく扱われていた。いやここの部分はどうでもいい。注視するべきはその内容だ。


 あの作品におけるキャラ達の思考回路且つ最終目的としては『黄金を手に入れること』であり、そこに登場人物達の思惑や欲望を渦巻いた創作によくある『金持ちの一族においての遺産目当ての殺害事件』のフォーマットである。


 つまりは、あの作品は表面では人の欲を描かれた作品(いや、表面じゃなくまんまだな、アレ)。


 ―――そして、欲望は人を動かす。


 人の欲望を動かすようなイメージ。


 金を、食事を、睡眠を、知識を、快楽を、色欲を、娯楽を、承認を、生きる気力を、何よりも―――死という安らぎを求め。


 それへと手伸ばしてしまう人間として当たり前の行為であるのに、度が過ぎては人として悪魔へと変えてしまうほどの強大なチカラ。そういうチカラの流れ。


 もし、金のチカラの流れを、『欲望』のチカラとして上手くイメージできるならば……。


 集中、集中。


「らっちゃんはいるか!?」


 集中、集中。


「あら、りっちゃん。それに雨崎君も」


 体の奥底に感じる金色の何か……あれ、なんか白くない? ……あ、そういえば陰陽五行的には金は白色扱いなんだっけ? あれ? 白? 何かで白はどうこうの聞いた覚えがあるようなないような……ただの記憶違いか。


 少し意識が別の事に行ってしまい、せっかく掴みかけていた霊力が途切れそうになって慌てて引き留めるように集中し直す。


「先輩大変です! 裏山の方に!」


 とりあえず、霊力の塊みたいな、核のようなものにはたどり着いた。さてこれをどうすれば流すことができるのか。


 感覚として人の欲によって突き動されるチカラをイメージすれば、この霊力を認識できることは分かった。


 ではこれ具体的にどうすればいいのか?


 ―――……つまりは僕自身の欲望とは一体全体なにか?


「我一君、君はここで……っ!」


 ―――僕は■■■■■■。


 そう強く願ってみる。すると霊力の集合体がその願いを叶えんとするばかりに体中に巡っていくのを感じる。力が溢れる。


 例えば、楽しいことをしていると普段よりもチカラが溢れてくるように。

 例えば、待ちに待った日がこれからやってくるとチカラが沸いてくるように。

 例えば、疲労困憊だけどこれさえ終われれば、との最後のチカラ振り絞るかのように。


 僕は霊力が回るのを感じる。


「!(なんか夜名津が凄いことしてる)」

「!?(さっきまで全然できていなかったのに)」

「……(霊力を身に着け始めたのか。この儀式の犯人ではな、いや、コイツに限って油断はできない。偽っている可能性がある。やはり注意が必要だ)」


 あ、無理だ。


 途端に僕の周囲に巡っていた霊力が途切れるのを感じる。


 深層心理の奥深く……海の奥深くまで潜っていたのが、息ができなくなったから苦しくなって浮上するように意識が現実へと目覚める。


 ああ、使えないなコレ。また子供の頃にリフティングしていたのを思い出した。サッカーボールへと蹴るチカラが誤って長く続かないと集中が切れたのと同じだ。


 あと何百回と練習を何日も続けないとできる気配……取得できる気がしない。


 やっぱこういうのの才能がないわ僕。


「夜名津」


 名前を呼ばれて振り返ると、雨崎君と切利ちゃんがいた。……まあ、声が聞こえていたから知ってたけど。


「なんかトラブっているっぽいけど、どうした?」


 声自体は聞こえていたけど内容は何言っていたのか全然頭に入っていない。セミの鳴き声と一緒。


 一体何の話なのかと訊ねてみると、先輩の方から声がかかる。


「……我一君、実戦よ」


 ……ジッセンってなんだ?


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