3
私は、高校の水泳部で着ていた水着を着ている。
今では主流になっている、太もも部分がスパッツのようになっている物ではない。
もっと水の抵抗を減らす為、覆われている部分が多い水着でもない。
私が高校生の頃は、今みたいな水着がまだ主流ではなかった。
足やお尻は露出されている、一昔前のデザイン。
そんな水着を、着ている。
久しぶりに着た高校の時の水着で、一成の目の前に立つ。
「どう?」
「どうって・・・。」
「懐かしい?」
「うん・・・。」
「今日、これ着たまま・・・しようか?」
「マジで・・・?」
一成が驚いた顔で、さっきから興奮している顔をもっと興奮させた。
そんな一成に、伝える。
「カツカレー食べてからね?牛乳も。」
「死んだら、出来ないじゃん・・・。」
「死ぬ気で、今回は追い付いてきてよ。」
カツカレーと牛乳を並べたローテーブル、一成の向かい側に座り・・・言う。
「今回は、私も全力で泳ぐ。
追い付かれないように、全力で泳ぐから。
追い付いてみせてよ、一成。」
そう、伝えて・・・
少し呼吸を整え、
呼吸を整え、
震える口を、無理矢理にでも、開けた・・・。
「私は・・・生理が、ちゃんと来ないの。
だから、ピルを処方されて飲んでる。
ピルを止めても、私は妊娠出来ない。
排卵も出来てないから。小学生高学年の時に始まったけど、中学生の頃はずっと不順で。
でも選手コースにいたから、そういう子ばっかりだった。
高校生の先輩達は生理も止まってる人までいたから・・・気にしてなかった。」
ジッと聞いている一成に、話し続ける。
口は、震えたままだけど・・・無理矢理動かし続ける・・・。
「高校に入ってから、選手コースを辞めて部活1本にして・・・それでも不順なままで。
でも、部活とはいえ週に1日の休みだったから、こんなものかなって。」
夏生さんにさっき言われた言葉を、思い出す・・・。
私の身体は、中学生や高校生の身体のまま、成長を止めている。
大人になることを、身体が拒否している。
でも・・・
でも・・・
「月曜日、秘書課で1番美人な人が言ってくれたの。
“メス”になったって。」
「“メス”・・・?」
「一成が、抱いてくれたからだと思う。
私は・・・“女”になる。
“大人の女”に、私はなる・・・。」
でも、そのためには・・・
もう1つ・・・
「だから、食べる・・・。
私は、ちゃんとご飯を食べる。
美味しいご飯を、いっぱい・・・。
私の身体を“大人の女”にさせる。」
そう伝え、手を合わせてからスプーンを手に取った。
そして、一口・・・カレーライス食べた。
「私は、先に泳ぐから。
“大人の女”になる為、全力で泳ぐから。」
カレーと一緒には食べられなかったトンカツを一口食べ、一成を見る・・・。
「追い付いてよ、一成。
いつもすぐに追い付いてたでしょ?
足の大きさも、手の大きさも、肩幅も、身長も、悔しいことに胸の大きさまで。」
「・・・胸っていうか、筋肉でっ」
そう言って・・・一成が、急に吹き出した。
一成が笑い始めたので、私も笑った。
「一成は、すぐに追い付くから。
いつだって、すぐに追い付いちゃう。
今回もきっとすぐだよ。」
「死ななきゃいいけど・・・。」
「死ぬ気で、追い付いてきて。
あと1ヶ月半しかないから、死ぬ気で追い付いてきて。」
不思議そうな顔で、一成が私を見る。
「2人とも“大人”になっていないと、結婚出来ないでしょ?」
そう言って、一成に笑い掛ける。
「ちゃんと、“大人”になってからにしないと。
年齢だけじゃなくて、身体も。
一成の身体も止まってるでしょ?
高校2年生の夏から、止まってるでしょ?」
「うん・・・。」
「死ぬ気で、追い付いてきて。」
「分かった・・・。」
一成が、震える手でスプーンを手に取った。
そして、カレーライスをスプーンですくい・・・一口、食べた。
「うま・・・っ」
それに笑っていると、一成はあっという間に食べ終わる勢いで食べ始めたので・・・
私も慌ててカツカレーを食べ始めた。




