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大きくなったお腹で、観客席に座る。
副社長、夏生さん、その隣に私という順番だけど・・・。
見える位置に一成の家族とうちの家族も座っているし・・・一成のおばあちゃんはおじいちゃんの写真を持っている。
それに・・・前の目立つ場所には、一成に内々定を出してくれたあの子が。
誰よりも目立つ格好で座っていて・・・選手よりも注目されている。
「そろそろ予定日?」
夏生さんに聞かれて、苦笑いをする。
「それが、もう少し先なんですけど・・・。
凄い大きくて・・・。」
「一成大きいからね~。」
面白そうに笑う夏生さんに頷き、念の為聞いてみる。
「私・・・大人っぽくなりましたか?」
お腹を擦りながら夏生さんを見る。
夏生さんがじっくりと私を見てくれ・・・首を傾げた。
「なんでだろうね?
なんか・・・凄い若いよね?」
「え~・・・妊娠してても、そんな感じですか?」
「あれじゃない?
旦那若いから、若さ保ててるんじゃない?」
「それ誰かにも言われましたけど・・・。」
「それか、あれかな?
26歳まで処女だったからとか?」
「それはもう止めてくださいよ~。」
「可哀想なくらい話題になってたよね?」
顔中を笑顔にしながら大笑いしている夏生さんにつられ、私も笑う。
12月3日、朝のニュースで競泳の本格的な復帰が取り上げられ・・・
その日のお昼にはSNSで一成が婦人科にいたことが話題になった。
その後すぐに入籍をしたことで、会社の判断で入籍したことも表に出したところ・・・
夕方以降のニュースでは入籍も取り上げられて・・・
更に・・・
「ネット上で可哀想なくらい“処女の26歳”ってワードが出てたよね?」
「それで相違ありませんから~・・・!!」
一成の相手が“処女の26歳”と凄く話題になってしまって。
26歳で、一成より6歳も上で叩かれるかと思ったけど・・・予想外に祝福の声も大きかった。
「あ、来たよ。」
夏生さんに言われ、選手が入場してくる姿を見下ろす。
その中には、一成の姿が・・・。
今年の日本選手権、そこに決勝まで残れた。
400メートルの自由形だけでなく、他の距離でも。
「一成ってさ、もっとパワーで泳ぐのかと思ったら、案外静かに伸びるように泳ぐよね?」
「夏生さんよく分かりますね、流石です。」
一成が私の通っていた水泳スクールに来た初日、先生達の中でも意見が割れているようだった。
その時の一成は、ダイナミックに泳ぐ・・・そんな泳ぎ方だった。
でも、それは・・・
「おじいちゃんから泳ぎを教てもらって、海で泳いでたって私が先生に言ったんです。
そしたら、直されました。
入念に・・・綺麗に直されました。」
「海で泳ぐとさ、違うんだよね。
海では海の泳ぎ方がある。
それに、泳ぎ方もどんどん変わってきてるからね、より速く泳げるように。」
夏生さんの言葉に、私は頷く。
そして、自分のレーンのプールサイドに立つ一成の姿を見る。
「一成、予選の時もあんな感じだったよね?
全然緊張してなくて、やっぱり凄い。」
夏生さんに言われ、また頷きながら一成を見る。
一成は・・・笑っている。
他の選手達が身体を少し動かしたりしている中、一成は静かに立って・・・プールの向こう側を見て、笑っている。
きっと、目もキラキラさせているはず。
きっと、私を見ている・・・。
中学1年生の時の私を・・・。




