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社長室に通してもらい、2人でソファーに座る。

社長室というわりには、豪華なわけではなく・・・普通の部屋だった。

でも、不思議と落ち着き、気持ち悪さもなくなった。




少しだけクラシックが流れていて、少し待つと・・・

温かい麦茶と・・・何故か皮が剥かれた梨が出てきた。

そこまで綺麗に皮は剥けていなかったけど。

お茶菓子でもなく、どうして梨なのか不思議に思いながらそれを眺めた。




美人な女の人が、また私の横にしゃがんだ。




「賃貸物件をご希望でしたら、引き続き賃貸物件をご紹介致しますが・・・」




言葉を切った後、一成の方を見た。




「住宅のご購入は、考えていらっしゃいませんか?」




そんなことを聞いてきて、私が首を横に振ろうとした。




そしたら、一成が・・・




「いいですね。」




なんて、アッサリ答えて・・・。

私は驚き、一成を見る。




「でも・・・僕は二十歳なんですけど、審査通りますか?」




「失礼ですが、お勤め先をお伺いしてもよろしいですか?」




「スポーツ用品業界の“KONDO”という会社です。」




一成が答えると、美人な女の人はなんだか満足そうな顔で笑い頷いた。




美人な女の人が社長室を出て行った後、一成を慌てて見る。




「一成、まだどうなるかも分からないのに・・・。」




「俺は、瑠美と結婚する。」




「でも・・・私、今月生理が来るかも分からないし・・・。」




「そしたら、その時考える。

もしも、来なかったとしても、それは今考えることじゃないから。

その時に何を思うのか、途中である今、想像する必要はないから。」




「一成・・・。」




一成が、そんなことを・・・

そんな、いつか私が言ったような、そんなことを・・・言った。




「瑠美からの教え。」




「うん・・・。ありがとう。」




少しだけ心が軽くなり・・・目の前の梨を眺めた。

美味しそうに見えて、お洒落な小さなフォークでソッと刺し・・・一口食べた。

甘くて冷たい梨が、凄く美味しく感じた。

それをゆっくり、でもペロリと食べて・・・。




そしたら、一成が自分の分の梨もくれた・・・

そっちもペロリと食べてしまった。




食べ終わり少しホッとした時・・・




社長室の扉がノックされた。




一成と私の真ん中になるよう、目の前の席に男の人が座った。




30代後半くらい、綺麗で色白な肌。

目は一重だけど大きめで、鼻が高い・・・。

口はしっかりと口角が上がっていて、一成の話を聞く時もそれは変わらない。

少しクセのある黒髪は、しっかりとお洒落にセットされている。




私は悩みながらも、男の人と一成の話を聞き・・・




一成の話を聞き・・・




一成の、話を、聞いて・・・







「ちょっと、よろしいですか?

一成、なんでそんなに年収高いの?

高いなんてものじゃないけど、うちの会社の部長職の人でもそこまで高くないんだけど。」




一成の口から、信じられない年収の金額が出て来て流石に会話を止めた。




「今月から契約変わったんだよね。

あとは、結果残して・・・そしたら、もっと上がる。」




一成が真面目な顔で、私を見た。




「死ぬ気で追い付くから、瑠美に。」




もう、追い付くどころか、追い抜くどろか、遥か先に・・・見えないくらい先に進んでいるのに、一体私の何に追い付くつもりなのか・・・。







そんな一成の出した条件が・・・





「建売住宅なの・・・?」




私が欲しいとか、そういう話ではなくて・・・。

何故だか高額な一成の年収だったら、もっと大きな一軒家とか・・・注文住宅とかの選択肢もあるのに。





それも、数軒の同じ外観の建売住宅が並ぶ中の・・・端でもなく真ん中の家が気になるらしい。





「俺、こういう建売住宅が大好きなんだよね。」




「そうなの・・・?

それに、これって・・・」




私は、目の前に建っている建売住宅の物件を見上げる・・・




「これだと、うちらの実家とほとんど同じだよ?」




「俺達の実家もコタ・エステートの物件だからじゃない?」




そんなことをサラッと言って、キラキラした目で笑いながらこの物件を見ていて・・・。




そして、予想通り・・・一成は申し込みをした。

内覧をしても予想通りというか、目新しさもなかったけれど。

それでも一成は目をキラキラとさせていて、嬉しそうに笑っていた。




“一成が住みたい”という感じでもあったので、私は特に何も言わず。

申込みの時点で書類の内容などを念の為確認したけれど、事前に私は物件購入について調べられていなかったので不明点などは分からず・・・。

そのまま、申込みの手続きを一成が進めていた。




一成との人生の続きを・・・なんて、夢みたいなことを考えてしまっていた。




なんだか、気分はどんどん沈んでいく。

一成が人生を進ませるにつれ、私の気分はどんどんと沈んでいく。




昔、何度も感じていた気持ちだった。

でも、あの時、私は“一成君”の“お母さん”だったから。

沈んでいくけれど、嬉しくもあったし、切なくもあった。

“お母さん”ってこんな感じなのかって、思っていた。

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