13
そう、思っていた・・・
そう思っていたのに・・・
6月、選手コースの練習が終わり21時・・・
俺は、全速力でまた走っていた。
全速力で走り、走り・・・
「瑠美!!!!」
家の門を閉めた後に扉に向かおうとしている瑠美の腕を、思いっきり引いた。
瑠美が驚き、俺を振り返る。
「誰!?その人、誰・・・!?」
瑠美の隣に並んで立つスーツ姿の男をチラッと見てから、瑠美に聞く。
瑠美が家に男を入れるなんて初めてだったし、しかも夜に・・・
しかも金曜日だし・・・
それに・・・
「酒、飲んだ・・・?」
「うん、少しだけ・・・。」
瑠美からも・・・少し驚いている隣に立つ男からも酒の匂いがする。
「瑠美ちゃん、この子・・・中田一成?
結構取り上げられてるよね?」
隣に立つ男が、瑠美のことを“瑠美ちゃん”と呼ぶ。
その男を睨み付けながら、口を開こうとした時・・・
瑠美の両手が俺の目を覆った。
「怖い顔しないでよ。
同じ法律事務所で働いてるの。」
そう言いながら、瑠美はゆっくりと俺の目から両手を退けた。
そして、隣に立つ男を見上げて笑った。
「この“子”、隣の家の“子”なの。」
そう言って、俺を少し見てから困ったように笑い・・・
男と一緒に・・・
家の中に、入っていった・・・。
“早く彼氏作りなよ”
そう言った・・・。
俺は確かにそう言ったけど・・・。
それは、こういう意味でなくて・・・。
そう聞こえたかもしれないけど、そういう意味じゃなかった・・・。
俺と、付き合ってほしくて・・
そう言ったのに・・・。
俺の窓から、今日も瑠美の部屋を見る。
でもカーテンは閉められていて、部屋の明かりが漏れている・・・。
苦しい・・・。
苦しい・・・。
何故か、瑠美は俺を部屋に入れてくれなくて・・・。
俺は1度も入ったことがないし、瑠美も俺の部屋に入ることはない。
窒息しそうになる・・・。
窒息しそうになる・・・。
それくらい、苦しい・・・。
苦しい・・・。
震える手で、瑠美に電話を掛ける。
出ないかと思ったら、すぐに出て・・・
『もしもし?』
「瑠美、あいつ誰・・・?」
『あいつとか言わないの。』
「あの人、誰だよ・・・っ」
『同じ法律事務所の人。
ごめん、今日はもう・・・。
またメッセージ送るね。』
「瑠美・・・っ!!!」
瑠美の名前を呼んだけど、呼んだけど、電話が切れて・・・
切れて・・・
「マジかよ・・・っ」
瑠美の部屋の電気が、消えた・・・。
「・・・あぁ・・・っ」
両手で頭を抱え、その場にしゃがんだ。
手が震えて・・・
息が上手く吸えない・・・。
苦しい・・・。
苦しい・・・。
窒息する・・・。
窒息する・・・。
置いていかれてしまう・・・。
瑠美に、置いていかれてしまう・・・。




