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「おじゃまします!!」




玄関に入ると、中田部長が大きな声でそう言うので笑ってしまった。




部屋の部分は7.5畳、1Kの部屋なので・・・中田部長が部屋の中に入っただけでも一気に狭くなったように感じる。





「中田部長、洗面所こっちなので・・・。」





鞄を受け取り部屋の隅に置いた後、中田部長を洗面所に案内・・・というか、洗面所に扉もないような部屋なので、洗面台と少しの脱衣スペースがあるだけ。





そこに連れていき、新しいタオルを準備する。

その間に中田部長が手を洗い・・・念の為確認すると、泡のハンドソープではなくて無添加の固形石鹸の方で洗っていた。





その光景を真剣に眺めた後、手を洗い終わった中田部長にタオルを差し出す。





「無添加の洗濯洗剤で洗っていますので。」





そう伝えると、中田部長が驚いた顔をしていて・・・黙ったまま頷き手を拭いていた。





「夜、何か食べたんですか?」




「まだだけど、大丈夫!」




「何も大丈夫ではないので、簡単ですが作ります。」





部屋の中のローソファーに座り、キッチンに立つ私を見ている中田部長に念のため聞く。




「食べられない物、何ですか?」




「俺は、食べられない物が沢山あるんだよね。」




そんな答えが返ってきて・・・私は頷いてから1人暮らし用の小さめな冷蔵庫を開ける。




ジャケットを脱ぎブラウスの袖を捲りエプロンをしながら、中に入っている食材を確認してから、簡単に料理をしていく・・・。




本当に簡単で申し訳ないけど・・・。




パパっと作り、中田部長の前にあるローテーブルに置いた。




念のため、説明していく。




「白米と煮込みハンバーグ、それと野菜スープです。

煮込みハンバーグは牛肉と玉ねぎ、つなぎは何も使用していません・・・ちなみに、冷凍保存していたものです。

トマト缶と、あとは離乳食から使えるコンソメと1歳から使えるケチャップを入れてます。

野菜スープはキャベツとコーンで、離乳食から使えるコンソメと和風だしを使ってます。」




私の料理は、“普通”の人が食べたらそこまで美味しくない。

それは分かっているけど、どうしてもこういう料理が止められない。




「食べられそうですか?」




「たぶん・・・。」




中田部長が頷き、両手を合わせてから来客用のお箸でゆっくりと食べ始める。

念の為、スマホを握り締めた・・・。




無言でゆっくりと食べる中田部長を見てから、忘れていた飲み物・・・ミネラルウォーターをコップに入れて出した。




それからは、中田部長の真正面に座り・・・

時間を掛けて食べる中田部長の姿をよく観察しながら、私はスマホを握り締めていた・・・。




「ご馳走さまでした・・・。」




「はい・・・。」




中田部長がご飯を食べ終わってから、また2人で無言になる・・・。

食器を片付けるでもなく、私は中田部長の姿を真正面から見て・・・中田部長も私を無言で見詰め続け・・・




お互い、見詰め合ったまま・・・




見詰め合い続けたまま・・・




30分が、経過した。







時計を確認したら、23時になろうとしている。




「そろそろ、帰りますか?」




「もう少し・・・。」




「そうですか・・・。」




気まずい雰囲気の中、食器を片付ける。

スマホはエプロンのポケットに入れたまま、食器洗いをしながらも何度か中田部長を確認した。





中田部長は真正面を向いたまま、動かず大人しく座っていて・・・





食器洗いが終わった後、ゆっくりと中田部長の目の前にまた戻った。





しばらくすると、中田部長の表情が少し穏やかになり・・・





「ご飯、ありがとう。」




「いえ・・・。」





それで、また無言になったかと思ったら・・・





中田部長が、甘い整った顔で・・・真面目な顔をして、私を見詰め・・・
















口を開いたかと思ったら・・・



























「俺と、結婚してください。」











と・・・。

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