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「一成!!!」
次、目を開けたら・・・お母さんがいた。
泣きながら、死にそうな顔で俺を見ている。
じいちゃんが言うには、お母さんは肝っ玉が小さいらしいから。
お父さんについては・・・お腹を押さえながら泣いていて、じいちゃんが言うには、お父さんは胃に穴が空くらしいから。
そんなことを考えながら、俺は笑った。
笑おうとしたけど、上手く笑えなかった。
「おかあさん・・・」
掠れるような声で、お母さんを呼ぶ。
お母さんは泣きながら、笑いながら、俺を見ている・・・。
「るみは・・・?」
「瑠美ちゃん・・・?
家で待ってるんじゃない?」
「きてないんだ・・・」
「一成の彼女に言われてるから、仕方ないじゃない。」
お母さんが、そんなことを言い出して・・・
「かのじょ・・・?なに・・・?」
「知らないの・・・?
一成が彼女連れてきた日、彼女が帰る時に怒りながら瑠美ちゃんの家に来て。
“一成君と二度と連絡しないで”とか“喋らないで”とか“応援も来ないで”とか、言ってたわよ?」
そんな、俺の知らなかったことをサラッと言った・・・。
「私が一成のお母さんだって気付いてないからか、言いたい放題だったわよ?
“彼女がいる男に連絡とか常識ない”とか言ったり、“お母さんのくせに”とか。」
驚きすぎて、何も言えないでいると・・・
「子どもの恋愛に口出ししたくないから言わなかったけど・・・あの彼女とは別れた方がいいんじゃない?」
「・・・とっくにわかれてるよ。
あのあとすぐ、わかれてるよ・・・。
るみのこと、わるくばっかりいうから・・・とっくにわかれてる。」
そんな会話をお母さんとしていると、お父さんと先生が入ってきた。
見た目は酷いけど応急手当をして、命に別状はないとのこと。
もう少し様子を見てから、一旦帰宅となった。
今日は日曜日なので、明日また病院で詳しい検査をする。
アレルギーの可能性と言われ、今日と明日は何も食べず、水分だけ取るように指示が出た。
先生が出ていった後、ベッドに座りながらお母さんに言う。
「おかあさん、るみにでんわして・・・。
おれからだとでないかもしれないから・・・。
るみに、むかえにきてもらいたい・・・。
かえるまでにしんだら、もうあえないから・・・。」
*
お父さんとお母さんが廊下でコーチと話してくることになり、ベッドに腰を掛けながら自分の身体を見下ろす。
気持ち悪いくらい、真っ赤な大きなデコボコで埋め尽くされている。
全部、全部、全身に・・・。
瑠美を呼んで貰ったのはいいけど、こんな姿を見せたら・・・こんな気持ち悪い姿を見せたら・・・また、拒絶されるかもしれない。
何度も・・・
何度も・・・
そう考えたけど、俺はやっぱり瑠美に会いたい・・・。
俺は、瑠美に会いたい・・・。
瑠美に、会いたい・・・。
何度もそう思っていた時、
病室の扉が、開いた・・・。
そこには、瑠美が・・・。
息を切らした、瑠美が・・・。
さっき死にそうになったばっかりだけど、今はまた死にそうなくらい嬉しかった・・・。
そんな瑠美が、扉の所で涙を流した・・・。
瑠美が泣いたのは、俺のお母さんが救急車で運ばれた時以来だった。
でも、あの時と同じで・・・。
瑠美は泣きながらも、しっかりとした顔をしていた・・・。
俺は、瑠美を見て笑ってしまった。
だって、ばあちゃんにソックリだったから。
ばあちゃんにソックリな瑠美が、俺の所にゆっくりと歩いてきた。
そして、笑った・・・。
泣きながらも、笑った・・・。
「お帰りなさい、一成君。」
「天国一歩手前まで行って、帰ってきたよ。」
「電話でお母さんから聞いたよ。」
瑠美に震える手を伸ばすと、瑠美が両手でしっかりと握ってくれた。
「瑠美、あの日・・・変なの見せてごめん。」
「変なの?」
「俺の・・・下半身。」
「・・・なにそれ?いつ見せてたの?」
*
数日間に渡る検査の結果、俺は信じられないことに塩素アレルギーだった。
アレルギーの検査の結果、色んな項目で高い数値が出て、蕎麦・牛乳・小麦後・卵・何故かニンジン。
それ以外の食物でも、高い数値の結果が多く出た。
そして、食物以外でも・・・
「ゴムか・・・。」
ゴムの数値も凄い高くて・・・。
「俺・・・もう出来ないじゃん・・・。」
泳げなくなることより・・・そっちの方ショックだった。
俺はあの1回で・・・あの、1回で・・・
あの女子との1回で、終わりだった。
先生の話では、まずは体調を整えて・・・それから検査をしてアレルギーチェックをしていこうという方針だった。
でも・・・
「その直前に、俺・・・死ぬかもしれないじゃん。」
それに・・・
俺はもう・・・
どうやったら瑠美に追い付けるのか、分からなくなってしまった。
分からなくなってしまった・・・。




