表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/76

15

「あの人、誰?」




俺の家のダイニングテーブル・・・

たまに瑠美が座る席に、女子が座りながらミートソースのスパゲッティを食べている。




「“俺のお母さん”。」




「お母さんって?本当のじゃないでしょ?」




「本当に、する。」




不思議そうな顔を続ける女子を無視して、瑠美の料理を食べていく。

スパゲッティだけじゃなくて、サラダも、スープも、他にも何品も準備してくれている。




「こんなに食べられないんだけど。」




「俺が食べるから。

これくらい食べないと、泳げない。

もっと食べてもいいくらい。」





そう、言った時・・・





瑠美がリビングに入ってきて・・・





沢山のバナナと茹で卵を置いた。

そして、大きなマヨネーズも。





それを見ながら、笑ってしまった。

だって、完璧過ぎるから。

俺のことを、完璧に知り尽くしているから。





「本当に、一成君の“お母さん”なんですね。」





女子が瑠美にそう言って、瑠美が少し驚いた顔をした後・・・困ったように笑った。





「食器はこっちに置いて貰えれば大丈夫だから。

ゆっくりしてね・・・」





そう言った後・・・





「一成君、14時半には家出るんだよ?

忘れ物しないように。」




「分かってるって!」





瑠美を見ると、瑠美は・・・また悲しそうな顔で笑っていた。









俺の部屋の中・・・瑠美も入ったことのない俺の部屋の中、そこに女子がいる。

瑠美も入るリビングにいられるより、こっちの方がマシだった。




窓の端に立ち、瑠美の部屋の窓を見る。

瑠美は・・・いなかった。




スマホを確認しても、瑠美からの電話もメッセージもない。




「一成君・・・」




急に・・・女子が、俺に抱き付いてきて・・・




固まった・・・。




そういう感じのは、出来る気がしなくて・・・。




俺は、瑠美と・・・




瑠美と・・・




いつか、瑠美と・・・




出来ればと、思っていて・・・。




俺は、そう・・・思っていた。




瑠美は・・・?




瑠美は・・・?




瑠美の部屋の窓を見る・・・。




瑠美、こっちを見て・・・




俺を、見て・・・




俺、“付き合う”こと出来る・・・。




俺、“付き合う”こと出来るんだよ・・・。




もう高校生になったんだよ・・・。




“この子”って、何だよ・・・。




“この子”って、何だよ・・・。




俺だって・・・




俺だって・・・




“男”なんだよ・・・。









2人で裸になり、まあ・・・そういうことをした。

女子が準備万端で、避妊のも持っていたし、経験もあった女子に指導されながら、最後までしたけど。




ベッドに寝転がる女子をチラッと見て・・・

申し訳ないけど、何とも思わなかった。

同じ女の子の身体なのに、中学1年の時の瑠美の身体の方がずっと綺麗で・・・




ずっと、ずっと・・・




「まだ元気だね?もう1回する?」




女子にそう言われ、自分の下半身を見下ろす。




「時間ないから、シャワー浴びてきて。

1階降りて、勝手に探して勝手に使っていいから。」




女子が部屋を出たのを確認して、俺はすぐにスマホで瑠美に電話を掛けた。




『・・・もしもし。』




「瑠美、部屋?」




『うん・・・。』




「窓、立って。」




『彼女は・・・?』




「今いないから、早く。」





瑠美がいつものように窓の所に立ち、瑠美が見えた。

瑠美はスマホを耳に当て、驚いた顔で俺を見ている。





俺が、裸だから・・・。

俺の身長と窓の高さ的に、下半身のソコまで見えてる。

俺が“男”である1番の証で・・・“男”になっている状態でもある物を隠さず立っている。






驚いている瑠美に、言う。






「俺、あの女子と・・・そういうことした。」




『・・・そんな報告いらないよ。』





そう言いながらな、瑠美が窓からいなくなった。





「瑠美、俺・・・高校2年生になった。」




『・・・。』




「日本選手権で3位になった。」




『・・・。』




「女の子と付き合えるし、こういうことだって出来る。」




『・・・。』




「8月23日・・・俺の誕生日のジュニアオリンピックで、俺は1番高い表彰台に上がるから。」




『・・・。』




「そしたら、聞いてほしいことがある。」




『・・・。』




「応援、来て。

誰よりも速く泳ぐから。

誰よりも速く泳いで・・・瑠美に追い付くから。」




『もう・・・とっくに追い抜いてるのに・・・っ』




「まだだよ・・・。

でも、今回は追い付くから。

絶対、追い付くから・・・。

応援、来て?」




『・・・。』




「瑠美、頼むよ・・・応援来て。」














瑠美は、何も言ってくれない・・・。










それに、焦る・・・。










「瑠美・・・?」




『・・・。』




「瑠美、何か・・・言ってよ。」




『もう・・・電話、しないで。』





そう言って、電話が・・・切れた。





瑠美から、こんなことを言われたのは・・・初めてで。

スマホを耳に当てたまま、動けずにいた。




その後は・・・




ずっと、放心状態で・・・




何か、誰かに言われたような気はしたけど・・・




暗くなってからも、ずっと・・・




そのまま、瑠美の部屋の窓を見ていた・・・。




明かりのつくことがなかった、瑠美の部屋の窓を・・・。









「一成、どうした?

タイム・・・落ちすぎだろ。」




コーチが怒ったような顔で俺を見ている。

あの日、初めて練習に行かなかった。

行かなかったというか、動けなくなっていたから、練習のことなんて忘れていた。




あの日から、タイムが落ちていた。




「今日・・・残っていいですか?

ジュニアオリンピック、絶対に表彰台・・・上がりたいので。」




コーチが少し悩んでいる。

データを確認しながら、悩んでいる。

無理な練習の仕方も、身体を壊すから。




「お願いします!!!」




コーチに頭を下げると、渋々認めてくれた。




泳ぐしかなかった。




表彰台に、1番高い表彰台に上がって・・・




この前のことを謝るしかなかった。




あんな変なことをして・・・




あんな、変なモノを見せて・・・。




好きでもない男のなんて、気持ち悪かったと思う・・・。




あれから、ずっと無視をされている。

電話だけでなくメッセージも、家に行っても部屋に入ってしまって・・・。




ご飯も・・・作ってくれなくなった。




瑠美が、消えてしまった・・・。




瑠美が、消えてしまった・・・。




俺のレーンから、消えてしまった・・・。




消えてしまった・・・。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ