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そして、12月3日に・・・。
私の誕生日の日になった。
昨日も一成からメッセージや電話も掛かってきたけど、昨日は何も返せなかったし、電話にも出られなかった。
何かを言ってしまいそうで・・・。
何かは分からないけど、何かを言ってしまいそうで・・・。
怖くて、途中からはスマホはずっと鞄の中に入れたままにしている。
「瑠美、お母さんも行こうか?」
病院に行く支度をしてリビングを通ると、お母さんが心配そうに聞いてくれた。
「大丈夫、この歳でお母さんと病院とか恥ずかしいよ。」
「でも・・・瑠美がそこまで具合悪くなるの、なかったし。」
「たぶん、精神的なもの。」
「瑠美が?精神的なもの!?」
お母さんが驚き・・・大笑いをしている。
「本番に強い瑠美が、精神的なものって・・・ごめん、面白くて。」
「本番に強くないでしょ?
水泳の大会だって、そこまで結果残せなかったし。」
「でも毎回自己ベストは更新してたわよ?
毎回、本当に毎回。
練習より随分早かったじゃない。」
「そう言われると・・・そうだけど。
でも、弱かったらしい。
私・・・弱かったらしいよ。」
お母さんがまだ笑いながら、私を見ていて・・・
「あんなに本番に強くて、弱いも何もないでしょうが。
お隣の一成君もよく言ってたわよ?
“瑠美のハートの強さだけには敵わない”って。」
一成がそんなことを言っていたと知らず、笑い続けるお母さんを見ながら・・・どんな感情になっていいのか分からないまま、病院に向かった。
総合病院・・・
前回と同じ木曜日、木曜日は女の先生がいるから混むのかもしれない。
今日も座りきれないくらい多くの人がいる待合室の中、具合の悪い今日は申し訳ないけど、席を必死に確保して座っていた。
その間、鞄の中のスマホが何度か震えたような感じがしたけれど・・・
確認するのも怖いくらいだったので、そのままにしていた。
そして、数十分、気持ち悪さを我慢して待ち続けていた時・・・
待合室に続く廊下から、少しだけ喋り声が・・・
女の人数人の声が聞こえるなと思っていたら・・・
思っていたら・・・
思っていたら・・・
現れた・・・。
待合室にいたみんなが注目しているのが分かるくらい、注目されながら・・・
現れた・・・
現れてしまった・・・
一成が、現れてしまった・・・。
今日、朝のニュースで何度か取り上げられていた一成が・・・
総合病院の婦人科に、大きく“KONDO”と書かれた格好良いウェアを着て・・・
髪の毛が濡れた姿で、現れてしまった・・・。




