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「あれ!久しぶりね~、もっと帰って来なさい!」
「うん!!」
久しぶりに、実家に帰った。
一人暮らしの家からも電車で数分なのに、本当に久しぶりに。
お母さんに返事だけして、急いで2階に上がり自分の部屋へ。
扉を勢い良く開け、そのままクローゼットも勢い良く開けた・・・。
「どこだっけ・・・。」
綺麗に整理されているけど、きっと奥底にあるはず。
頭の中の記憶を辿りながら、クローゼットの中を探し・・・
探し・・・
探し・・・
見付けた・・・。
見付けた・・・。
それを急いで鞄の中に入れ、また1階に戻り・・・
「また来るから!!!」
「え!?もうちょっとゆっくりしていきなさいよ!!」
「今から隣に行ってくる!」
「隣って、そういえば瑠美・・・」
お母さんが何かを言おうとしていたけど、玄関の扉を閉めた時だったので最後まで聞こえなかった。
そして、少し呼吸を整えてから・・・隣の家へ。
久しぶりに帰って来た実家。
隣の家も、我が家と同じ外観・・・。
我が家と同じ外観の家が、いくつか並んで建っている。
建て売り住宅の一軒家を、私が中学1年生の時に両親が選び引っ越しをした。
そして・・・
そして・・・
もう1度だけ少し呼吸を整えてから、隣の家のインターフォンを鳴らす。
《は~い・・・瑠美ちゃん?》
「はい、お久しぶりです。」
《久しぶりね!待ってて!》
そう言われ、数秒待っていると・・・
玄関の扉が開いた・・・
扉を開けた人は、嬉しそうに笑い掛けてくれる。
そのままの顔で、私に話し掛けた・・・
「うちの一成と付き合ってるの!?」
それには、苦笑いを・・・。
「“一成君”から聞きましたか?」
「聞いた聞いた!!
先週の金曜日の夜、珍しく遅く帰って来たかと思ったら“瑠美と付き合う”って喜んでて!!」
そう言いながら、いつものように私を自然に家の中へ入れてくれる。
お礼を言いながら玄関に入り、2人でリビングへ。
鞄を置いてから断りを入れて、洗面所を借りる。
無添加の固形石鹸ではなく、泡ポンプのハンドソープで手を洗い、持っていたハンカチで手を拭いた。
そして、またリビングへ・・・。
ダイニングテーブルにはお茶が2つ置かれていて、“一成君”のお母さんが先に座っていた。
その向かいの席に私も座り、お茶を一口飲む。
久しぶりに飲んだけど、“一成君”のお母さんがいれてくれるお茶は美味しい。
それを思い出して、少し笑顔になり・・・“一成君”のお母さんを見た。
「“一成君”とお付き合いしています、“今は”。」
「聞いた聞いた!!
瑠美ちゃんの誕生日には結婚するって?」
「いえ・・・そういう話ではなかったのですが・・・。
“一成君”、そういう認識なんですかね。」
「そう言って喜んでたわよ?」
「そうですか・・・。」
それにも苦笑いしながら、頷いた。
そして、本題へ・・・
「私が実家を出てから、“一成君”の症状はどんな感じでしたか?
食事の記録も、ありますか?」
“一成君”のお母さんは真面目な顔で頷き、リビングの棚の上に置かれた1冊のノートを持ってきた。
それを、渡してくれるのかと思ったら・・・そうではなくて、困った顔で笑い少し震える両手でそれを握り締め、また椅子に座った。
「私じゃ、ダメだったの。」
「ダメとは?」
「私じゃ、出来なかった。」
「新しい食材を試せなかったんですか?」
聞くと、“一成君”のお母さんが首を振った。
「私のは、食べられなかったの・・・。
瑠美ちゃんが作ってくれたレシピだけはそのまま食べられたけど、私が新しい食材を準備しても・・・どうしてか口に入れられなくて。」
「そう、でしたか・・・。」
「食材だけじゃない。
この1年間、何も進んでない。」
「病院での検査は?」
「結果は問題ないの。
体調に気を付けながら、普通の生活に戻れるはずだって。」
「そうだったんですか・・・。」
「だから、一成から瑠美ちゃんと付き合うって、一緒に住むって聞いた時は・・・やっぱり瑠美ちゃんだったのねって、思った。」
“一成君”のお母さんがそう言って、寂しそうに・・・
でも安心したような顔でもあって・・・
「昔から、瑠美ちゃんのことを、“俺のお母さん”って言ってたからね。」




