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婦人科で・・・何でか分からないけどお小水を取った。
これまでの検査ではしたことがなかったから、これが何になるのかは分からないけど・・・。
一成と笑ったら、気持ち悪さが少し良くなったようにも思う。
一成らしい感じ満載だったけれど、そんな一成に感謝をしながらトイレを出たら・・・
もう、目の前の壁の所に立っていて・・・
「そんな所に立ってたら、他の女の人が入りにくいから!!
出たらビックリするし!!」
「だからか、さっき凄いビックリされて話し掛けられた!」
「それは・・・また違う驚きだとは思うけど。」
そんな会話をしながら、また呼ばれるまで待合室へ。
待合室の席は埋まっていて、明らかにみんなに見られているけど・・・仕方ないので壁の方に一成と2人で立っていた。
「瑠美、大丈夫?」
「一成が笑わせてくれたお陰で、少し気持ち悪いの良くなった。」
「それは良かった・・・。
あれ、何の検査?」
「分からない。私も初めてやった。」
私が答えると、一成が深刻そうな顔で下を向いた・・・。
そして、顔をゆっくりと上げ・・・
「俺、瑠美が死んだらもう生きていけない。」
「そんな大袈裟な・・・。」
「いや、大袈裟じゃなくてマジで。
マジで生きていけないから、俺。
それに、俺が死ぬ時に瑠美が目の前にいてくれないと、俺死ねないから。」
「私の方が年上なんだから、順番的に私の方が先に死ぬんじゃない?」
「死ぬとか言わないで・・・。
大丈夫だよ、女の人の方が寿命長いし・・・俺のじいちゃんより、ばあちゃんの方が長生きしてるし。」
急に一成のおじいちゃんとおばあちゃんの話が出て来て、笑ってしまった。
「おばあちゃん元気なの?
全然こっち来てないでしょ?」
「元気だよ・・・じいちゃん死んでも、ばあちゃん元気なんだよ。
女の人って、強いよな・・・。
俺、瑠美いなくなったらマジで無理。」
「一成なら大丈夫だよ、もう泳げるようになったし。」
「・・・っ泳げなくなるから!!!」
急に、急に、一成が大きな声を上げて・・・
私は驚き、一成の腕を叩く。
一成は少し深呼吸をしてから、チラッと周りを見て小さな声で続けた・・・。
「俺、瑠美がいないと泳げなくなるから・・・。」
「そんな弱気で、ダメだよ。
もう・・・明日には、明日には、戻るんだから。」
笑いながら一成を、見上げる。
「“中田部長”と“伊藤さん”に、戻るんだから。」
「まだ・・・今日は終わってない。」
「そうでした・・・。」
「最後の追い上げがある。
瑠美は、俺より最後の追い上げ凄かったよ。
他の人より身体が細いのに、どこにあんなパワーが残ってたのか不思議なくらい、最後の追い上げが凄かった。」
「大会ではいつも・・・一成のことを思いながら泳いでたからね。」
自分で言って自分で笑いながら、一成を見上げる。
「小学校1年生の“一成君”に追い付かれないように・・・最後の方でいつもそれを思い出して、慌てて全力で泳いでた。」
笑って言う私を、一成が驚いた顔で見ている。
そして、嬉しそうに笑って頷いた。
「俺もそうだよ。
そうやって、俺も泳いでるから・・・。
だから、瑠美がいなくなったら俺は泳げなくなる。
だから、俺は・・・泳げなくなった・・・。」
「泳げなく、なった・・・?」
そう、聞いた時・・・
私の名前が呼ばれ、また一成に手を繋がられ診察室へ入った。
診察室に入り、またさっきと同じ椅子に私は座った。
一成は何故か私の横に立っていて・・・
「先生・・・」
と、先生に話し掛け・・・
私だけでなく、先生も看護士さんも不思議そうに一成を見る。
「瑠美、死んだりしませんよね・・・?」
そんな質問を大真面目にしていて、また診察室に笑い声が響いてしまう。
でも、先生が先に笑顔から真面目な顔になり、一成を見上げた。
「命を、かけることにはなります。」
そんな、ことを言って・・・
私も一成も、固まる・・・。
固まっている私と一成を交互に見ながら、先生が笑った。
そして・・・
「おめでたです、伊藤さん、中田さん。
妊娠9週目、3ヶ月です。」




