表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/76

10

俺は、お腹が空いていた。

引っ越してからお腹が空かなくなっていたのに、死ぬほどお腹が空いていた。




「一成君、大盛り?」




「大盛り!!!」




プールから帰り、台所で瑠美の隣に立つ。

瑠美が白米を皿によそってくれるけど、そんな物じゃ全然足りなくて・・・




「もっと・・・?」




「俺、引っ越してくる前は丼で食べてて・・・その後に釜のご飯も釜ごとしゃもじで食べてたんだよね。」





驚かれたり、笑われたりするかと思ったら・・・瑠美は真剣な顔で俺を見た。






「大きくなるね・・・。

いっぱい食べな、身体が求めてるから。」






そんな、ことを言ってくれた・・・。

じいちゃんとばあちゃんだけが言ってくれたことを、言ってくれた。







それに、俺は笑って頷いた。







そして・・・









「こんな、夢みたいな食べ物・・・!!!」









目の前に出してもらったカツカレー、それも大盛り・・・山のようになっているカツカレーを見て、興奮していた。









それに、瑠美は面白そうに笑っていて・・・









プールに行く前より、よく笑うようになっていた。








出してくれたスプーンで、カツカレーを沢山すくい一口食べ・・・










「・・・うまっっ!!!!」









それだけしか言えず、一気に食べ進める。

途中で瑠美がコップギリギリに注いでくれた牛乳と、その隣に牛乳パックごと牛乳を出してくれた。









それも何杯も飲みながら、俺はカツカレーをあっという間に完食。









瑠美は笑いながら、また少しずつカツカレーを食べていて・・・。

立ち上がったと思ったら、冷蔵庫から何かを持ってきてくれた。









「今、ご飯また炊いてるから。

それまで、それ食べてて?」









そう言って出してくれたのは、プリンだった。

前の地域の店でも売っていた、メジャーなプリン。









甘いのはそこまで食べなかったけど・・・









「そのプリン、私好きなんだよね。」









そう言って笑う瑠美は、可愛かった。

少し前までは“お姉さん”としか見えなかったのに、凄い可愛いと思った・・・。











小学校3年生 夏




「一成!やっと選手コース来たな!」




初日の選手コースの練習が終わり、更衣室で先輩に話し掛けられた。

本当に、やっとで・・・。




翌日から、お父さんにお願いをして瑠美の通う水泳スクールに通わせてもらった。

俺は速いからすぐに選手コースというのになれるかと思ったら、そうではなかった。




俺の泳ぎを見た先生達から驚かれたけど・・・。

その後に先生達が集まり、何かを話し合っていた。




その時、選手コースで朝から泳いでいた瑠美が・・・

練習の途中なのにプールを上がって先生達の所に歩いていき・・・。




先生達と何かを話し、またプールに入っていった。




瑠美は、平泳ぎという泳ぎ方の選手だった。

水着姿の瑠美は、やっぱり誰よりも綺麗で・・・

誰よりも綺麗な平泳ぎというのをしていた。




そんなことを思っていたら、先生達が数人で来た。




そして、じいちゃんから教えてもらった泳ぎ方・・・クロールという泳ぎ方を凄い直された。

何度も何度も直された・・・。




じいちゃんを否定されているようでショックだった。

でも・・・選手コースで泳ぐ瑠美を見て、泳ごうと決めた。




俺は、追い付く。

俺は、瑠美に追い付く。




そしたら瑠美に、“俺のお母さん”になってもらうんだ。




普通コースの練習、俺だけ毎日通うようになり選手コースのみんなと同じ時間まで泳いだ。




帰り道、自転車に乗る瑠美の横に並び俺は走った。




俺のTシャツにも、背中に書かれていた。




瑠美の背中と同じ文字が。




“努力に勝る才能はない!”




と・・・。




「一成、どの泳ぎ方もすぐにマスターしてたのに、先生達やたらと泳ぎ方直してたよな?」




水泳を始めたばかりの頃を思い出していたら、先輩からまた話し掛けられた。

本当に、そうで・・・。

何でもすぐに泳げるようになったのに、先生達から凄い直されていた。




「もう3年生になっちゃったよ!」




「それでも大会で結果出しまくってるから、将来が怖いよなー。

俺、年齢近くなくてよかったよ。」




そう言いながら、先輩が・・・高校生の先輩が笑っている。




「そういえばさ、一成って“瑠美たん”と隣の家なんだろ?」




先輩が、急に・・・“瑠美たん”と、言った。




そしたら、周りで着替えていた他の先輩数人が、集まってきた。





「“瑠美たん”と一成、仲良いよな!?

普通コースにいた時から毎日“瑠美たん”と帰ってたし!」




「うん・・・。

“瑠美たん”って、なに?」




「誰だっけ?誰かが言い出してから、陰で“瑠美たん”になった!

本人には秘密だから、言うなよ!?」




「うん・・・。」





なんだか、凄くモヤモヤとした。





そしたら・・・





「“瑠美たん”の水着の下、見たことある!?」





そんなことを聞かれて・・・。

他の先輩達も大笑いしながら、それでも俺を見ていて・・・。




「うん・・・。」




と、答えてしまった。

そしたら凄い盛り上がって・・・。

色々と質問責めにされ、答えたことを後悔した。




「見たって言っても、小学校1年生の時に1回だけだから・・・。」




「それだと・・・“瑠美たん”中1か!

どんなだった!?」




「・・・1回見ただけだから。

水着に着替える時。」




「水着!?更衣室!?」




「うん、区民プールで。」




「それなら2回だろ!!

また服に着替える時、そっちでも見ただろ!?」




「・・・その時は、タオル巻きながら着替えてた。」




「ふーん・・・。

じゃあ、1回だとあんま見てない?

色とかは、色!!!」




先輩が大きな声で聞くと、他の先輩達がまた大声で笑い・・・まだ俺の方を見ている。




「色って?」




「こことかさ~!!」




と、言って・・・自分の両方の胸の乳首を触った。

それにまた先輩達が大笑いして・・・




「一成、顔赤っ!!

3年生だと、余裕でそういうの興味あるからな!!!」




そんな指摘をされ、恥ずかしくなった。




「で、何色だった!?」




「知らない、そこまで見てない!」




「絶対見てただろ~!!!」




先輩達が大笑いしながら、まだ“瑠美たん”の話を続けていた。

凄く、モヤモヤした。

凄く、凄く、モヤモヤした。









「一成君!赤信号!!!」




自転車に乗る瑠美の隣で、さっきの会話を思い出しながら走っていたら・・・赤信号を渡るところだった。




「珍しいね、疲れた?」




「疲れてない。」




そう答えながら、自転車に乗る瑠美を見る。

中学3年生になった瑠美。

7月の大会では今までで1番良い結果だった。




中学1年生の時は眉毛の所でパッツンだった前髪が、今では伸びて・・・耳くらいの長さになってオデコを出していた。

髪の毛も全体的に長くなって、黒い真っ直ぐの髪の毛が背中につきそうになっている。





その髪の毛がまだ濡れていて、夜の街のライトや車のライトで光っているように見える。

色白な瑠美の顔が、暗闇に浮かび上がる・・・。





白いTシャツは、中学1年生の時より・・・胸の所が膨らんでいるのに気付いた。





また、顔を見てみると・・・瑠美は可愛かった。

毎日可愛いなと思っていたけど、瑠美はやっぱり可愛かった。





「瑠美、最近メガネやめたよね。」




「うん・・・どう?」





瑠美が照れたように笑いながら、俺を見る。

その顔が、凄い可愛かった。





でも、何も言えなかった。





「俺は、メガネあった方がいい。」




「そうなんだ・・・。」





少し驚いた瑠美が、すぐに笑って頷いた。





「じゃあ、またメガネしようかな。」




「うん・・・。」





そう答えた時、赤信号から青信号に変わった。

瑠美が前を向き、また自転車を漕ごうとした・・・

















瑠美の後ろ姿を見て・・・















咄嗟に、掴んだ・・・。

















瑠美のTシャツの腕の所を、少しだけ・・・










少しだけ、親指と人差し指で、掴んだ・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ