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消えた・・・。
消えた・・・。
本当に、消えた・・・。
「一成・・・?」
競泳では、スタートしてから潜水して進める距離が制限されている。
その制限ラインから、一成が一向に出てこない・・・
それどころか・・・
それどころか・・・。
水の中を大きな影が猛スピードで進んでいくので、それに笑いながら、泣いてしまった。
気持ちは、分かるから。
それをやりたくなる気持ちは、分かるから。
でも、一般的にはしてはいけなくて・・・
念の為、監視員さんを確認する。
監視員さんは、目を大きく見開き、身動きが取れていないようなので・・・一先ず無視をしようと思う。
私は、笑いながら、泣きながら、待った・・・。
そして、あっという間に帰って来た・・・。
あっという間に、帰って来た・・・。
一成が、あっという間に帰って来た・・・。
50メートル、全て潜水をして・・・
あっという間に、帰って来た・・・。
そして、私のすぐ目の前に出てきたかと思ったら・・・
浮かび上がりながら、私を抱き締めた・・・。
ゴールにタッチをするわけでもなく、私を、抱き締めた・・・。
そんな一成を、私も抱き締める・・・。
そして、伝えた・・・。
「お帰りなさい、一成・・・。」




