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一成が、初めて見るような顔で・・・営業スマイルのような顔で私を見下ろす。




「瑠美、この人は?」




「・・・ラーメンの、男の子かな。」




「・・・そういう面白いやつ、今じゃないから。」




営業スマイルだった一成が、いつもの笑顔に戻った。




「中田一成じゃん、瑠美さんと知り合いなんだ?」




ラーメンの男の子が少し興奮しながら、一成に話し掛けた。




そしたら、一成が・・・




「はい、お付き合いしてるので。」




と、サラッと言って。

驚き、一成を見上げると・・・笑ったまま私を見下ろしていた。




「俺、副社長に呼ばれてるんだよね。

じゃあ、また・・・帰ってから!

顔色悪いから、帰ったら寝てな?」




そう言って、ラーメンの男の子に小さくお辞儀をして、すぐそこの階段を上がっていった。




そんな一成を、私は見ていた・・・。




一成は、スーツではなかったから。

なんでか“KONDO”のウェアを上下着てきて、勢いよく階段を登っていった・・・。




「瑠美さんの彼氏、中田一成なの!?」




ラーメンの男の子が興奮したように、私に言う。




「そうだね・・・。

“今は”お付き合いしてる。」




「“今は”って、そんな感じ?

凄い愛されてる感じだったけど。」




「どうだろう・・・。

どんな“愛”なのかな、あれは・・・どんな“愛”になるのかな・・・。」




小さな声で呟いたからか、ラーメンの男の子には聞こえなかったみたい。

何故か尊敬するような眼差しで、私を見ていた。




法務部の部屋に戻り、今日も仕事をこなしていく。

でも、眠くて眠くて仕方がなかった。

何度も寝てしまいそうになりながら、ミスしてしまいそうな不安だけがあって・・・。




そんな中でも、何度も確認をしながら仕事を進めていた。







定時になり、今日は残業もせず帰宅しようと、デスクを片付けていた。





「伊藤、1つだけいいか?」





電話をしていた部長が、受話器を置いた瞬間に声を掛けてきた。

それに返事をし、メモとペンを持って部長のデスクの前へ。





「中田一成の雇用契約書、持ってきて貰えるか?覚書作成するから。」





そう、言いながら・・・法務部の資料室の鍵を渡してきた。

それに返事をしてから、鍵を受け取り資料室に向かった。





資料室の中、すぐに一成の雇用契約書は見付かった。

社員の雇用契約書は私が作成をして保管しているし・・・一成のだしすぐに見付かった。





一成の雇用契約書を久しぶりに見る。

これを作成した時は、何度か部長に確認をして貰った。





他の社員の雇用契約書を作成する雛型とは、結構違う内容だったから。

一成は、“KONDO”の社員。

所属はサポート支援部。





でも、サポート支援センターを運営しているのは、“KONDO”が新しく立ち上げた法人。

“一般社団法人KONDOアスリートサポート支援”

ここが運営をしていて、この一般社団法人の理事も従業員もいる。





そこに、サポート支援部の社員が仕事をしに行っている形になっている。





さらに、一成は・・・

入社時の雇用契約書では、サポート支援センターで部員の一員として・・・故障したアスリートとしてサポートも受けるという内容だった。





それと、9月1日付でサポート支援部の部長に就任した時も、今回みたいに部長が「覚書を作成する」と言って部長案件で覚書を作していた。





部長案件となった覚書は部長が管理しているので、私は見られないけれど・・・

また一成が、遠くへ行くのは分かった。





一成は、いつもすぐ私に追い付いてしまうから。

そして、追い抜いてしまう。

遠くへ、遠くへ、行ってしまう・・・。





もしも、来月に私の生理が来たとして、結婚出来たとしても・・・

一成はすぐに追い抜いてしまう。

そして・・・他の女の子を選ぶ。

私は“お母さん”なのだと、気付いてしまうから。

結婚して一成が落ち着いたら、私に求めていた愛は、“お母さん”からの愛だったと、気付いてしまうから。

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