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そんな言葉に笑いながら、開脚をしていた足をゆっくりと閉じ・・・真横に立っている人をゆっくりと見上げる・・・。
「一成・・・。」
一成が、いる。
一成が、いる。
競泳水着を着て、スイムキャップとゴーグルを付けた、一成が・・・いる。
少し呼吸を整えて・・・それどころか、何度も深く呼吸を整えたけど・・・
「瑠美・・・?」
一成が心配そうな声で私を呼ぶ。
でも、コンタクトをしているのに視界がぼやけて一成の顔は見えない・・・。
涙で、涙で、見えなくなっている・・・。
泣きながら立ち上がり、一成に向かい合う。
何度も涙を拭き、一成の姿をもう1度見る。
「格好良いね、一成・・・。
またこの姿が見られて、嬉しい。」
笑いながらそう伝えると、一成は困ったように・・・それでも嬉しそうな顔で私を見下ろしていた。
*
昨日、あの後に一成の水着やスイムキャップ、ゴーグルも買った。
一成が「死ぬ気で追い付く」と言いながら、覚悟を決めていたから。
でも、私の方が今は心配をしていて・・・。
「一成・・・ウォーキングレーンで一先ず一緒に歩こう?
泳いでる途中で出ると、水の中だし気付かないかもしれないから。」
「瑠美は泳いで来たら?
俺は様子見ながら歩いてみて、大丈夫そうで・・・泳げそうなら、そっち行くから。」
「・・・そう?大丈夫?」
「瑠美がいるから、大丈夫。
生きて“大人の男”になって、結婚したいけど。
もし、もし、死ぬなら・・・瑠美を見ながら死にたいから。」
「一成・・・。」
「俺は、瑠美のことが大好きだから。」
一成の甘く整った顔が、もっと甘くなる・・・。
それに、心が・・・戸惑う。
心が、戸惑う・・・。
一成にプロポーズをされた日から、私の心はずっと戸惑っている・・・。
「あと、1ヶ月ちょっと・・・念の為、付き合って?10月も下旬に入る。
12月3日まで、あと1ヶ月ちょっと。」
「こういうこと聞くの、アレだけど・・・。
生理いつ来ればいいの?」
一成にそう聞かれ、低用量ピルのシートを思い浮かべる。
「今月の月末、日曜日頃に来るはず。
でもこれは自力でのじゃなくて、ピルを1シート分・・・1ヶ月分飲み切って、飲まないことによって起こす生理なの。」
「自力のは、11月?」
「うん、11月の最後の週くらいに来ればいいけど・・・。
一成・・・今日一成がプールに来てくれたから、私もちゃんと話す。」
少し呼吸を整え、震える口を無理矢理開ける・・・
「大学2年生から、先生に何度かお願いをしてピルを止めてみてるの。
でも、今まで、止めてみてから・・・次の月の生理は、来たことがない。」
一成が驚きながら私を見下ろし、何度か口を開こうとして・・・何度も止めていた。
きっと、“結婚するつもりなかった?”と聞こうとしているのかもしれない。
でも、それを聞かないのは・・・
一成は知っているから。
微妙なニュアンスで喋ることもある私だけど、誰かを傷付けるようなことは絶対にしない。
それを、一成は知っている。
だって・・・
私と一成は・・・
「俺が小学校1年生、瑠美が中学1年生の時から知ってる。
嘘とか、裏切るとか、瑠美は絶対にしない。
本当に頑張るつもりで、その覚悟で、期限を設けたんだよね?」




