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そして月曜日、お昼休みから戻ると・・・
「瑠美たん、お疲れ!!」
「中田部長、お疲れ様です。
今日は本社ですか?」
「副社長と打ち合わせなんだよね。」
中田部長が・・・それはもう、甘い顔で笑いかけてくる。
それに苦笑いをしながら、チラチラと視線を感じるエレベーターの中、2人で並んで立っている。
「瑠美たん、今日定時?
ご飯食べに行こうよ!!」
「はい・・・中田部長、“瑠美たん”止めていただけますか?」
「じゃあ、瑠美?」
「それはそれで困ります。
“伊藤さん”で。」
そんな会話をしつつ、エレベーターを2人で降りる・・・
2人で、降りる・・・。
「副社長室、まだ上ですよね?」
「・・・やべっ!!!」
そんな中田部長に笑いながら、もう1つ大切なことを言っておく。
「中田部長、今日は月曜日なので23時までの勤務ですよね?」
「・・・そうだった!!」
凄く残念そうな顔をしているので、また笑った。
「行ってらっしゃい。」
それだけ言って、階段の方へ少しだけ背中を押した。
*
女子トイレの中・・・
「伊藤さん、一成君と仲良いの?」
個室から出たら、さっきのエレベーターに乗っていた女の人がいたので・・・聞かれると覚悟していた。
「そんなことはないはずなので・・・ちょっと、戸惑っています。」
「伊藤さんそういうの免疫なさそうよね。」
「ああいう時、どうすればいいですか?
見て分かる通り、私はそういう関係はサッパリでして・・・。」
別の部署だけど、美人な人で・・・。
秘書課で1番美人な人、仕事もよく出来る。
ここは素直に教えてもらうに限る。
「別に良いんじゃない?
伊藤さんが良いなと思えば付き合えば。」
「え!?そんな感じですか!?」
「他に何があるの?」
「中田部長は私が好きということではないかと・・・思っていて。」
「さっき、あんなに凄かったじゃない。
瑠美たんって何よ?」
それには、また苦笑い。
「1ヶ月くらい前から急にそう呼び出して・・・。
それまでは“伊藤さん”って呼んでいて、約1年半・・・。
なのに急に、なんのキッカケもなく・・・急にあんな感じになったんです。」
「一成君なりにキッカケがあったんじゃないの?」
秘書課の人が口紅をキレイに塗りながら言ってる。
「そうなんですかね・・・。
そう・・・なのかな~・・・。」
「新卒の女の子とか2年目3年目の女の子から凄い人気だから、早めに掴まえときなさいよ。」
「私がですか!?
そういう子達ではなく、私が!?」
「両思いだったら、そんなの関係ないわよ。」
秘書課の美人な女の人からの教えは、こんな内容だった・・・。