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一成の姿を見て、もう苦笑いしか出来なくて・・・。
そして、こんなに人が多くいる中、一成は真っ直ぐと私の方に向かってきた。
「もう診察終わってる?」
私の目の前に立ち、いつもより小さな声だけど、静かな待合室の中では丸聞こえで。
私は苦笑いを続けながら、無言で首を横に振った。
「よかった。瑠美呼ばれたら、俺も行くから。」
そんなことを言って、待合室をキョロキョロとして・・・
旦那さん達が立って待っているようなスペースに、一成も立ってしまった。
総合病院の婦人科、妊娠初期から中期くらいまでは婦人科の方で、それ以降は産婦人科になる。
婦人科の受診は妊娠だけではないけれど、それでもマタニティマークをつけている女の人も多くいて。
旦那さんも一緒によく来ていて・・・。
昨日までだったら、一成が来たことにそこまで気にしなかったかもしれないけど・・・。
今日の朝、一成は何回かニュースで取り上げられていた。
高校2年生の時、日本選手権で3位になった時は大々的に取り上げられ・・・。
見た目も良い一成は凄く話題になり・・・
そして、塩素アレルギーでリタイアしたことも、取り上げられていた。
そんな一成が、“KONDO”の名前を背負って競泳に復帰することになり・・・
それも、タイムは既に現役の頃に近付きつつあって。
それもあって、今日の朝のニュースでは取り上げられていた。
そんな一成が、婦人科の総合病院に・・・
“KONDO”のウェアを着て、旦那さん達が立つスペースに立っていて・・・。
大きな一成は、目立つし・・・
それに、やっぱり格好良いから・・・
女の人達も漏れなく全員見ているし・・・。
それに苦笑いを続け、ずっと確認していなかったスマホを開いた。
一成からのメッセージも着信も沢山あったけれど、一先ず置いておいて・・・
法務部長の会社用スマホに、メッセージを送信した。
《お疲れ様です。
具合が悪く、元々通院していた総合病院の婦人科に来ています。
中田一成が心配して来てくれたのですが、うちの会社のウェアを着て現れました。
他の旦那さんが立つようなスペースに一緒に立ち、私の診察に一緒に入るそうです。
念の為、ご報告致しました。》
部長なら意味も分かってくれるはず。
副社長まで話も持っていってくれると思うので、あとは会社に任せることにする。
それに少しホッとした時、私の番号が呼ばれた。
ゆっくりと立ち上がり一成を見ると・・・すぐ目の前まで来ていた。
そして、すぐに私の手を取ると、優しく手を繋ぎ・・・診察室までの道を一緒に歩き、診察室の扉を開けてくれた。
“1人で大丈夫”
そう思っていたけど、一成が一緒にいてくれると・・・やっぱり心強かった。
診察室に一成と入ると、女の先生も看護士さんも驚きながら一成を見ていて・・・。
それには、私も苦笑い。
女の先生にすすめられ、一成が私の斜め後ろにある椅子に座った。
先生がそれを確認してから、笑いながら私の方を向き・・・
「伊藤さんのお相手、中田一成さんだったの?」
「私さっきネットニュースでも見ました~!」
女の先生も看護士さんも、少し興奮したように言ってくるので・・・それにも苦笑いで頷いた。
「伊藤さん、どう?生理来た?」
「今回もダメでした。
また精神的なものかもしれません。
最後のピルでの生理も2日で終わってしまって。
少し出血しただけで。
今月生理も来ませんでしたし・・・あと、気分の落ち込みや気持ち悪さもあって・・・。」
少し呼吸を整え、震える口を無理矢理でも開いた。
「先生、心療内科へ・・・お願い出来ますか?」
「う~ん・・・」
先生が何かを考えながら、カルテを見ている。
そして、私を見た・・・その後に一成をチラッと見て。
また私を見たかと思ったらすぐにまた、一成を見た。
何故か私ではなく一成を見ながら・・・
「お小水、取ってみよう。」
と、言うので・・・
「俺ですか・・・?」
と、一成が答えてしまい・・・
診察室の中は笑い声に包まれてしまった。
私は笑ったまま一成と診察室を出て、カップを持ち女子トイレへ向かった。
その間中、また一成は手を繋いでくれていて・・・
「あれ、俺が悪いやつ!?」
「だって一成なわけないじゃん。」
「俺もそうは思ったけど、あんなに見られながら言われたらそうなるって!!」
静かな待合室と廊下で、他の患者さんに申し訳ないけど2人でいつも通り話してしまって・・・
「一成、ここ女子トイレだから・・・っ」
「・・・やべっ!!」
女子トイレの扉にまでついて来る勢いだったので、慌てて直前で言った。
それに2人で笑い、一成を見上げる。
「待合室で待ってて?」
「瑠美いないなら、そんな所で待ってても意味ないから。」
そんなことを結構大きな声で言って・・・扉も少し開いていたので、中にいた人も少し驚きながら笑っていた。




