4
そんな、ラーメンの男の子とのお昼休憩が終わり・・・
結局、最後まで悩んだけど、連絡先の交換は止めておいた。
私は恋愛経験がないから一般的なことは分からないけど、それで苦しんでいる人を見たことがあったから。
そう、思っているんだけど・・・
そう、思っているんだけど・・・
午後にスケジュールを入れていた、サポート支援センターへの外出。
新しい入部者の契約書を作成する為、ヒヤリングに行きたいのだけど・・・。
法務部の部屋から会社を出るまでの間、何が起きたのか分からないくらい・・・
男の人に声を掛けられ、連絡先を聞かれる。
中には仕事で関わった人も何人かいるのに、名前まで聞いてくるし・・・。
仕事のことかと思って立ち止まると、世間話で・・・“伊藤”だと分かると驚かれるけど。
最終的には、毎回連絡先を聞かれるという。
そんなよく分からない現象が起きていて、戸惑いながらも最後の方の人には“法務部”“伊藤”と伝え、後で来て下さいと伝え・・・予定より少し遅くなってからサポート支援センターに到着した。
早足でサポート支援センターの廊下を歩き、ノックをしてから扉を開けた。
「お疲れ様です!
少し遅れてしまい、申し訳ありません。
新しい入部者の契約書作成のヒヤリングに来ました!」
中にいた社員の男の人。
金曜日は23時まで勤務時間の人にそう言うと、少し驚いた顔をされた。
「お疲れ様です、法務部の方ですよね?
伊藤さんがいらっしゃる予定でしたが・・・他の方がいらっしゃったんですね。」
そんなことを・・・真面目な顔をして言うので、念の為、伝える。
「あの・・・伊藤です、私・・・。」
「・・・伊藤、瑠美さん・・・?」
「はい、伊藤瑠美で相違ありません。」
「えー!!!??
全然分からなかった!!!!ごめんなさい!!!!」
そんな反応に笑いながら、スタッフルームの閉まったままの扉を確認する。
一成はいないけど・・・仕方ないので、ヒヤリングを進めることにする。
「新しい入部者の方とのヒヤリングをしたいので、同席していただけますか?」
*
今回の新しい入部者の方から、ミーティングルームの1つの部屋でヒヤリングをしていく。
入部者の隣には、さっきの男の人が。
私の話や入部者の話で、専門的な話や抜けがあった時にはサポートをしてくれる。
競技だけでなく、各人によって契約内容が変わっていく。
部長が作成してくれた定型のヒヤリングシートだけでは不十分なこともあり、そんな時は社員の方がよく気付いて指摘してくれる。
今回も大変お世話になり、無事にヒヤリングが終了した。
社員の方とはミーティングルームの前で別れ、1人で廊下を歩いていると・・・
見慣れた後ろ姿が。
施設の出入口の所に、一成の後ろ姿があった。
嬉しくなり、駆け足で近付くと・・・
気付いた・・・。
気付いた・・・。
大きな一成の背中に隠れてよく見えていなかったけど、女の子と話していた。
一成のことを“一成君”と呼んでいて、21時という時間にこの施設に来ていた女の子。
若くて可愛い女の子・・・。
その女の子が、嬉しそうな顔で一成を見上げ・・・ビニール袋を渡していた。
一成がビニール袋からそれを取り出すと、それはプリンだった。
一成が好きなプリンだった。
アレルギーの症状が出てから、食べられなくなっていたプリンだった。
それも、一成が1番好きな種類のプリンだった。
それに、嬉しそうな声を上げ・・・若くて可愛い女の子と、2人で楽しそうに話していた。
それを少し離れた後ろから眺め、息を整えてから・・・
早足で出入口の隅から外に出た。
女の子はチラッと私を見たようにも思ったけど、特に何もなかった。
一成も特に何もなく、2人の楽しそうな声を背中で聞きながら、小さくなっていくその声を最後まで背中で聞いていた。
あと、1ヶ月ちょっと・・・
あと、1ヶ月ちょっと・・・
あと、1ヶ月ちょっと・・・
あと、1ヶ月ちょっとで、私は・・・
私は・・・
私は・・・




