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瑠美side......
「瑠美・・・?
そんなに泣いて、大丈夫?
お腹とか・・・。」
一成が心配しながら、目の前の席から私の隣に移動してきた。
そんな一成の大きな胸に倒れるように近寄ると、一成がすぐに抱き締めてくれた。
“やっと、瑠美が“俺のお母さん”になった・・・。”
一成がそう言ってから話し始めた話は、知っているようで知らない話ばかりだった。
“一成君”が小学校1年生から一緒にいるから、おじいちゃんの話も知っているし、引っ越してきた後もずっと一緒だったから知っている。
でも、おじいちゃんからそんなことを言われていたのも知らなかった。
それに小学校1年生・・・あの出会った日から、私のことをそういう風に思ってくれていたのは知らなくて・・・。
「瑠美がこんな風に泣いてるの、初めて見た・・・。
俺の話、引いた?」
そう聞かれ、泣きながら首を横に振る。
「瑠美・・・そんなに泣くと、赤ちゃん・・・」
一成が心配しながら、私のお腹を大きな手で優しく撫でてくれる。
それを感じながら、私は頷き・・・何度も深呼吸をして・・・
深呼吸をして・・・
でも・・・
「そんなに・・・!?」
また、泣き出してしまった。
私が泣き止むまで、一成が何も言わず抱き締めてくれて・・・片手でお腹を何度も擦ってくれていた・・・。
涙が止まってからも、私はしばらく動けなくて・・・喋れなくて・・・。
一成の大きな手が、私のお腹を撫でてくれるのをずっと眺めていた。
そして、その手を眺めながら・・・やっと口を動かした。
震えてはいなかった。
無理矢理動かしてもいない。
口を、普通に動かした。
「私は、ずっと自分が変なんだと思ってたの。」
「変って?」
「一成と出会った時、私は中学1年生だったんだよ?」
「うん。」
「それなのに・・・あの日、プールで・・・。
“すぐ、追い付くから。俺のお母さんになって。”って言った小学生1年生の“一成君”のことを、格好良いなと思っちゃった。」
「いいじゃん!」
「“お母さん”って言われたのに、私には格好良いと思っちゃった。」
「よかったよ!」
「それに、一成君が3年生になって選手コースで初めて泳いだ日は・・・もう、“男の子”としても思えなくて・・・。」
「・・・何に見えたの?」
一成を見上げながら、言う。
「分からない・・・。
プールの中を泳ぐ、プールの水の中を泳ぐ・・・“何か”。」
「それって・・・いいやつ?」
「分からない・・・。
とにかく、“男の子”とか“男”とかそういう枠におさまってなくて。」
「え・・・なに?海坊主とか?」
笑っている一成を見ながら、私も笑う。
「何か分からないけど、速い“何か”。
とんでもなく速い“何か”で、とんでもなく格好良い“何か”。」
「格好良かったなら、いいか!」
「うん・・・格好良かった・・・。」
そう言って、両手を伸ばし一成の首に回し抱き付く。
「あんなに格好良い姿を見た帰り道・・・あんなに格好良いことを言われたら、好きになっちゃうよ。
“お母さん”って言ってくれたのに、気付かないようにしていたのに、“好き”だって思っちゃうよ。」
「好き・・・だったの?」
「好きになっちゃうよ、“一成君”格好良かったもん。
小学校3年生で、私は中学3年生だよ?
私は変だよ・・・。」
首に回していた両手を、一成の肩にのせる。
一成が驚きながらも、私の腰を両手で優しく引き・・・私はあぐらをかく一成の上に跨がった。
「だから、私は・・・私の身体は、成長を止めたんだと思う。
私の心が、それを求めていたから。」




