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「・・・っ瑠美!!」




家の扉を開け、一成が“ただいま”も言わず私の名前を呼んだ・・・というか、叫んだ。




「お帰り、一成。

ご飯ちょっと待ってね、私も今日は少し残業してて・・・。

今日はラーメンね?味噌ラーメン!!

生麺と市販の味噌ラーメンの味噌と、野菜炒めとメンマと味付け卵!!」




社食で話した男の子がずっとラーメンを食べないから、そのラーメンが気になって仕方なかった。

なので、今日はラーメンにすることに。

麺も味噌も、メンマと味付け卵も市販の物。




「野菜炒め今終わったから、食べる直前に麺茹でちゃうね。」




「ラーメンか!!!」




一成が嬉しそうにキッチンの上に置かれたラーメンの麺を眺めていて・・・




「・・・って、そうじゃなくて!

ヒヤリングの時、俺いなかったら待っててって言ったのに!!」




「“それは、どうかな。”って言ったけど。」




「そうだけど・・・。」




そう言って、一成が悲しそうな顔で私を見下ろす。

それに笑いながら、見上げる。





「デザートに、杏仁豆腐買ってきたから。」




「・・・よっしゃ!!

ラーメンの後は、杏仁豆腐!!」




「好きだもんね、2番目に・・・。」







「今度、ラーメン屋さんのラーメンも食べに行こうか?」




「行く!明日土曜日だし、明日行く!!」




「2日連続は、ちょっと・・・」





ラーメンを一瞬で食べ終わり、杏仁豆腐を嬉しそうに食べる一成を見て・・・

あのプリンは食べたのかな・・・・と、考えてしまった。




そんな自分に小さく笑いながら、まだ残っているラーメンを食べていく。

今日も、私は食べられる。

ちゃんと、身体が大人になろうとしている。




一成を見ながら、聞いた。




「明日、水着買いに行きたいの。」




「水着・・・?」




「私、可愛い水着が着たい。

水泳の水着だけで、可愛い水着を着たことがないから。」





一成が少し安心したような顔をして、私を見た。





「でも、可愛い水着着て・・・行く場所ある?」




「水着を着て入れる温泉、日曜日に行かない?

男女で入れるんだって。」





スマホの画面を一成に見せると、一成が私のスマホを受け取り真剣に見てると思ったら・・・






「こんな夢みたいな場所、存在してんのか・・・!!」











一成と手を繋ぎ着いた場所。

調べていた、1年中水着を買うことの出来るお店。

広い店舗には、色とりどり、色んなデザインの水着が売っている。




「可愛い・・・。

けど、私に似合う水着あるかな?」




「それより、よく考えたら俺以外にも見られると思うと・・・心配になってきた。」




そんなことを言いながら、私の手を強く握ってくる。

それに笑いながら、私の水着を選ぶことを始めた・・・




始めた・・・




始めた・・・




けど・・・







「これだと瑠美の胸見えるから。」




「これだと瑠美の背中見えるから。」




「これだと瑠美の足見えるから。」






手に取る水着、手に取る水着、こんなことを言われ認めてもらえない。






「そんなこと言ってたら、可愛い水着永遠に着られないけど。」




「分かってる・・・けど、瑠美の身体見られるの、しんどい。」




「じゃあ、競泳用の水着だったらいい?」




一成が、静止した。

そんな一成を無視して、可愛いビキニを1着手に取る。




「やっぱり・・・こっちにしようかな!」




自分の身体にビキニを合わせて、一成に見せてみる。

一成は苦しそうな顔でそれを見ていて、少ししてから私の顔を見た。




「競泳用の水着だったら、いい。」







「分かった。」




「でも、それも買う。」




「これも?」




「今日、まだ痛い・・・?」




その質問の意味が分かり、少し悩み・・・




「1回くらいだったら、大丈夫かも。」




「1回!?無理だよ・・・」




一成が残念そうにして・・・私が手に持っていたビキニを取り上げ、戻すのかと思ったらそうではなくて。

お会計の所に持って行き、一成が買ってくれた・・・。




お礼を伝えると、一成は嬉しそうに笑っていた。




「俺、高卒なのにうちの会社に入れて・・・マジで良かった。」




「新卒入社で高卒で働いているの、一成だけだもんね?

うちの会社に内々定貰ったって聞いた時は驚いたよ。」




「努力に勝る才能はないから。」




一成が、そんな懐かしい・・・言葉を。

私と一成が選手コースで泳いでいた、スイミングスクールの言葉だった。




それに頷きながら、握っていた一成の手を強く握り締める。




元々調べていた、あの水着のお店から近い店舗・・・うちの会社“KONDO”のスポーツ用品店が見えてきたから。




私だけじゃなく、一成も・・・“KONDO”の水着で泳いでいた。

他の多くの選手もそうだから特別というわけではないけど。




でも、一成が着る“KONDO”の水着姿は・・・誰よりも格好良かった。




誰よりも、誰よりも、格好良かった・・・。

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