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「一成!すげーっ!!!」
人数の少ない小学校。
体育の授業は全校合同で、そんな中・・・1年生の俺がぶっちぎりでゴールをした。
みんなから歓声が上がるけど、別に何も嬉しくなかった。
いつも通り走っていただけだから。
小学校までも遠いらしいけど、俺は最初から走って通学していた。
遠いと感じたこともなかった。
足の裏に大地を感じながら、小学校の校庭を順番でもないのにまた走り回る。
「一成、裸足で本当に痛くないの!?」
友達に毎回驚かれながらも、俺は常に裸足だった。
地面の感覚が足の裏によく伝わってきて・・・その方がどんな場所でもどんな道でも速く走れた。
「あ!!一成のおじいちゃんだ!!!」
走り回っていた時、そんな声が聞こえた。
校門を見てみると、原付に乗りタバコを咥えたじいちゃんが手を振っていた。
俺は全速力でじいちゃんの元へ走り、勢いにのったまま校門を駆け上がるように登り、両足で校門の上に立った。
その場にしゃがみながら、じいちゃんを見下ろす。
「じいちゃん、また買い出し!?」
「おぉ、お母さんは免許持ってないからなぁ。
都会のお嬢ちゃんだから。」
「お母さんお嬢ちゃんって感じじゃないよ!」
「俺からしたら、お嬢ちゃんだなぁ。
バレーだかなんかで全国行ってたかもしれないけど、強くないしな。」
「昨日お母さんのビンタ恐れてたじゃん!」
「バレーやってた奴のビンタは恐いからなぁ。
でも、お母さんは肝っ玉は小さいから。
実際良い所のお嬢ちゃんだし、そうなったんだろうなぁ。」
「肝っ玉って何?」
「肝に宿る魂のことだなぁ。
肝にどのくらい強い魂が宿ってるかで、肝っ玉の大きさが変わるんじゃねーか?」
「俺は?肝っ玉大きい!?」
「一成は、ちっちぇーなぁ。
俺に似てるから、こーんなちっちゃいと思うぞ~?」
じいちゃんがそう言って、人差し指と親指で丸を作り・・・凄い小さくした。
「絶対嘘だよ!!俺、強いじゃん!!!」
「一成なんて弱っちいぞぉ。
俺にソックリだからなぁ。」
初めて、じいちゃんに似ていることが嫌になった瞬間でもあったけど・・・
「一成!また明日!!」
「うん!また明日!!!」
学校まで原付で迎えに来たじいちゃんの前に立ち、全身で風の感覚を掴みながら進んでいく。
お母さんは“ノロノロ運転”と言っていたけど・・・
家の周りや学校の周りを抜けてから、じいちゃんは結構スピードを出す。
「じいちゃん!!!
俺、やっぱりじいちゃん好き!!!」
「一成は頭のネジが数本吹っ飛んでるからなぁ。
俺にソックリだぁ。」
そう言って、じいちゃんがもっとスピードを上げていく。
自分で走るだけでは感じられないこのスピードに、俺の身体の中が騒ぎ出す。
「風の感覚を掴め、一成。」
「掴んでる!!!」
「一成は、大物になるなぁ。
大物になる奴は、昔から決まってる。
頭のネジが1本も2本も・・・沢山吹っ飛んでるような奴なんだぁ。」
*
そして、海に着いた。
じいちゃんはタバコを吸いながら、砂浜にあった流木を持ち上げ・・・海の中に投げた。
「行ってこい、一成!」
「うん!!!」
俺は素っ裸になり、海の中へ。
そして、その流木に掴まり泳ぎ始めた。
目指すは、向こうに見える離れ小島まで。
波に揉まれながら、その波を全身に感じながら、俺は身体を動かす。
流木が動く感覚も両手で掴み取り、全身で海の水を感じ取る・・・。
足なんてとっくにつかないけど、怖くもなかった。
じいちゃんは俺のことを弱いと言ったけど、俺は絶対に強い。
だって、何も怖くない。
俺の身体1つで、俺はどこにだって行ける。
俺はどこまでも、行ける。
俺は、強いし・・・
俺は、速い・・・。




