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昨日よりも速く、離れ小島までついた。

そして、休憩をすることもなく、また砂浜を目指す。




全身に海の流れを感じ、全身で海の流れを掴み取り、両手で流木の動きも・・・。




またすぐに砂浜まで戻ってきて、流木を抱え素っ裸のままじいちゃんの所に戻ってきた。




「昨日より速いでしょ!?」




「早かったなぁ、一成。

でも、俺の若い頃はもっと速かった。」




「明日はもっと速くなるよ。」




「明日は、流木なんて掴まらないで泳げ。

その身体だけで泳いでみろ、一成。」




じいちゃんがそう言って、ランニングの白い肌着を脱いだ。

じいちゃんは外でもランニングの白い肌着だけ着て、そこに腹巻きをしている。

しかも、ズボンも履かずトランクスで出掛けている。





その肌着も腹巻きも、トランクスも全て脱ぎ捨てた。






「来い!一成!泳ぎ方を教えてやる!」






いつもよりハッキリと大きな声で、じいちゃんが俺を呼んだ。







「俺は水泳選手だったからな。

タダで教えてやるの、ありがたいと思え!」











夕暮れの中、また原付の前に立ち、じいちゃんの運転で家まで帰る。




「腹減ったかぁ、一成。」




「お腹空いて死にそう。」




「いっぱい食え、食った分だけデカくなる。

一成のお母さんはデカいからなぁ。

良い遺伝子の女を見付けたよ、俺の息子は。」




「お父さんも大きいじゃん。」




「こればっかりは、どっちに似るか分からねーからなぁ。」





そう言ってから、じいちゃんがしばらく黙った。

俺は気にせずに、また身体全身で風を掴んだいた。





その時、じいちゃんが小さな声で呟いた。





「お母さんに、会いたいなぁ。」




「じいちゃんの、お母さん?」




「“俺のお母さん”。

一成からしてみたら、おばあちゃんだなぁ。」




「ばあちゃんか。

じいちゃん、ばあちゃんのこと大好きだもね。

毎日電話してるし。」




「大好きだなぁ。会いたいなぁ。」




「お母さんが赤ちゃん産んで、しばらくしたらじいちゃん帰れるでしょ?

あと少しじゃん。」




「本当は毎日会いたいからなぁ。

俺は“お母さん”がいないと、生きていけないんだよ。」





そんな大袈裟なことを言うじいちゃんに、笑ってしまった。





そしたらじいちゃんが、言った・・・。










「一成も、“俺のお母さん”みたいな女と結婚しろぉ。」




「ばあちゃんか、優しいもんね。」




「優しいだけじゃない。

“俺のお母さん”は肝っ玉の据わった女だからなぁ。

一成は俺にソックリだから、“俺のお母さん”みたいな女が良いぞぉ。」




ばあちゃんは、俺にはただ優しいばあちゃんで・・・。

たまにしか会えないけど、その時は優しいとしか思ったことがなかった。




どう肝っ玉が据わっているのか分からず、聞こうとした時・・・




また、じいちゃんが言った・・・。




「追い付けるようで追い付けない、そんな女がいいぞ、一成。」




そんな難しいことを言ってくる。




「一成も弱っちいからなぁ。

女に尻叩かれるだけじゃ動けねぇから、好きな女が常に前にいてくれたら、死ぬ気で追い付こうとするだろぉ。」




「俺、弱くないから!

そんなことしなくても、俺は強いし速い!!」




「それは見物だなぁ!

先に天国で酒飲みながら、見下ろしてるからなぁ!」





じいちゃんが大声で笑い、その笑い声が暗くなりそうな空に昇っていった・・・。

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