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「・・・どう?」
試着室の扉を開け、一成に競泳用の水着姿を見せる。
上半身はタンクトップみたいになっているけれど、膝の上まで覆われている物。
大学生になってから趣味で泳いでいた時、それと約1ヶ月前までは1年くらいはこのタイプの水着で泳いでいた。
「うん、似合ってる。
相変わらず綺麗な身体してる・・・。」
「綺麗な、身体か・・・。
この前もそんなこと言って貰ったな。」
「・・・誰に?身体見せたの?」
一成が・・・怒りながら私のことを見てくるので、笑ってしまった。
「夏生さん。青田夏生さん。
会社の前で初めてお会いして、その時に“綺麗な身体してる”って。」
「夏生さんか、少し話したことある。
何度かうちのセンターにも来てくれて、部員達に差し入れしてくれてる。」
「素敵な人だった、憧れちゃう。
でも、そんな夏生さんから言って貰ったの。」
両手を少し広げて、一成に笑い掛ける。
「私の身体って、“あの頃を懐かしくさせる綺麗な身体してる”って。
中学や高校生の頃の、1番輝いていた人生を思い出させるって、そう言ってくれた。」
真面目な顔をして私を見詰める一成に、聞く。
「一成は私の身体を見て、懐かしく思ってた?」
「そんなこと、思ったことない。」
その返事に、私も真面目な顔をして頷く。
「一成の身体は、人生は、高校2年生で止まったままだから。」
「・・・人生も、止まってる?
“KONDO”に入って、続けてたつもりだったけど。」
悲しそうに笑う一成に、私は背中を向けた。
そして、試着室の中の鏡越しに一成を見る。
「私、日曜日の明日は、これ着てプールに行ってくるね?
水着着たら、久しぶりに泳ぎたくなっちゃった。」
鏡越しでも、分かる。
一成の瞳は揺れている。
「私は、先に行くから。
食べてばかりじゃなくて、ちゃんと運動もしないと。
しっかり食べて、運動もして、私は大人になる。」
「瑠美・・・」
「私は、全力で泳ぐから。
区民プールだけど、私は全力で泳ぐ。
10月も下旬に入る頃だし、そこまで人もいなくなるし。」
笑いながらまた一成に振り向き・・・ピンクゴールドの眼鏡を外し、ゴーグルを手に取って見せた。
「明日は、一成のこと置いて行っちゃうね!」
*
翌日の日曜日。
区民プールの女子ロッカーで、競泳用水着に着替える。
そして、ピンクゴールドの眼鏡を外し・・・コンタクトを入れた。
スイムキャップとゴーグルを付け、タオルとスマホを入れた小さな防水バッグを持ち、シャワーをしっかり浴びてからプールサイドへと足を踏み入れた。
防水バッグを網棚の空いているスペースに置き、プールサイドで準備運動をしっかりしながらプール内を確認する。
午前1番の時間に来ているからか、まだ人も全然いない。
春から夏は混むけど、秋になると人はどんどん減っていくから、それも要因の1つだと思う。
そんなことを考えながら、プールサイドの床に座り念の為ストレッチもしていく。
約1ヶ月、正確には1ヶ月半と数日ぶり。
一人暮らしを始めてから、週に1日だけど泳ぐことにした。
でも・・・9月に入り、急に一成が私に近付くようになって・・・。
念の為、プールに来るのは止めていた。
塩素のことがどうしても頭から抜けなくて。
でも・・・
今は・・・
「瑠美、あんまり股広げないでよ・・・。」




