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「ただいま!瑠美、大丈夫?」




月曜日は23時まで勤務のはずの一成が、20時過ぎに帰って来た。

それはメッセージで聞いていた。

一成はこれから23時までの勤務はなくなるそう。




「お帰りなさい、一成。

今、ご飯温める。」




とにかく眠くて、怠くて、夜ご飯を作った後はまたベッドに横になっていた。

立ち上がった私を、一成は困ったような顔で笑い・・・優しく抱き締めた。




スーツで家を出たはずの一成は、何故か“KONDO”のウェアで・・・。

それも、商品でもないような・・・。

大きな文字で“KONDO”と書かれた格好良いデザインのウェアを着ている。




でも、やっぱり家とは違うシャンプーの匂いが、一成からする。




「顔色悪いから、寝てな?

明日、病院一緒に行く?」




「大丈夫、ありがとう。

生理が原因だと思うから。

全然出てこなくて、それで体調も変なんだと思う。」




心配している一成に笑いかけると、一成が心配そうにしながらも、優しくキスをしてくれた。







ピルによって来た最後の生理期間が終われば、気持ちも体調もきっと良くなる。

そう思っていた。





そう、思っていたけど・・・。





「瑠美・・・食べられない?」





11月に入り、土曜日。

今日は一成と新居の部屋探しに来ていた。

午前中はあまりピンっときた部屋が2人ともなくて・・・。





お昼ご飯を近くのレストランで食べているのだけど、食べられなくて・・・。

全然、口に入っていかない・・・。





「瑠美・・・どこか体調悪い?」




「精神的なものかな・・・。

今月生理が来るか、不安なのかも。」





一成は、今では何でも食べられるようになった。

お蕎麦もこの前食べてきたそう。

それなのに、私はご飯も食べられないし・・・気持ちも不安定で。

日曜日に生理になったから、今日は終わる日でもあるのに。




生理も結局2日間、それもほぼ出ていないような出血が少しあっただけ・・・。

こんなに弱い人間だったんだと、自分で驚いた。

こんなに、自分の気持ちが身体に出てしまうのかと、改めて知った。




高校生になってから、どんどん食べられなくなった。

その時も、気持ちが身体に出てしまっていたから。




「午後はコタ・エステートの賃貸の店舗だよね?

俺1人で行ってこようか?」




「私も行く、大丈夫だから。」





少しでも、続きが見たいから。

一成との人生に続きがあるのだと、今は夢を見ていたかった。





私がほとんど残したご飯を、一成がペロリと完食してくれた。

お会計までしてくれ、お礼を言うと、また手を繋いでレストランを出てくれた。





レストランの近くにあった、コタ・エステート株式会社の賃貸物件を紹介してくれる店舗。

大手の不動産会社で、賃貸から売買、管理部門もある。





今私が住んでいる部屋を探す時も、この会社にお世話になっていた。

とても良い営業の方で、親身になって物件探しを手伝ってくれた。





そんなことを思い出しながら、店舗に入る。

1階部分は賃貸物件を紹介してくれる店舗で、2階以上にコタ・エステートの会社も入っているビルだった。

前回は今の部屋の方の店舗に行ったので、本社の下にある店舗は初めてだった。





「瑠美・・・今日は帰ろうか。」




賃貸物件の資料を担当の方からいくつか紹介してもらっている最中、一成が言ってきた。

私は、片手で口を押さえ・・・少し呼吸を乱しながら一成を見る。




なんだか、気持ちが悪かった・・・。




高校生の時でも吐いたりはしなかったから・・・今回はそれ程精神的にきているのかもしれない。




賃貸物件の資料にのっている部屋の写真を眺め、やっぱりピンっとくる物件もなくて・・・内覧したい物もなかったので、頷こうとした。





頷こうとした、





その時・・・






「どうされまさたか?」






と、私の横・・・横というか、横にしゃがんだ女の人に声を掛けられた。






「私、社長秘書の加瀬莉央と申します。」






そう言って、しゃがみながら私に名刺を差し出してきた。






「なんてことのない社長室ですが、ここより座り心地の良いソファーもありますので、どうぞお越し下さい。」





そんな、ことを言ってくれ・・・。

こんな美人な人が、そんな優しいことを、優しい顔で言ってくれるので・・・

一成と2人でついていくことにした。

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