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「一成!!3年に上がれたか!!」




瑠美のお兄ちゃんが、高校3年生になった日の夜に来てくれた。




「よくやったよ、算数も微妙だった奴が!

文系コースだから3年からは理数系なくなるんだろ?」




「なくなる!!

理数系は本当にやばかった!!

よかったよ!!!!」




「あそこからよくあの点数取れたよ!」




理数系以外の教科は、テスト範囲を1から勉強していっても対応出来るからまだよかった。

でも、理数系については小学校からの積み重ねが必要なのかなと感じていて・・・。




「一成は本当に、“努力に勝る才能はない!”の言葉通りの奴だよなぁ!」




「瑠美のお兄ちゃんも一時期選手コースだったもんね?」




「すぐ辞めたけどな、俺は健康のために泳いでいただけで速さとかそういうのはな!

頭良い奴でも、案外ちゃんと身体動かしてるんだよな・・・博士先輩とか。」




「博士先輩?」




「大学のOBで有名な人。

・・・そういえば、瑠美は?」




お兄ちゃんに聞かれ時計を見ると、22時になろうとしている。




「最近、遅いんだよね・・・。」




「新年度前後は忙しくかるからな~。

・・・寂しいか!」




「うん・・・。

年齢だけは、追い付けないからね。」




「早くやっちまえよ、もう高校3年じゃん。」




「俺、避妊出来ないし・・・。

あと俺が未成年だから、瑠美が捕まるって。」




「そんなのバレなきゃ大丈夫だろ!

普通バレねーから!!」




「瑠美とお兄ちゃん、何でそんな真逆なの?」





笑いながら聞くと、「使ってる脳の場所が違うからな」と笑っていて・・・。





「でも、追い付いたら・・・話聞いてくれるって言ってたし。」




「追い付くって?」




「瑠美の人生に、追い付いたら。」




「また瑠美が小難しいこと言ってるのか!

誰に似たのか、やたらと小難しい奴になったんだよ!!」




「おじいちゃんとかおばあちゃんは?」




「それが、いないんだよな。

瑠美だけ突然変異なんだよ・・・。」





それに笑っていると、瑠美のお兄ちゃんが少し考えた顔になって・・・





「でも、アレかな・・・。

一成のお母さんが救急車で運ばれて、それからかな・・・。

あの日俺が家に帰ったら、朝とは別人な奴に見えたな。」




「そうなんだ?昔からあんな感じじゃなかったんだ?」




「クソ真面目な奴ではあったけど、こういう感じとも違ったんだよな。

瑠美は末っ子だし、弟が出来たみたいでしっかりしたのかもな!」





それには、苦笑いで・・・





「弟じゃ困るんだけど。」




「だから、早くやっちまえって!」





ここから、また同じ話に3回なった。

瑠美のお兄ちゃんは1番有名な国立大学を出ているくらい勉強が出来るのに、こういう所はこんな感じになる。









「一成君、ごめんね!!

夜ご飯食べてない!?」




瑠美のお兄ちゃんが帰った後、少し経ってから瑠美が俺の部屋に来た。




「家に電話してくれたから、ちゃんと先に食べてた。」




「よかった・・・。」




瑠美がホッとした顔をしているけど・・・




「瑠美こそ、もっとちゃんと食べてよ。

昼とか・・・食べてる?」




「うん、食べてるよ。

量はそこまで食べられないけど、バランス良くは食べられてる。」




そう言って、俺の机に広げる教科書とノートを後ろから覗いてきた。

瑠美の身体が頭の後ろや背中に感じて、それだけで苦しくなる・・・。




「大学受験してみたら?

この集中力と地頭、あとは努力出来る才能があるから、結構良い所いけるんじゃない?」




「親にも言われてるけど・・・早く、働きたい。」




「そうなの?」




「そうしないと、追い付けない。

瑠美に置いていかれる。」




「・・・私は泳ぐのが一成君より遅いから、そんなに速くは進まないよ。

よく考えて、一成君の人生がより良く進められるように。」





瑠美は・・・俺に大学に進学して欲しいようだったけど、俺はそうじゃなくて。






どうしたら良いのか分からないけど、とにかく・・・瑠美に追い付きたかった。










それには、これしか思い付かなくて・・・





「“KONDO”か~・・・。

あそこは、新卒は大卒しか採用しないからな。

他の企業で中小企業だったら、そこそこ良い所に就職出来ると思うよ?」




「それだと、意味がないので・・・。」





新卒の人材紹介の会社・・・。

何社目か分からないけど、それくらい多く回っている。

瑠美のお兄ちゃんに聞いた所、人材紹介なら高卒でも紹介して貰えることもあるかもと・・・。





高卒予定の俺では、“KONDO”に応募することすら出来ない。

瑠美が大学進学をすすめていた理由が最近やっと分かった。





でも、溜め息をつくこともなく、俺はまた予約していた次の人材紹介の会社に向かう。





そして、そこでも同じようなことを言われ・・・別の企業をすすめられた。

大きな人材紹介からもっと小さな人材紹介の会社まで沢山回ったけど、高卒の俺を“KONDO”に紹介してくれる所は見付からない。





そろそろ、“KONDO”のエントリー締切日も・・・終わる。





でも、最後まで・・・





最後まで・・・





泳ぎきろう・・・。





最後まで泳ぎきってから、その時にまた考えればいい・・・。





そう思いながら、断られた人材紹介の会社のオフィスの扉から・・・





出ようとした。





出ようとした・・・





その、時・・・





















「待って・・・!!!」











と、急に腕を強く引かれた。




振り返ると、女の人だった。




「君、“KONDO”希望なんだって!?」




「はい・・・。」




「私、“KONDO”の担当してる!

さっき先輩に聞いた、高卒予定の子が来てたって!」




「はい、俺は高卒になるので・・・紹介は出来ないと言われました。」




「してるから!!私は!!!」




女の人が、そう言って・・・。




「紹介するだけなら無料だからね、バンバン紹介してる。

それで採用されればラッキーくらいな感じで、バンバン紹介してるから!!」




自分でそう言いながら、元気な感じで笑っていて・・・




「うちの会社は新卒の子との面談から、企業の窓口までエージェントが基本的にやってる。

それをやりながら、新規で企業に営業もしていくブラック企業!」




元気に笑いながらも、俺を凄い目力で見上げてくる。




「良さそうだね、書類通ればそのままいっちゃいそうじゃん!

履歴書、見せてみてよ!添削する!!

“KONDO”はなかなか辞退も出ないから、ここのエントリー逃すと次はない!!」




手に持った赤いボールペンを、クルクルと勢い良く回した。




「“KONDO”で初めての高卒採用、うちの会社が・・・私が取っちゃうかもね!!」


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